第24話

文字数 515文字

とうとう、妻の頭をグーで殴ってしまった。

前日、仕事のあと、少しの疲労感と敗北感につきまとわれながら帰宅した。おかしいな、と思っていた。というのも、その日の仕事では、出来なかった部分や失敗した部分もあったけれど、初めてやれた事もあり、失敗だけではなく成功した部分もちゃんとあると、頭では認識出来ていたからだ。

にも関わらず、たぶんにんげん関係的な部分での敗北感というのが、一昨日は強く出てしまった。

大体ぼくというにんげんは、仕事そのものに集中するというよりも、それにまつわる人間関係に強くゆさぶられてしまうにんげんである。本当にその事は情けないなだが、その弱さが妻に向かう暴力になってしまうという事については、情けないでは済まされない部分もあり、場合によっては(また)離婚にまで至るかもしれない。

無動機殺人のような暴力は、弱さによって引き起こされるのだと想う。人と人との交わりの中で、なぜか強くあれない自分に対する深い挫折感がその中にあるのではないか?

ぼくがこの『統合失調症三昧』の中で言いたいのも、その繊細さと弱さについて、である。

強くあらねばならない。その強さがやさしさに他ならないような強さを、傷つきながら求めなければならない。
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