第55話

文字数 880文字

時は謎だ。

時間を何に使うかで、私の精神の、ひきの強さ弱さが変わってくる気がする。

仕事をするのは大事な事だ。仕事で一生懸命やるのは大事な事だ。

仕事とそれ以外の時間。あるいは、仕事以外の時間の過ごし方。

それなりに社会の中で生きてきたので、がっつり無職の期間はそんなになかったけれど、

思い返すのは北海道で前の妻に逃げられて仕事も辞めてしまい、どうしようもなく無職だったとき、ローンの残る軽自動車一台だけあって、

その時分、実家の方も父親が失踪したりで金に余裕がなく、

たまに断続的に実家からお金をもらったりしてなんとか生きていたその時期、

百均で買った絵の具で絵を描いたり、なけなしのガソリンで道東を冒険したりと、

なんだかかんだかで死にそうだったけれど、むやみと楽しかったかもしれないということなのだ。

それに比べたら、恵まれすぎていた前回の無職。ニコサービス城東に通っていた時期は、中国語や簿記やパソコンを勉強し、人との関わりも十分にあり、なおかつ妻までいてくれたのだけれど、

道東の光輝く夏の方が、むやみやたらと懐かしいのも事実なのだ。

つまり、仕事もしないで、大自然が残る場所でなにかを探して死にかけて生きているというのは、それはそれで一つの生き方なのかもしれない。

いまの日本社会では、仕事がなんとか出来るということ、それはものすごく根本的なものと見做され、仕事の場にあって仕事が出来ないと。くそみそに貶される。

けれどもふと思ったのだ、仕事しないという選択もありではないかと。仕事しない有能さがあったとしても、少しもおかしくはないのではないか。

時間は謎である。仕事にすべてを吸い取られたら、私の存在はカラカラのカスになってしまうかもしれないねぇ。

仕事していないときの時間の過ごし方がとても重要なのである。

ゲームはダメ。スマホで漫画を読むのは辞めとこう。紙の漫画は一応、あり。本を読みまくるとか映画を観まくるとか外に旅に出かけるとか、良いんじゃないですか。

時間とも絡みながら、精神はとんがった受容体なのだ。そこに麻痺の要素を放り込んだら、自分が自分でなくなるような気がする。
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