戦いの果てに
文字数 1,558文字
「これで、関係ない奴が迷い込むことは無くなったな」
そう話すザウバーの声は落ち着いており、作戦を実行に移すまでの間に覚悟が決まっていた様だった。その後、ベネットの使った力によって、遺跡毎その一体を浄化した。この際、消費した魔力をおぎなう為に、ベネットはアークから渡された回復薬を飲む。
魔法を使えないダームと言えば、仲間が無防備になる詠唱中に周囲を警戒していた。少年の警戒は、仲間が魔法を使い終えたことで緩むが、それを察したかの様に彼等を強風が襲う。
「酷いじゃないか、ザウバー。いきなり生き埋めにするだなんて」
それを聞いたザウバーと言えば、口に入った砂を吐き出した。ザウバーは、細めた目で敵を見据え、吐き捨てる様に言う。
「死なねえ相手をどうにかするには、何処かに封じるのが定石だろ」
ザウバーは軽く笑い、防御魔法を何重にもかけた。それを待っていたかの様にベネットは詠唱を始め、それを阻止しようと攻撃が開始された。
ザウバーは、発動した防御魔法が壊される度に、新たに魔法による盾を生み出した。しかし、それは徐々に削られ、敵との力量差にザウバーは苦虫をかみつぶした様な表情になる。
「……悪しき呪いを浄化せよ」
敵の攻撃が届きそうになった刹那、ベネットの魔法が発動する。この際、周囲は白く強い光に包まれ、攻撃の手も緩んだ。
この為、魔力を消耗した二人は隙を突いて回復薬を素早く飲み、新たな攻撃に身構えた。一方、ダームは敵に向かって駆けており、それを確認したザウバーは少年に攻撃が当たらぬようサポートをする。
中々、敵に攻撃までは出来なかった少年だったが、ザウバーのサポートもあってか、徐々に敵を押していった。そんな緊張した空気の中、敵はザウバー達の居る方向に攻撃を放った。
少年は、攻撃先に気付きながらも、魔法を発動した後の僅かな隙を突いて、敵の胸元に剣の刃を深く差し込んだ。その傷口からは血は滲み出ず、代わりに黒い靄の様なものが湧き出てくる。
その靄は、少年の防具を溶かしていった。それでも、少年は剣の柄を離すことはない。
ザウバーと言えば、少年が攻撃を受けぬ様、敵の体を太い蔓で拘束していた。また、ベネットは傷付く少年の体を治療する魔法を使い、ダームをサポートしている。
無限とも思われた緊迫した空気が流れる中、遂に敵の体から流れる靄は消えた。すると、剣を刺した箇所から、敵の体の石化が始まった。
石化は、胸元から腹部や頭部へ、次第に体の先端部分へと広がっていった。敵は、何かを伝えたがる様に唇を震わせるが、それが言葉になることは無かった。
石化が、遂に目元まで来た時、敵は一筋の涙を流す。それに気付いたザウバーは、思わず敵の顔から目を逸らした。敵の石化が終わった時、ダームが手にしていた剣の辺りから石化した体がひび割れ始めた。
ひび割れは次第に大きくなり、敵の体は濃い灰色した欠片に成り果てた。
敵の体が完全に崩れた後も、ダームは動かなかった。そして、暫く立ち尽くした後で、少年は疲れた様子で息を吐いた。
「これ……倒せたんだよね?」
ダームは、仲間の方を見ることなく声に出した。少年は、敵だった塊を見下ろしており、その体には攻撃を受けた跡が見受けられた。
ダームの身に付けていた防具はボロボロで、服の袖も溶けるように消えていた。また、彼の前髪も焦がされた様に千切れ、短くなっている。
敵の姿から目を逸らしていたザウバーは、ダームの問いで目線を敵だったモノへと向けた。そこには、おおよそそれが生きていた物とは思えぬ塊があり、青年は苦しそうに低い声を漏らした。
「ああ、もう何もしては来ねえだろう」
ザウバーは無理矢理微笑み、ダームを見た。そして、青年は転移魔法の詠唱を始め、ザウバー達は遺跡からマルンへ移動をする。
そう話すザウバーの声は落ち着いており、作戦を実行に移すまでの間に覚悟が決まっていた様だった。その後、ベネットの使った力によって、遺跡毎その一体を浄化した。この際、消費した魔力をおぎなう為に、ベネットはアークから渡された回復薬を飲む。
魔法を使えないダームと言えば、仲間が無防備になる詠唱中に周囲を警戒していた。少年の警戒は、仲間が魔法を使い終えたことで緩むが、それを察したかの様に彼等を強風が襲う。
「酷いじゃないか、ザウバー。いきなり生き埋めにするだなんて」
それを聞いたザウバーと言えば、口に入った砂を吐き出した。ザウバーは、細めた目で敵を見据え、吐き捨てる様に言う。
「死なねえ相手をどうにかするには、何処かに封じるのが定石だろ」
ザウバーは軽く笑い、防御魔法を何重にもかけた。それを待っていたかの様にベネットは詠唱を始め、それを阻止しようと攻撃が開始された。
ザウバーは、発動した防御魔法が壊される度に、新たに魔法による盾を生み出した。しかし、それは徐々に削られ、敵との力量差にザウバーは苦虫をかみつぶした様な表情になる。
「……悪しき呪いを浄化せよ」
敵の攻撃が届きそうになった刹那、ベネットの魔法が発動する。この際、周囲は白く強い光に包まれ、攻撃の手も緩んだ。
この為、魔力を消耗した二人は隙を突いて回復薬を素早く飲み、新たな攻撃に身構えた。一方、ダームは敵に向かって駆けており、それを確認したザウバーは少年に攻撃が当たらぬようサポートをする。
中々、敵に攻撃までは出来なかった少年だったが、ザウバーのサポートもあってか、徐々に敵を押していった。そんな緊張した空気の中、敵はザウバー達の居る方向に攻撃を放った。
少年は、攻撃先に気付きながらも、魔法を発動した後の僅かな隙を突いて、敵の胸元に剣の刃を深く差し込んだ。その傷口からは血は滲み出ず、代わりに黒い靄の様なものが湧き出てくる。
その靄は、少年の防具を溶かしていった。それでも、少年は剣の柄を離すことはない。
ザウバーと言えば、少年が攻撃を受けぬ様、敵の体を太い蔓で拘束していた。また、ベネットは傷付く少年の体を治療する魔法を使い、ダームをサポートしている。
無限とも思われた緊迫した空気が流れる中、遂に敵の体から流れる靄は消えた。すると、剣を刺した箇所から、敵の体の石化が始まった。
石化は、胸元から腹部や頭部へ、次第に体の先端部分へと広がっていった。敵は、何かを伝えたがる様に唇を震わせるが、それが言葉になることは無かった。
石化が、遂に目元まで来た時、敵は一筋の涙を流す。それに気付いたザウバーは、思わず敵の顔から目を逸らした。敵の石化が終わった時、ダームが手にしていた剣の辺りから石化した体がひび割れ始めた。
ひび割れは次第に大きくなり、敵の体は濃い灰色した欠片に成り果てた。
敵の体が完全に崩れた後も、ダームは動かなかった。そして、暫く立ち尽くした後で、少年は疲れた様子で息を吐いた。
「これ……倒せたんだよね?」
ダームは、仲間の方を見ることなく声に出した。少年は、敵だった塊を見下ろしており、その体には攻撃を受けた跡が見受けられた。
ダームの身に付けていた防具はボロボロで、服の袖も溶けるように消えていた。また、彼の前髪も焦がされた様に千切れ、短くなっている。
敵の姿から目を逸らしていたザウバーは、ダームの問いで目線を敵だったモノへと向けた。そこには、おおよそそれが生きていた物とは思えぬ塊があり、青年は苦しそうに低い声を漏らした。
「ああ、もう何もしては来ねえだろう」
ザウバーは無理矢理微笑み、ダームを見た。そして、青年は転移魔法の詠唱を始め、ザウバー達は遺跡からマルンへ移動をする。