少年なりの考え

文字数 1,420文字

 食事を終えた後、ダームは何も言えることがないのか黙り込んでいた。この為、ザウバーは退室し、持ち帰った資料を調べ始めた。
 ベネットも暫くしてから部屋を出、調べ終えていない資料に目を通し始めた。一人残されたダームは、時折歩き回りながら言葉にならない声を漏らしていた。

 ダームは、暫くの間部屋を歩き回った後、屋外に出た。彼は、そこで剣を引き抜くと、一心不乱に素振りを始める。
 少年は、真剣な表情で剣を振り続け、体は次第に温まっていった。汗が体を伝い、服が体に張り付いても尚、ダームは素振りを続け、それは日が暮れるまで続いた。

 日が暮れた頃、少年が外に出ていることに気付いた仲間が彼に声をかけ、そろそろ休憩をとるべきだと伝えた。ダームは、その提案を素直に受け入れ、剣を鞘に仕舞うと屋内に入った。
 その後、ダームは風邪をひかぬよう、着替えてくることを勧められる。この為、少年は着替えを持って浴室へ向かい、汗を流してから仲間の元へ戻った。

 すると、そこには温かな夕食が用意されており、ダームの腹は大きく鳴った。少年は恥ずかしそうに笑うと、頭をかいた。

「美味しそうなご飯があるから、お腹が我慢出来なかったよ」
 そう言って腹を撫で、ダームは仲間達の顔を見る。すると、ベネットは小さく笑い、ザウバーは用意された料理を指し示す。

「なら、たっぷりと食え。体を動かしていたんだろうし、腹も減っただろ」
 ザウバーは軽く笑い、ダームは照れた表情を浮かべながら席に着く。

「僕は、資料を読んでも参考になるか判らないし、魔族を倒す為の良い作戦も思いつかなかったから。だから、少しでも戦う時に有利になれば良いなって」
 そこまで話した時、少年の腹は再度音を立てた。この為、ダームは苦笑いを浮かべ、自らの腹を押さえた。

「じゃあ、強くなる為にも食え。体を作るにも栄養が必要だからな」
 ザウバーは料理をダームの居る側へ押し、少年の肩を叩いた。

「そうだね、料理が冷めても勿体ないし……頂きます」
 ダームの一言で食事は始まり、温かな料理は直ぐに少年の腹に収まった。少年は、買い込んでおいた果物を取り出すとそれも食べ、満足そうな笑顔を浮かべた。

「やっぱり、皆で落ち着いて食べるご飯ってそれだけで美味しい」
 ダームの一言を聞いたザウバーは、少年をからかうように話し出す。

「何だ? それだけでってことは、飯自体はそれ程じゃなかったか?」
 それに対し、ダームはザウバーの方を向いて言葉を返す。

「違うよ。どんなに美味しい料理でも、一人で食べるとつまらないから。だから、こうやって落ち着いて皆で食べるのって良いなって」
 少年は目を瞑り、大きく息を吐き出した。

「それに、こうやって落ち着いたら、考えも良く纏まって」
 そこまで話したところで、少年は頭を垂れた。ダームは、そのまま寝息をたて、体からは力が抜ける。

「寝てしまった様だな」
 ベネットは、ダームの顔の前で掌を振った。しかし、少年に反応はなく、ベネットは軽く溜め息を吐く。

「ダームのベッドに運んでおくわ。もう、ダームが使っている部屋の資料も片付いたしな」
 ザウバーは、そう言うなりダーム毎転移をする。それを見たベネットは呆れた表情を浮かべるが、何かを言う相手はそこに居なかった。

 暫くして、ダームをベッドに寝かせたザウバーが部屋に戻って来るが、ベネットは何かを言うことは無かった。その後、彼等は使い追えた食器を片付け、それぞれの使う部屋に向かう。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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