少年の推測と休息
文字数 1,666文字
「良いの? 魔物のことを話さなくても」
「無理をさせても仕方ない。魔物については、二人で話し合うことも出来る」
ベネットは腕を伸ばし、少年の頭を軽く叩いた。頭を叩かれた者は、数秒の間を置いてから小さく頷く。
「僕、思うんだけど……魔物がこっちの空間を見てるって言うの、当たっている気がするんだ」
ダームは腕を組み、目を瞑って話し続ける。
「武装していると魔物は出てこない。アークさんが、そう言っていたんでしょ? だったら、こっちのことが分かってるって考えるのが普通なのに」
少年は、そう言ったところで右目を開き、声の大きさを抑えて話す。
「なのに……ザウバーは、それが不思議みたいな言い方だった。それで思ったんだけど、僕達が居る空間のことって、魔物からどれだけ分かっているんだろ? 攻撃のされ方から、僕達の居場所は分かっているみたいだったけど」
少年の話を聞いたベネットは目を細め、自らの考えを纏め始めた。彼女は、そうした後で呼吸を整え、少年の疑問に意見を加える。
「見えているというのは、当たっているのだろう。ただ、こちらの様子が、どれだけ見えているかは分からない。それに、体の一部しか現れなかったのも気になるな」
ベネットは、そこまで話したところで目を伏せ、顎に手を当てる。
「空間の歪む場所は魔物にも分からず、歪みが生じた場所に腕や頭を入れただけかも知れん」
少年は首を傾げ、不思議そうに聞き返す。
「何が起きるか分からないのに、腕を入れたりするかなあ……抜けなくなったら怖いし」
ダームは上体を傾け、空を見上げた。ベネットは無言で考えを纏め、頷いてから話し出す。
「そうだな。良く分からない所に腕を入れるのは、魔物であろうと恐ろしくない訳では無いだろう」
「魔物が、空間の歪みを作っている……ってことは無いかな? そうすれば、好きなところから出られるし」
ベネットは首を振り、落ち着いた声で言葉を返す。
「その可能性は低いだろう。仮に、魔物がそう言った能力を持っているのなら、今まで目撃されなかったのはおかしい」
その説明を聞いた少年は頷き、眠たそうに目を細めた。
「そっか……昔から出現する魔物なら、アークさんには対処出来るもんね」
少年は大きな欠伸をし、それに気付いたベネットは首を傾げて問い掛ける。
「眠いのか? 眠いなら、無理をせずに休んだ方が良い。話し合いは、朝にも出来る」
ダームは小さく頷き、そうしてから体を横たえる。少年は横になると直ぐ眠りに落ち、ベネットは空を見上げて深呼吸した。
それから数時間が経ち、初めに眠った青年が目を覚ました。目覚めた者は体を起こし、腕を伸ばした。彼は、そうしてから周囲を見回し、ベネットの姿をぼんやりと見た。一方、ベネットは青年の方に顔を向け、少年を起こさないよう小声で問い掛ける。
「どうした? 眠れないのか?」
問い掛けられた者は首を振り、首の後ろを揉みながら話し出した。
「いや、良く寝たから、見張りを代わろうと思ってよ」
ザウバーは、立ち上がって背中を伸ばす。
「お前だって疲れてんだろ。俺は考えたいこともあるし、これから朝まで起きておく」
青年は湖に向かい、その水を掬って口に含んだ。彼は、そうした後で仲間の元に戻り腰を下ろす。この時、ベネットはまだ横になっておらず、ザウバーは不機嫌そうに言葉を紡いだ。
「寝とけって。戦いで魔法を使ったのは、俺じゃなくてお前なんだから」
ベネットは無言で頷き、少年に寄り添う形で横になった。一方、ザウバーは安心した様子で息を吐き、星空を見上げて目を細める。青年は、そうした後で自らの手を見つめ、両手で顔を覆った。
「本当、分かんねえ」
ザウバーは、そう呟くとゆっくり膝を引き寄せる。その後、彼は膝に顎を乗せて背中を丸め、その姿勢のまま数時間を過ごした。そして、空が白けた頃に立ち上がり、自らの気持ちを入れ替える様に頬を叩く。
日が登って暫くすると、ダームやベネットが目を覚ました。彼らは、質素な朝食を済ませ、幾らかの食休みをしてから探索を始めた。
「無理をさせても仕方ない。魔物については、二人で話し合うことも出来る」
ベネットは腕を伸ばし、少年の頭を軽く叩いた。頭を叩かれた者は、数秒の間を置いてから小さく頷く。
「僕、思うんだけど……魔物がこっちの空間を見てるって言うの、当たっている気がするんだ」
ダームは腕を組み、目を瞑って話し続ける。
「武装していると魔物は出てこない。アークさんが、そう言っていたんでしょ? だったら、こっちのことが分かってるって考えるのが普通なのに」
少年は、そう言ったところで右目を開き、声の大きさを抑えて話す。
「なのに……ザウバーは、それが不思議みたいな言い方だった。それで思ったんだけど、僕達が居る空間のことって、魔物からどれだけ分かっているんだろ? 攻撃のされ方から、僕達の居場所は分かっているみたいだったけど」
少年の話を聞いたベネットは目を細め、自らの考えを纏め始めた。彼女は、そうした後で呼吸を整え、少年の疑問に意見を加える。
「見えているというのは、当たっているのだろう。ただ、こちらの様子が、どれだけ見えているかは分からない。それに、体の一部しか現れなかったのも気になるな」
ベネットは、そこまで話したところで目を伏せ、顎に手を当てる。
「空間の歪む場所は魔物にも分からず、歪みが生じた場所に腕や頭を入れただけかも知れん」
少年は首を傾げ、不思議そうに聞き返す。
「何が起きるか分からないのに、腕を入れたりするかなあ……抜けなくなったら怖いし」
ダームは上体を傾け、空を見上げた。ベネットは無言で考えを纏め、頷いてから話し出す。
「そうだな。良く分からない所に腕を入れるのは、魔物であろうと恐ろしくない訳では無いだろう」
「魔物が、空間の歪みを作っている……ってことは無いかな? そうすれば、好きなところから出られるし」
ベネットは首を振り、落ち着いた声で言葉を返す。
「その可能性は低いだろう。仮に、魔物がそう言った能力を持っているのなら、今まで目撃されなかったのはおかしい」
その説明を聞いた少年は頷き、眠たそうに目を細めた。
「そっか……昔から出現する魔物なら、アークさんには対処出来るもんね」
少年は大きな欠伸をし、それに気付いたベネットは首を傾げて問い掛ける。
「眠いのか? 眠いなら、無理をせずに休んだ方が良い。話し合いは、朝にも出来る」
ダームは小さく頷き、そうしてから体を横たえる。少年は横になると直ぐ眠りに落ち、ベネットは空を見上げて深呼吸した。
それから数時間が経ち、初めに眠った青年が目を覚ました。目覚めた者は体を起こし、腕を伸ばした。彼は、そうしてから周囲を見回し、ベネットの姿をぼんやりと見た。一方、ベネットは青年の方に顔を向け、少年を起こさないよう小声で問い掛ける。
「どうした? 眠れないのか?」
問い掛けられた者は首を振り、首の後ろを揉みながら話し出した。
「いや、良く寝たから、見張りを代わろうと思ってよ」
ザウバーは、立ち上がって背中を伸ばす。
「お前だって疲れてんだろ。俺は考えたいこともあるし、これから朝まで起きておく」
青年は湖に向かい、その水を掬って口に含んだ。彼は、そうした後で仲間の元に戻り腰を下ろす。この時、ベネットはまだ横になっておらず、ザウバーは不機嫌そうに言葉を紡いだ。
「寝とけって。戦いで魔法を使ったのは、俺じゃなくてお前なんだから」
ベネットは無言で頷き、少年に寄り添う形で横になった。一方、ザウバーは安心した様子で息を吐き、星空を見上げて目を細める。青年は、そうした後で自らの手を見つめ、両手で顔を覆った。
「本当、分かんねえ」
ザウバーは、そう呟くとゆっくり膝を引き寄せる。その後、彼は膝に顎を乗せて背中を丸め、その姿勢のまま数時間を過ごした。そして、空が白けた頃に立ち上がり、自らの気持ちを入れ替える様に頬を叩く。
日が登って暫くすると、ダームやベネットが目を覚ました。彼らは、質素な朝食を済ませ、幾らかの食休みをしてから探索を始めた。