モフモフ報告ナデナデ編
文字数 2,298文字
「大変! 大変!」
ルルはベネットに駆け寄りながら叫び、砂を巻き上げながら止まった。それから、ベネットの脚にしがみつくと、そのままの姿勢で呼吸を整えた。
「洞窟の近くに、何か大きな魔物居た! 洞窟から生えてた!」
その報告にダーム首を傾げ、しゃがみ込んでルルと目線を合わせた。
「生えていたってどういうこと?」
「生えてたは生えてた! 近くは行かなかったけど……魔物の前の方だけ、洞窟からにゅーんて」
ルルの説明にダームは困惑し、ベネットはルルを肩に乗せる。すると、ルルは背伸びをしてベネットの額に自らの頭を押しつけた。ルルは、暫くそうしてから背伸びをやめ、ベネットの首に巻き付く形で体を休めた。
「成る程、まるで洞窟を守る様に魔物が居るな」
この時、ダームは立ち上がってベネットの顔を見た。一方、ベネットは頷いてから肩に乗っているルルを撫で、召喚獣が齎した情報を話し始める。
「マルンでも出現した魔物が居ただろう? あの魔物が、洞窟の傍にも居た。ただ、下半身はあたかも洞窟から生えているかの様に途切れている。恐らくは、出現箇所が洞窟の傍だったからだろうが……ヴァリスと言う魔族と関係しているとなるとしたら厄介だ」
その話にダームは目を見開き、拳を握り締めた。また、少年の緊張など関係なく、使命を終えたフォックとルルは体の力を抜いている。
「その魔物、武装している状態なら出てこないってアークさんは言っていたけど」
少年は、そこまで話したところで目を伏せ、長く息を吐き出した。
「だけど……ヘイデルにまでやってこないとは限らないよね?」
ダームは、何かを請うような眼差しでベネットを見た。一方、ベネットは幾らかの間を置いてから口を開く。
「近くに来ないとは限らない。だが、ヘイデル自体には結界を張ってある。ヘイデルから移動しない限り、被害は出ない。何より、未だにあの魔物の出現条件が不明だ。それに、討伐しようと下手に洞窟向かえば、魔族と戦わねばならない」
ダームは、一度口を開いてから話すことを止め、ベネットに寄り添う召喚獣達を見た。少年は、召喚獣達を見たまま考えを纏め、話し始める。
「フォックさんに、ルルさん。召喚されてくる時ってどんな感じですか?」
フォックとルルは突然の問い掛けに首を傾げ、それぞれにダームの顔を見る。召喚獣達は、そうしてから小さく唸り、質問に対する答えを出した。
「んー……丸くて白い輪っかが目の前でパッてなって」
「その輪っかが、中まで真っ白になったら」
フォックは顔を上げ、ルルは顔を下に向けた。そうして、召喚獣達は互いの目を見つめ、声を合わせて話を続ける。
「いっせーのせで飛び込む!」
フォックはダームの方へ顔を向け、ルルはうんうんと頷いてみせた。
「そしたら、ふわってなって」
「こっちに来られるの」
説明を終えた召喚獣達は、満足そうに胸を膨らませた。しかし、ダームはその答えでは満足がいかず、新たな質問を投げかける。
「じゃあ、戻る時は? 君達が喚ばれた時は見たことあるけど、戻る時ってどうしているの?」
ダームの質問に召喚獣達は目を瞑り、耳を上下に動かしてみせる。フォックは何度か尻尾を振った後で目を開き、ルルはその少し後で目を開いた。
「何だろ?」
「何だろね?」
「こっちで力を使うと疲れちゃうけど」
「あっちだと幾ら走っても元気」
「だから、疲れ過ぎたら戻る」
「こっちで楽しいことして、疲れちゃうから戻る」
召喚獣達の答えに、ダームは微苦笑した。この際、少年の表情を見たベネットが、召喚獣達を撫でながら話し出す。
「召喚獣がこちらで活躍するには、色々と制限がある。こちら側の誰かに喚ばれなければ召喚されることはないし、使える力や滞在時間も制限がある。その制限は召喚獣によって左右されるが、フォックとルルの場合はそれがどうにも曖昧な様だ」
ベネットの説明にダームは大きな瞬きをする。ダームは、そうしてから小さく唸った。
「じゃあ、他の召喚獣だったら曖昧では無いってこと?」
その問いにベネットは頷き、少年の目を見た。
「そうだな。他の召喚獣であれば、こちら側での役目を果たすと、そこで力を使い果たしてしまうか……しっかりと限界を把握した上で飛び回るかだな」
ベネットは、フォックを見下ろすとその顎の下をかき、話を続けた。
「以前、フォックとルルを召喚した時は、変身して他人の振りをして貰っただろう? この子達は、探査能力だけで無く変身能力もある。だからなのか、それぞれの能力をどれだけ使ったかで滞在時間が変わるのだ」
ダームは、納得が出来た様子で手を打った。彼は、そうしてから新たな質問を召喚獣達に投げかける。
「喚ばれる前って、どんな生活をしているの? その、いきなり召喚されるのに嫌だってことはない?」
フォックとルルは首を振り、大きく鼻息を吐いた。
「嫌じゃないよ?」
「あっちはあっちで快適」
「だけど、こっちはこっちで楽しい」
「どっちにも食べ物はあるし」
その答えに少年は頷き、召喚獣達は楽しそうに話し続ける。
「草も木も花も元気」
「いつもポカポカ」
「だけど、撫でてくれる人は居ない」
「だから、喚ばれると楽しいんだー」
フォックとルルの話を聞いたダームは、召喚獣達に向けて腕を伸ばした。
「撫でられるのって、僕でも嬉しいかな?」
それを聞いたルルはベネットの肩から離れ、ダームの腕に移動した。ルルは、そうしてからダームの顔を見上げ、口を開く。
「それは、撫で方次第!」
その答えにダームは笑い、ルルを抱き抱ええて撫で始めた。ルルは、ダームのやり方に指導を入れつつも、離れることなく撫で続けられるのだった。
ルルはベネットに駆け寄りながら叫び、砂を巻き上げながら止まった。それから、ベネットの脚にしがみつくと、そのままの姿勢で呼吸を整えた。
「洞窟の近くに、何か大きな魔物居た! 洞窟から生えてた!」
その報告にダーム首を傾げ、しゃがみ込んでルルと目線を合わせた。
「生えていたってどういうこと?」
「生えてたは生えてた! 近くは行かなかったけど……魔物の前の方だけ、洞窟からにゅーんて」
ルルの説明にダームは困惑し、ベネットはルルを肩に乗せる。すると、ルルは背伸びをしてベネットの額に自らの頭を押しつけた。ルルは、暫くそうしてから背伸びをやめ、ベネットの首に巻き付く形で体を休めた。
「成る程、まるで洞窟を守る様に魔物が居るな」
この時、ダームは立ち上がってベネットの顔を見た。一方、ベネットは頷いてから肩に乗っているルルを撫で、召喚獣が齎した情報を話し始める。
「マルンでも出現した魔物が居ただろう? あの魔物が、洞窟の傍にも居た。ただ、下半身はあたかも洞窟から生えているかの様に途切れている。恐らくは、出現箇所が洞窟の傍だったからだろうが……ヴァリスと言う魔族と関係しているとなるとしたら厄介だ」
その話にダームは目を見開き、拳を握り締めた。また、少年の緊張など関係なく、使命を終えたフォックとルルは体の力を抜いている。
「その魔物、武装している状態なら出てこないってアークさんは言っていたけど」
少年は、そこまで話したところで目を伏せ、長く息を吐き出した。
「だけど……ヘイデルにまでやってこないとは限らないよね?」
ダームは、何かを請うような眼差しでベネットを見た。一方、ベネットは幾らかの間を置いてから口を開く。
「近くに来ないとは限らない。だが、ヘイデル自体には結界を張ってある。ヘイデルから移動しない限り、被害は出ない。何より、未だにあの魔物の出現条件が不明だ。それに、討伐しようと下手に洞窟向かえば、魔族と戦わねばならない」
ダームは、一度口を開いてから話すことを止め、ベネットに寄り添う召喚獣達を見た。少年は、召喚獣達を見たまま考えを纏め、話し始める。
「フォックさんに、ルルさん。召喚されてくる時ってどんな感じですか?」
フォックとルルは突然の問い掛けに首を傾げ、それぞれにダームの顔を見る。召喚獣達は、そうしてから小さく唸り、質問に対する答えを出した。
「んー……丸くて白い輪っかが目の前でパッてなって」
「その輪っかが、中まで真っ白になったら」
フォックは顔を上げ、ルルは顔を下に向けた。そうして、召喚獣達は互いの目を見つめ、声を合わせて話を続ける。
「いっせーのせで飛び込む!」
フォックはダームの方へ顔を向け、ルルはうんうんと頷いてみせた。
「そしたら、ふわってなって」
「こっちに来られるの」
説明を終えた召喚獣達は、満足そうに胸を膨らませた。しかし、ダームはその答えでは満足がいかず、新たな質問を投げかける。
「じゃあ、戻る時は? 君達が喚ばれた時は見たことあるけど、戻る時ってどうしているの?」
ダームの質問に召喚獣達は目を瞑り、耳を上下に動かしてみせる。フォックは何度か尻尾を振った後で目を開き、ルルはその少し後で目を開いた。
「何だろ?」
「何だろね?」
「こっちで力を使うと疲れちゃうけど」
「あっちだと幾ら走っても元気」
「だから、疲れ過ぎたら戻る」
「こっちで楽しいことして、疲れちゃうから戻る」
召喚獣達の答えに、ダームは微苦笑した。この際、少年の表情を見たベネットが、召喚獣達を撫でながら話し出す。
「召喚獣がこちらで活躍するには、色々と制限がある。こちら側の誰かに喚ばれなければ召喚されることはないし、使える力や滞在時間も制限がある。その制限は召喚獣によって左右されるが、フォックとルルの場合はそれがどうにも曖昧な様だ」
ベネットの説明にダームは大きな瞬きをする。ダームは、そうしてから小さく唸った。
「じゃあ、他の召喚獣だったら曖昧では無いってこと?」
その問いにベネットは頷き、少年の目を見た。
「そうだな。他の召喚獣であれば、こちら側での役目を果たすと、そこで力を使い果たしてしまうか……しっかりと限界を把握した上で飛び回るかだな」
ベネットは、フォックを見下ろすとその顎の下をかき、話を続けた。
「以前、フォックとルルを召喚した時は、変身して他人の振りをして貰っただろう? この子達は、探査能力だけで無く変身能力もある。だからなのか、それぞれの能力をどれだけ使ったかで滞在時間が変わるのだ」
ダームは、納得が出来た様子で手を打った。彼は、そうしてから新たな質問を召喚獣達に投げかける。
「喚ばれる前って、どんな生活をしているの? その、いきなり召喚されるのに嫌だってことはない?」
フォックとルルは首を振り、大きく鼻息を吐いた。
「嫌じゃないよ?」
「あっちはあっちで快適」
「だけど、こっちはこっちで楽しい」
「どっちにも食べ物はあるし」
その答えに少年は頷き、召喚獣達は楽しそうに話し続ける。
「草も木も花も元気」
「いつもポカポカ」
「だけど、撫でてくれる人は居ない」
「だから、喚ばれると楽しいんだー」
フォックとルルの話を聞いたダームは、召喚獣達に向けて腕を伸ばした。
「撫でられるのって、僕でも嬉しいかな?」
それを聞いたルルはベネットの肩から離れ、ダームの腕に移動した。ルルは、そうしてからダームの顔を見上げ、口を開く。
「それは、撫で方次第!」
その答えにダームは笑い、ルルを抱き抱ええて撫で始めた。ルルは、ダームのやり方に指導を入れつつも、離れることなく撫で続けられるのだった。