モフモフ調査隊

　ベネットは洞窟に一番近いヘイデルの門へ移動し、そこで召喚術を使った。

「フォック来ました！」
「ルルも来ました！」
　召喚された獣は、フサフサした尾を揺らしながら召喚主を見上げている。ベネットは、両手を使って召喚獣達を撫でると、洞窟の調査について説明していった。

「うん、なるべく遠くから見る！」
「危ないと思ったら戻る！」
　フォック達の返答を聞いたベネットは笑顔を浮かべ、召喚獣の安全と健闘を祈って送り出した。この際、ダームは静かにその様子を見守っており、召喚獣達が走り去ってから口を開いた。

「フォッジに向かった時も思ったけど、あんな小さな体で大丈夫かな？　アークさんでも迂闊に手を出せないみたいなのに」
　ダームの不安な疑問を聞いたベネットは、少年に向き直った。

「心配ない。戦闘能力がなくとも、召喚獣は命の危険が迫った際は自動で元の場所に戻される。例え義務感に駆られて残りたいと願おうとも、召喚獣が危険に気付いてすらいなくとも、強制力が働いて脅威からは守られる」
　ベネットは、そこまで話したところでダームの頭を優しく撫でる。

「私たちとは異なる理の中で生きている。説明するのは容易ではないが、フォックとルルに危険が及ぶことは先ずない。聖霊の力に守られた召喚獣は、強大な加護が付いている。そう考えてくれれば良い」
「そっか。危なくないなら安心かな」
　ダームは、フォック達が去った方に目線をやり、細く息を吐き出した。

「さて、こちらはこちらで情報を得ようか。ヘイデルの中を散策するだけでも魔族についての情報が聞こえてくるかも知れない」
　ダームはその提案を受け入れ、二人は街を散策し始めた。