第19話

文字数 963文字

精神科の病気については、症状などの重さと、実際の(特に社会生活における)損傷の程度とが、釣り合わないことがしばしば見られると言われてきた。

ぼくの場合もそうだと思う。

社会に出て、ゆうメイトのバイトから記者の仕事まで色々働いてきたけれど、若い頃は特に、一応面接では問題なく受かったりもする。そして働いてみると、職種にもよるが、ゆうメイトくらいの仕事ならば働けないこともなかった。

人と知的な議論を交わしたり、仕事の上でのやり取りをする分には、ぼくの病気や障害はあまり問題にはならなかったと思う。ところが、長く働いていると、にんげん関係などが出来てきて、そのなかで修復不能な言動が出ることがあり、自分から切ってしまう場合も含めて、にんげん関係が続かず、それが仕事にも反映されて、自分から辞めてしまう、という事が、結構何度も続いたのだ。

いまにして思うと、六つくらいの職場で働いたが、そのうち半分は、理性的な判断さえ伴っていれば、辞めずに済んだであろう職場である。

それらの辞職は、ステップアップやパワハラから逃れるための辞職ではなかった。そこに何があったかと言うと、やはり微細な妄想傾向が影響していたのだと思う。

こうして、ぼくの妄想は、宇宙規模のものであったり国家的な陰謀論などではなく、ただ単に職場のあいつが俺に敵意を持っているとか「攻撃を仕掛けてくる」といったものだが、(あるいはだれそれ女子が俺に好意を抱いている、と言うのもあるかもしれない)、それが、まわりまわって職を辞す、と言う事になり、経歴に影を落とすことにもなるのだ。

つまり、今現在、もうじき46歳になるのだが、アルバイトの身なのである。

ここからもう一度這い上がろうと思う。まずは、アルバイトでも、なんとか食べていけるという事に感謝を捧げつつ、ちゃんとこの仕事に身を入れて、結果を出すという事。休むことも極力控えたい。

ぼくの病気は、「誰かから攻撃を受けた」という妄想なのである。その妄想の火種になったような何気ない疎外や違和感はあったかもしれないけれど、それで大騒ぎして苦しんで仕事まで辞めるってのが、今までの、比較的条件の良かった職場でぼくがとってきた行動パターンだった。これがぼくの病根だったのだと想う。

いよいよここに、医療のメスが入った。これからはきっと、うまくいく。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み