第82話

文字数 479文字

精神科医は、精神病者という、ねじの外れかけた(社会の)部品を、なんとか元の場所にはめようとする存在ではない、と思う。

ところが、主治医との面接に挑むぼくの心の中には、そんなイメージがどこかにある。

なぜぼくは薬を飲み続けているのか?社会への義務として飲んでいる気持ちがあった時期もある。

いまは、自分を守るために飲んでいるのだと思っているが。


精神障害はパンクなのだ。ぼくが統合失調症になった理由と目的は、社会のきれいなパーツになることを拒んで、ごつごつした、都合の悪いパーツになるためにである。


この事を主治医に言った時、主治医はしばらく考えて、「なれるものではないでしょう」と言った。その答えにぼくは満足した。

滅茶苦茶なパーツになりたい。それでいて、世間との一応の交渉も成立させ。滅茶苦茶になりたい。世界に、社会に、めっちゃくちゃを届けたい。

壊したい、壊れたい。完成は、死だ。心の中にたぎる、この、きれいならざること、完成されざることへの思い。辛い辛い辛い、死ぬよりもつらいこの心の中の嵐を唯一の武器として、きらびやかな世界の前で、ぼろ一枚まとって立ち尽くしたい。
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