割と放置プレイ

文字数 1,382文字

 それぞれに休息を取り始めてから暫くして、ザウバーが動き始めた。しかし、彼を縛っていた縄は上体の分しか外されておらず、ザウバーは立ち上がろうとしてバランスを崩してしまう。

「大丈夫? ザウバー」
 ダームは立ち上がり、転びかけたザウバーに駆け寄った。

「まあまあ大丈夫だな。縛られているのを忘れちまった辺り、完全に回復はしてねえ」
 ザウバーは、椅子に座ったまま右脚を拘束している縄を解こうとした。しかし、その結び目は脚の右側にあり、ザウバーは体を捻りながら苦戦する。

 その様子を見たダームは、ザウバーの左側でしゃがみ込む。少年は、そうしてからザウバーの左脚を縛っていた縄を解いた。

 程なくして、ザウバーも右脚側の縄を解き、ダームへ礼を言った。ザウバーは、足首を回してから立ち上がり、体中の固まった部分を動かした。

「本調子になるまでは、まだだな」
 ザウバーが話し出した時、彼とダームの腹が同時に鳴った。この為、ダームとザウバーは顔を見合わせて笑う。

「ご飯にしようよ。食べれば回復も早くなりそうだし」
「だな。せっかくの機会だ、温かいもん作って食おうぜ?」
 そこまで話したところで、二人はベネットの不在に気付いた。

「そういや、ベネットはどうした。ここを借りてんのはアイツだし、勝手に料理したら後でややこしそうだろ」
 すると、ダームは廊下に続くドアへ顔を向けた。

「ベネットさんなら、慣れない術を使って疲れたから、自室で休むって言ってたよ? ザウバーは、気を失っていたから知らなかったかもしれないけど」
 少年は、楽しそうな笑顔を浮かべ、ザウバーの顔を見る。

「それに、勝手に使った位なら、問題ないと思うよ? 流石に、何かを壊したり何かを焦がしたりしたら怒るだろうけと」
 ダームは、食料の入った袋を開けた。しかし、そこには満足のいく食材は入っておらず、ダームは肩を落とす。

「ごめん、先ずは買い物だった。今は、お肉を沢山食べて、果物も沢山食べたい気分」
 ダームは、苦笑いを浮かべながらザウバーの方に体を向けた。

「僕は買い物に行くけどザウバーはどうする? まだ完全には回復していないんでしょう?」
 少年の問いに、ザウバーは腕を組んで考え始めた。ザウバーは、暫く考えた後で椅子に腰を下ろす。

「俺は留守番するわ。判断力も弱っているみてえだし、邪魔になるだけだろうしな」
 ザウバーは軽く笑い、目を閉じた。

「好きなだけ買ってくりゃ良い。一人で持てる量なら、食い切れねえってことはねえしな」
 ザウバーの答えを聞いたダームは、大きな袋を手に取った。彼は、自らの胴部程ある袋を広げ、口を開く。

「じゃあ、これを満杯にしても、持てるなら買って良いの?」
 ザウバーは目を開き、ダームの持つ袋を見る。青年は、何秒か袋を見た後で、口角を上げた。

「お前、どれだけ腹が減ってるんだよ。まあ、袋が破れない様に重いものは入れ過ぎるなよ? 俺が付いて行かねえんだ、買ったもの落としても魔法で運べねえからな」
 ダームは、不機嫌そうな表情を浮かべ袋を畳んだ。彼は畳んだ袋をテーブルに置き、別の袋を手に取った。

「さっきのは例えだよ。パンはまだあるし、お肉と果物は別の袋に入れたいから……元から、大きな袋は使うつもりなかったし」
 ダームは、それだけ言うと買い物に出かけた。一方、ザウバーは少年の背中を見送り、大きく息を吐き出した。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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