第106話

文字数 831文字

ステラ守口という、A型作業所に通っている。

ステラは6月末で閉所する。国が、A型作業所に、利益を出すことをざっくりと求め、それに対応できなくてステラは十年に及ぶ歴史の幕を閉じるのだ。

利用者はみんな、次の行き場を探しており、障害者枠で一般の仕事を目指す者もいれば、またA型作業所でと考える者もいる。

ムカつくやつもいるが、それも含めて、みんな仲間だったんだなと思える、ステラ守口は、素敵な作業所だったのだ。

国に翻弄される、福祉施設と障害者。障害者が、ここを支援して欲しいというときの、『人権』という概念を、嫌う人も多いらしい。

障害者を差別してはいけない。

それが人権なのか?

ぼくは精神障害者であり、多くの人に迷惑をかけていると思う。同時に、そんな自分をどうにかして支援して欲しい、地域で仕事をしながら生きていくことを支えて欲しいという思いも、ようやくこうして発信出来るようになってきた。

精神障害者というものは、何が自分の長所であり短所なのか、どこを支援してもらえたらまっとうに社会で生活していけるのかを言葉にして人に示すのがなかなか難しい。

それは一口に精神障害者といっても千差万別で、多種多様な困りごとがあるからだと思う。そしてまた、本人の困りごとと周りの困りごととが一致していない事があるのも、精神障害というものの特徴かもしれない。

それでも、精神障害者もまた、人権の概念に守られ、この概念を歓迎するとは思う。

一人の精神障害者として言わせてもらうと、何が何でも守ってくれと言っている訳ではなくて、それでも支援は必要だと思うという、生活の中から生まれてくる実感のようなものがある。

人権という概念を振りかざしたら嫌われる世の中ではある。しかしながらどこかに、人権というものを持っておかないと、社会が歯止めが効かなくなる恐れもあると思う。

そうした中で、障害者たちも、地域で、健常者たちや、ある意味障害者的とも言える、老人たちと共に生きている。そこに若干名の子どもたちも住まう。
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