第5話

文字数 1,198文字

オタクに逆戻りか、と一瞬焦ったが。

先週の『四連休(金曜日仕事休んだ)』の間、ふいにゲームがしたくてたまらなくなった。それも、がっつりした昔風のどRPG。

『女神異聞録ペルソナ』の1など、名作だと深く感じつつも、その当時は『時間の無駄だ』と思い途中で放り出した、心残りな作品が幾つかある。

今になって、「なにが時間の無駄か」という気持ちが生じてきている。それはまあ、そんな大した人生ではないからかもしれないが、別の言い方をすると、明らかに名作とわかっている、良く作りこまれた良作ゲームを前にして、たかだか残り20時間からの時間を、『無駄だ』と言い切り、それらのゲームを切って捨てるという、実利主義的な自分の部分を今になって反省した、ということなのだが。

そういう意味で今も心に残るもう一つのゲームは、『ヘラクレスの栄光Ⅲ』である。この作品も、非常によくできた良作であることを心に感じつつも、『時間の無駄』と考える気持ちが働いて、手放してしまった。後半、話が妙に大きくなりすぎるっていう問題もあったかもしれないが。

第二話でも書いたが、ぼくはかつて、時間を妙にケチケチ考えるところがあった。『時間がもったいない』という焦りは、なにか偉いもの、立派な者にならねばならぬという焦りでもあったのだ。その焦りとか、『ゲームだから』とか言って非常に豊かなものを提供してもらっておきながらも『無駄』と断じてしまっていた、傲慢さを反省せねばならないなあ、と考えたりしたのである。

そこから始まって、先週は無性にゲームがやりたい気持ちになっていた。それで最終的に、ベクターを覗いて、素人の方が作った無料のRPGを一作ダウンロードさせていただき、連休中、二日間ほど、がっつりプレイさせてもらった。自由度の高いその作品にほとんどはまりかけていたのだが、同時に難易度もなかなか高くて、半ば投げ出し気味に先週中断したまま、今週は、そのゲームを開くことはなかった。

昔のぼくだったら、確実に今週もやりこんでいたと思う。それをせずに昨日は船場に行きクールなシャツを買い、今日は太極拳と昼寝と読書である。

リア充?

そんな言葉は半分はもう、死語なのかもしれないが、ぼくはもうすでにゲーム大好き人間ではないみたいなのである。そのことにちょっと安心した。特にイケテル生活を送っているわけではないのだが、それでも、今のぼくには、そこら辺のゲームよりも興味のある事柄が幾つかあり、そしてゲーム内の世界よりも現実の世界の方を愛しそこで生きる事と決めているのだという事に、社会的適応への確かな一歩を感じるのである。

大学を中退してから二十年、ほとんど成長がなかったようにも思えるが、それでもなんとかこの社会で生きていける様に、少しずつ少しずつ自分を変えてきたのだと思う。それは少し寂しいことの様な気もするが、それよりもほっと安心する事の方が多いのも事実である。

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