第66話

文字数 586文字

山上徹也容疑者が起こした事件には、深く考えさせられる。

我々は普段、ある程度、『このような』世界に納得して生きている。しかしそれは「ある程度まで」だ。心から何もかもに納得して生きているわけではない。

そうして生きている同じ時間軸の中で、徹也は、銃を造り、安倍晋三を撃ち殺した。

晋三の政治思想が憎かったわけではない、ただ、彼の持つ『影響力』を、己の目的(統一教会に思い知らせるという)のために利用しただけだ。

晋三こそいい迷惑だった。彼はひとりの人格としてではなく、一つの影響力として殺されたのである。

情けない話だ。

しかしそれは、何の影響力をも持たない自分を、どこかで安心している己が情けないだけのこと。安倍晋三は、殺されることによって世界に最も大きな影響が及ぶ人物だったに違いない。

それでも、晋三が偉大な男だったとはボクは思わない。晋三のことを個人的に知らないからかもしれないが、それだけでもない気もする。

目的への執念という点で、徹也は恐るべき男だ。徹夜の人生をそこまで狂わせた統一教会や文鮮明なども恐ろしい人間なのかもしれないが、徹也や晋三がやったことと比べると、只の詐欺に過ぎなくて、笑わせる。

ぼくもまた、何かしたい。駄文を連ねる事で何かが出来るわけでもなく、へたくそな詩(死)や絵で何かを表現できるわけでもないとしても。

限られた時間の中で、何かを、かつ誰かを、偏愛したい。
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