第62話

文字数 1,611文字

 恥の多い人生を生きてきたと、さる有名な作家が書かれたそうだが、その人は、恥もたくさん経験したかもしれないが、それにもまして作家という栄光を存分に浴びていたのである。そこへ行くとこのわたくしは、馬鹿、女好き、オナニー野郎、運動音痴、ナルシスト、にんげん関係超苦手で仕事にも影響及ぶと、恥の要素満載、昔桃谷にあった喫茶店カナリアの特大パフェにも負けないほど、恥がアイスクリームのように何段にも幾重にも、重なっていやぁがるのだ。

 ここまで書いておれは、うかつにも、読者の心をがっちり掴んじまったと勘違いしてしまった。そして安心したのである。おれは書ける、と。

まあいい、続けるとしよう。と、書いてから、二、三か月がたってしまった。やはり俺には小説など書けないのであろうか。SYOUSETU.なんでそんなものがこの世に存在していやあがるのか?なんでそんなもの、このおれが書かなくてはならないのか?それでもおれは小説を書きたい。筋もくそもない、ただむきだしのSYOUSETUを。

おれはUFOに乗ったことはないけれども、UFOがおれをある日迎えに来るのではないかという妄想に半ば怯えている。そしてこの社会と中途半端に適合し、中途半端に不適合な状態を繰り広げるこのおれを、アンドロメダ星雲ってところに連れて行ってしまうのではないかと戦々恐々としている。おれは何で、まともに生きられないんだろうか?

まあそんなことはともかくとして、というか、そのあたりを小説という作業で極めてみたいわけだ。どうだろうか?私の言っていることが理解できますか?

たぶん、出来ると思う。だってあなたはきっと私みたいに賢いし、それに小説というものはそういうものだという気がするから。私には闇の部分がある。闇を抱えながら、それなりに平和に、そしてそれなりにこの世界この世に満足して生きてはいる。だけれども、それだけでは十分ではないのだ。

吠えるために生まれてきた。魂をすり減らしてまで生活のため働くために生まれてきたわけではない。なんのためにと問われるならば、吠えるためにだとぼくは答えよう。オオカミですらない、ただの負け犬。それで十分だ、吠えてやらぁ!!
それがこの紙、そしてこのパソコンなのだ。わたくしにはプログラミングの才能はないけれども、文字を撃つ(鬱)事は出来る。だから私はハッカーにはならずに、物書きを目指す。お笑いで世界を変えてやる。私の書いているものがお笑い草だという事は重々承知している。でもこれはお笑いではない。だから世界を変えるのは私自身ではない。誰か偉大なお笑い芸人の人が、一気に世界を終わらせてくれるかもしれない。

おっと待って!世界が終わったら、悲しむのはぼくもおんなじ。あんただってそう。だから終わらない世界でいつまでも戯れていたいものだと露願う。世界は続いていく。ぼくには姪がいる。そしてぼくには仕事がある。

生活、ぼくは生活を愛する、年末と、お正月とが好きだ。夏が来て、Tシャツと短パンで過ごすことも好きだ。それから、偉大なものをも、ちょっぴり愛している。

神社で、この祈りを、神に捧げる。神様がそれを受け取ってくださるのは、このぼくにも偉大なところがほんのわずか、カケラでも残っているからかもしれない。吠えることとそのこととは関係がない。

ベルカよ、なぜ吠えない?ドロボウ猫よ、なぜ吠えぬ?

吠えろ!吠えろ!吠えろ!この魂よ、夜空に向かって吠えろ!!

夜が俺に覆いかぶさる。おれは夜に対して発情をする。夜の女王が美しく微笑む。おれは射精して、後悔する。ちっとも英雄的ではない。


英雄なんかいらない。奴らはみんな殺人鬼だ。


生活を英雄的に生き切ることはひどく難しいことだけれども、そこにしか道はない、と想う。直感だけが頼りだが、たまにはその直感をも裏切れ。


吠えろ。走れないなら。走れないおれ、ただ吠えるだけのおれ。無様でかっちょ悪い俺。歯が一本抜けている
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