危険な資料と悪意除けハーブ
文字数 2,063文字
意気揚々と資料を読み始めたザウバーだったが、調べ終えていない書物は曲者だらけだった。術で開けないように細工したものや、触ろうとすれば棘を生やす書物。ザウバーは、そう言った書物を後回しにして、資料へ目を通していった。
昼になり、ザウバーはダームから昼食に呼ばれる。この為、彼は資料調査を止めてダイニングに向かった。
ザウバーは、ダームに促されるまま食べ始め様としたが、その前に手に負った傷をベネットに気付かれる。
「その手の傷はどうした? 怪我をする様なものは部屋に無かった筈だが」
その問いで、ザウバーは自らの掌を見た。彼の掌は、出血はしていないものの穴だらけで、ちらりと見たダームが顔を歪めた程だった。
「元々、部屋には無かったものにやられたんだよ。専門的な書物は、やり方を間違えると痛い目をみる。だからこそ、魔力を感じられないダームには触らせ無かったんだけどな」
そう言うと、ザウバーは掌をダームに向けた。しかし、ダームが傷を見るよりも前にベネットが術を作って傷を治す。この為、ダームは痛々しい傷を見ること無く済み、安心した様子で息を吐いた。
「読めないように細工をしてある資料こそ、怪しいけどな。その細工を突破するのは簡単じゃない。だから、昼飯食ったらまた資料調べるわ」
ザウバーは、言うだけ言って食事を始めた。
「ザウバーが資料を調べるなら、僕達はヘイデルで買い物をしてこようよ。マルンでも食べ物は買えるけど、ヘイデルやアークさんのことも気になるし、回復薬についても探したら有るかも知れない」
ダームは、問い掛けながらベネットの顔を見た。すると、ベネットは頷き、ザウバーの顔を横目で見る。
「そうだな。まだ、対魔族の作戦は出来ていないが……だからこそ、情報が必要となるだろう」
肯定の返事を得た少年は安心した様子で食事を続ける。一方、ベネットはザウバーの方を向いた。
「ザウバー、私とダームは暫くヘイデルに向かう。食料は幾らか残っているが、帰還が遅れたら」
「食料が足りなきゃマルンで買う。子供相手みたいな心配すんな」
ザウバーは、昼食を進めながら言葉を返した。そうして、仲間より早く食事を終えると、薬草の乾燥具合を確かめに外に出る。しかし、乾燥が済んだ薬草は無く、ザウバーは足早にダイニングに戻った。
「資料を調べ終えて時間が余ったら、回復薬作りに当てる。別に俺を放置しても魔族の所まで転移しねえから安心しとけ」
ザウバーは、そう言うと資料を調べる為にダイニングを出た。ダームとベネットはザウバーを目で追いつつも昼食を食べ続け、食べ終わった後でヘイデルに向かった。
ザウバーは、ひとしきり資料を調べた後で、資料を詰め込んだ箱を見た。彼は、箱から資料が溢れそうなことを確認すると溜め息を吐く。
(そろそろ、資料を入れ替えねえとな)
ザウバーは、一旦家の外に出ると、草丈のある植物を生やした。その草からは独特の香りが発せられ、ザウバーはそれを根元から切り取ると屋内に入った。
ザウバーは、切り取った草を丁寧に編んでいき、それを冠状にして手首に巻いた。彼は、同じ様に草で作った輪を足首にも巻き付けた。それから、服に草を擦り付け、服の生地に香りを染みこませた。
(これで、幾らの呪い対策にはなるだろ)
ザウバーは、調べ終えた資料を見ると、目を瞑って呪文を唱えた。転移魔法を使ったザウバーは、調べ終えた資料や使わなかった草ごと兄の書斎に移動した。ザウバーは、素早く本棚の空いた箇所に資料を戻していくが、その間に手首に巻いた草は枯れ、千切れて床に落ちていった。
(ギリギリ間に合うか……?)
ザウバーが紋様の描かれた本棚に資料を戻しきると、手首に巻いた草が落ちることは無くなった。この為、ザウバーは安堵した様子で長く息を吐く。
(一応、新しい草で防御しておくか)
ザウバーは、持ち込んだ草を編み込んで手首に巻いた。彼は、そうしてから調べ終えていない資料を眺めた。
調べ終えていない資料は、本棚の下半分を占めていた。この為、ザウバーは難しそうな表情を浮かべて目を瞑る。
(なるべく多く持ち帰りたいが、呪詛の発動条件がベネットの考えた通りなら、持ち帰り過ぎるのは不味い。が、対策は一応した)
ザウバーは、資料を入れる為の箱を問題の本棚の前に置いた。彼は、素早く資料を箱に詰めていき、それが満杯になった所で手首に巻いた草を見た。
すると、その半分程は落ちていたが、ザウバーは別の箱に半分程資料を入れてから撤退をする。
ザウバーが箱に詰めた資料ごとマルンに戻ると、手首に巻いた草は殆ど枯れて落ちていた。しかし、マルンの小屋に戻って来てからは草に何の変化は無く、一仕事終えたザウバーは椅子に座って一息ついた。
(何とかなったみてえだな。散らかった部屋を見たらダームが文句を言うだろうが、アイツを連れていく予定もねえから、
ザウバーは、少しの間休んだ後で持ち帰った資料を読み始めた。そうこうしている内に日は暮れ、ザウバーは夕食の準備を始める。
昼になり、ザウバーはダームから昼食に呼ばれる。この為、彼は資料調査を止めてダイニングに向かった。
ザウバーは、ダームに促されるまま食べ始め様としたが、その前に手に負った傷をベネットに気付かれる。
「その手の傷はどうした? 怪我をする様なものは部屋に無かった筈だが」
その問いで、ザウバーは自らの掌を見た。彼の掌は、出血はしていないものの穴だらけで、ちらりと見たダームが顔を歪めた程だった。
「元々、部屋には無かったものにやられたんだよ。専門的な書物は、やり方を間違えると痛い目をみる。だからこそ、魔力を感じられないダームには触らせ無かったんだけどな」
そう言うと、ザウバーは掌をダームに向けた。しかし、ダームが傷を見るよりも前にベネットが術を作って傷を治す。この為、ダームは痛々しい傷を見ること無く済み、安心した様子で息を吐いた。
「読めないように細工をしてある資料こそ、怪しいけどな。その細工を突破するのは簡単じゃない。だから、昼飯食ったらまた資料調べるわ」
ザウバーは、言うだけ言って食事を始めた。
「ザウバーが資料を調べるなら、僕達はヘイデルで買い物をしてこようよ。マルンでも食べ物は買えるけど、ヘイデルやアークさんのことも気になるし、回復薬についても探したら有るかも知れない」
ダームは、問い掛けながらベネットの顔を見た。すると、ベネットは頷き、ザウバーの顔を横目で見る。
「そうだな。まだ、対魔族の作戦は出来ていないが……だからこそ、情報が必要となるだろう」
肯定の返事を得た少年は安心した様子で食事を続ける。一方、ベネットはザウバーの方を向いた。
「ザウバー、私とダームは暫くヘイデルに向かう。食料は幾らか残っているが、帰還が遅れたら」
「食料が足りなきゃマルンで買う。子供相手みたいな心配すんな」
ザウバーは、昼食を進めながら言葉を返した。そうして、仲間より早く食事を終えると、薬草の乾燥具合を確かめに外に出る。しかし、乾燥が済んだ薬草は無く、ザウバーは足早にダイニングに戻った。
「資料を調べ終えて時間が余ったら、回復薬作りに当てる。別に俺を放置しても魔族の所まで転移しねえから安心しとけ」
ザウバーは、そう言うと資料を調べる為にダイニングを出た。ダームとベネットはザウバーを目で追いつつも昼食を食べ続け、食べ終わった後でヘイデルに向かった。
ザウバーは、ひとしきり資料を調べた後で、資料を詰め込んだ箱を見た。彼は、箱から資料が溢れそうなことを確認すると溜め息を吐く。
(そろそろ、資料を入れ替えねえとな)
ザウバーは、一旦家の外に出ると、草丈のある植物を生やした。その草からは独特の香りが発せられ、ザウバーはそれを根元から切り取ると屋内に入った。
ザウバーは、切り取った草を丁寧に編んでいき、それを冠状にして手首に巻いた。彼は、同じ様に草で作った輪を足首にも巻き付けた。それから、服に草を擦り付け、服の生地に香りを染みこませた。
(これで、幾らの呪い対策にはなるだろ)
ザウバーは、調べ終えた資料を見ると、目を瞑って呪文を唱えた。転移魔法を使ったザウバーは、調べ終えた資料や使わなかった草ごと兄の書斎に移動した。ザウバーは、素早く本棚の空いた箇所に資料を戻していくが、その間に手首に巻いた草は枯れ、千切れて床に落ちていった。
(ギリギリ間に合うか……?)
ザウバーが紋様の描かれた本棚に資料を戻しきると、手首に巻いた草が落ちることは無くなった。この為、ザウバーは安堵した様子で長く息を吐く。
(一応、新しい草で防御しておくか)
ザウバーは、持ち込んだ草を編み込んで手首に巻いた。彼は、そうしてから調べ終えていない資料を眺めた。
調べ終えていない資料は、本棚の下半分を占めていた。この為、ザウバーは難しそうな表情を浮かべて目を瞑る。
(なるべく多く持ち帰りたいが、呪詛の発動条件がベネットの考えた通りなら、持ち帰り過ぎるのは不味い。が、対策は一応した)
ザウバーは、資料を入れる為の箱を問題の本棚の前に置いた。彼は、素早く資料を箱に詰めていき、それが満杯になった所で手首に巻いた草を見た。
すると、その半分程は落ちていたが、ザウバーは別の箱に半分程資料を入れてから撤退をする。
ザウバーが箱に詰めた資料ごとマルンに戻ると、手首に巻いた草は殆ど枯れて落ちていた。しかし、マルンの小屋に戻って来てからは草に何の変化は無く、一仕事終えたザウバーは椅子に座って一息ついた。
(何とかなったみてえだな。散らかった部屋を見たらダームが文句を言うだろうが、アイツを連れていく予定もねえから、
そこは
気にしなくて良い)ザウバーは、少しの間休んだ後で持ち帰った資料を読み始めた。そうこうしている内に日は暮れ、ザウバーは夕食の準備を始める。