第81話

文字数 1,296文字

精神病者の就労に関する研究書をはんぶんくらい読んだのだが、そこで分かったことは、

精神病者の就労は可能だが、仕事がハードになるとついていけなくなるという点では、健常者とまったく同等にはいかない、という点である。

ぼく自身の経験を思い出すと、色々社会経験も積んで、四十過ぎてから倉庫の仕事で正社員になれた。

倉庫の仕事は向いていたと思う。仕事が夜遅くまでかかっても、辞めずに対応することができた。ぼくに出来なかったのは、一部の人間関係である。

怒鳴る職人がいるのが当たり前の、建築業の世界で、もろに影響を受けたのか、ぼく自身もいつしか怒鳴る人になっていた。そして最後には、コロナ禍の世界でも変わることを志向しないとして会社を否定し、自ら辞めてしまったのである。

だから今から考えると、能力的には倉庫の仕事ならば正社員でも勤まるとは思う。しかし、今働いているような、福祉・介護の仕事では、とにかくまとまった休みがある程度欲しいので、9時5時で働いたとしても週に4・5日くらい、となり、今のところで正職を勤めようとは思えない。

パートで4日間の仕事でも、障害年金2級を受給出来れば生活は出来る。ぼく自身は年金未納の問題があって受給条件を満たさないのだが、妻の収入と合わせて、節約してなんとか今は暮らしていけている。

精神障害をオープンにして働くとなると、正社員での雇用はまず難しくなるらしい。前の倉庫の仕事も、クローズで入って後からオープンにするという作戦を使ったのだが、そのことを色々言われたりした。

はじめからオープンだったら、配慮などの話もしやすくなるが、月給が20万円を越えるような正社員の仕事では採用されないかもしれない。

そういうジレンマがある。

精神障害があってもなくても、人間関係というものは複雑なもので、厄介なものだろう。そこにメンタルのぐじぐじが加わると、些細な事でひどく落ち込んだり腹をたてたりして、高ストレスの状態に陥りやすくなる。

精神疾患があるからといって仕事が半人前にしか出来ないわけではなくて、逆に思っていても人が言えない、やれない事をあっさりやってのけたりと、ブレイクスルー的な部分を持っている可能性がある。

精神疾患持ちには繊細な個人主義者が多く含まれるのではないかとぼくは思う。その点を上手く活かして、これから個人的な働き方ができたらなぁと考えてはいる。

人に雇われて、パートならなんとか勤まる、という程度には、四十代も後半になり、そこまでは成長した、と思う。けれども個人的に何かをして働いて食べていくことができるかというと、無理かなぁと今は思う。

自分自身を鑑みるとき、パーツとしては有能な部分があっても、トータルでは、プレゼンなどが下手くそすぎる気がするのだ。トータルとしては、たぶん明らかに世の中と噛み合っていない。

そんなにんげんが生きていくには、やはり雇われて生活するのが楽か、と思う。でありながらその中で言いたい放題言わせてもらったりもしているわけだが・・。

来年は、もう少し、職場でのちょっとした不快に無関心でいられるようにしたいと思う。そして長く勤められるようにがんばりたい。
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