少年の想い
文字数 1,889文字
ルキアが去ってから暫くして、病室にはダーム用の簡易ベッドが運びこまれた。簡易ベッドはアークのベッドと並んで配置され、ダームは簡易ベッドに腰を下ろす。
「あのね、僕達がヘイデルに来た理由は、マルンでは買えない物を買うことでもあったんだ。だけど、買い物をしながら、ヘイデルがどうなっているか調べる為でもあって」
ダームは言い辛そうに目を伏せ、簡易ベッドを軋ませる。
「クルークの洞窟近くに居た魔族は、ヘイデルにまでは来ていないみたいだけど、大きな魔物はやってきていて。アークさんもこんな怪我をしていて。まだ会えていないけど、前にヘイデルに滞在した時に可愛がって貰った警備兵さん達が無事かどうかも気になってる」
そこまで言って顔を上げ、ダームはアークの顔を見た。
「この間ヘイデルに来た時、アークさんと会った後で、クルークの洞窟について調べたんだ。ううん、ベネットさんの力で調べて貰ったって言う方が正しいかな? 探索が得意な召喚獣達が居て、その子達に調べて貰って、それからベネットさんからも説明されて……それで分かったんだけど、クルークの洞窟近くにも魔物が居たんだ。その魔物がヘイデルに来たのか、別の魔物がやってきたのかは、僕には分からない。だけど」
ダームは、大腿の上で両手を握りしめ、大きく息を吸い込んだ。
「僕なら……僕達なら、あの魔物も倒せる。簡単にはいかなくても、今まで何度か倒してきた。魔族は勝てるかどうか分からないし、ベネットさんに頼んで居るかどうかも調べて貰うしか無いけど……だけど、僕だって力になれる。それに、ザウバーの転移魔法があれば、一瞬でヘイデルまで移動出来る。だけど、ベネットさんが言うには、魔族と戦うまでは魔力を温存しておかなきゃならないから、洞窟近くに向かう時に魔法は使わない方が良い。だから、アークさんに馬車を用意して貰えないかなって考えてもいたんだ。馬車で洞窟近くにまで向かえれば、体力も温存出来るし……だけど、それにはアークさんの協力が必要で」
ダームはアークの目を見つめ、口を引き結んだ。その様子を見たアークは暫くの間ダームを見つめ返し、それから口を開く。
「馬車の用意位はいたしますよ。この状況で、ヘイデルの戦力だけで解決出来ると判断したなら、またルキアに怒られるでしょうし」
アークは苦笑し、細く息を吐いた。
「ですが、色々と手続きや準備も必要です。ザウバーはヘイデルに来ていないようですし、そうなると転移魔法の切り札が使えない。何より、ザウバーの魔力は私に比べて膨大ですからね。物理攻撃がさほど通らない魔物に対して、魔力の多い魔法使いの頼もしさは計り知れません」
アークは大怪我を負った腕を見下ろし、目を細める。
「あの片の性格では、集団行動には向かないでしょう。兵に組み込むのは和を乱すことになりかねない。それに、魔物相手すら苦戦する兵であれば、足手纏いにしかならないでしょうね」
アークは天井を仰ぎ、目を瞑る。数秒間そうした後で、アークは目を開き、ダームを見た。
「ですから、私達警備兵はヘイデルに留まります。私はこんな状態ですし、攻撃魔法を使える兵は多くない。それでも、ダームは魔族と戦いたいですか?」
アークの問いに、ダームは頷いた。
「戦いたいって言うよりは、倒さなきゃならないから……かな? ベネットさんが言うには、フェアラに居た魔族が洞窟に居る。あの魔族は強いし、一緒に居た魔族ならザウバーが倒したけど……あの魔族は倒せないまま逃がした。だから、凄く強いのは分かっている。けど、強いのが分かっているからこそ、ヘイデルがフェアラみたいにならない様に戦って勝たなきゃならない。アークさんが僕達を心配してくれるのも分かる。だったら、僕がアークさんやヘイデルを心配する気持ちも分かるよね?」
ダームの問いに、アークは何も言えなくなった。アークは、数分間黙ってからダームを見て答えを返す。
「そうですね、誰かを心配する気持ちは、私が心配している側にもある。単純なことなのに、何故知らないふりをしてきたのでしょうか」
アークは恥ずかしそうに微笑み、指先でシーツを掴んだ。
「詳しい話は、皆が揃ってからやりましょう。そろそろ病院の消灯時間ですし、私は一旦休みます」
アークは布団を引き寄せ、寝る準備をした。ダームは、話したりない様子だったが、病院スタッフが病室の電気を消しに来た為、ベッドに横たわる。
その後、ダームは用意された布団を肩までかけ、アークの方を向きながら眠りに落ちた。一方、アークは直ぐには寝られ無い様子で体の向きを変え、ダームより後で就寝する。
「あのね、僕達がヘイデルに来た理由は、マルンでは買えない物を買うことでもあったんだ。だけど、買い物をしながら、ヘイデルがどうなっているか調べる為でもあって」
ダームは言い辛そうに目を伏せ、簡易ベッドを軋ませる。
「クルークの洞窟近くに居た魔族は、ヘイデルにまでは来ていないみたいだけど、大きな魔物はやってきていて。アークさんもこんな怪我をしていて。まだ会えていないけど、前にヘイデルに滞在した時に可愛がって貰った警備兵さん達が無事かどうかも気になってる」
そこまで言って顔を上げ、ダームはアークの顔を見た。
「この間ヘイデルに来た時、アークさんと会った後で、クルークの洞窟について調べたんだ。ううん、ベネットさんの力で調べて貰ったって言う方が正しいかな? 探索が得意な召喚獣達が居て、その子達に調べて貰って、それからベネットさんからも説明されて……それで分かったんだけど、クルークの洞窟近くにも魔物が居たんだ。その魔物がヘイデルに来たのか、別の魔物がやってきたのかは、僕には分からない。だけど」
ダームは、大腿の上で両手を握りしめ、大きく息を吸い込んだ。
「僕なら……僕達なら、あの魔物も倒せる。簡単にはいかなくても、今まで何度か倒してきた。魔族は勝てるかどうか分からないし、ベネットさんに頼んで居るかどうかも調べて貰うしか無いけど……だけど、僕だって力になれる。それに、ザウバーの転移魔法があれば、一瞬でヘイデルまで移動出来る。だけど、ベネットさんが言うには、魔族と戦うまでは魔力を温存しておかなきゃならないから、洞窟近くに向かう時に魔法は使わない方が良い。だから、アークさんに馬車を用意して貰えないかなって考えてもいたんだ。馬車で洞窟近くにまで向かえれば、体力も温存出来るし……だけど、それにはアークさんの協力が必要で」
ダームはアークの目を見つめ、口を引き結んだ。その様子を見たアークは暫くの間ダームを見つめ返し、それから口を開く。
「馬車の用意位はいたしますよ。この状況で、ヘイデルの戦力だけで解決出来ると判断したなら、またルキアに怒られるでしょうし」
アークは苦笑し、細く息を吐いた。
「ですが、色々と手続きや準備も必要です。ザウバーはヘイデルに来ていないようですし、そうなると転移魔法の切り札が使えない。何より、ザウバーの魔力は私に比べて膨大ですからね。物理攻撃がさほど通らない魔物に対して、魔力の多い魔法使いの頼もしさは計り知れません」
アークは大怪我を負った腕を見下ろし、目を細める。
「あの片の性格では、集団行動には向かないでしょう。兵に組み込むのは和を乱すことになりかねない。それに、魔物相手すら苦戦する兵であれば、足手纏いにしかならないでしょうね」
アークは天井を仰ぎ、目を瞑る。数秒間そうした後で、アークは目を開き、ダームを見た。
「ですから、私達警備兵はヘイデルに留まります。私はこんな状態ですし、攻撃魔法を使える兵は多くない。それでも、ダームは魔族と戦いたいですか?」
アークの問いに、ダームは頷いた。
「戦いたいって言うよりは、倒さなきゃならないから……かな? ベネットさんが言うには、フェアラに居た魔族が洞窟に居る。あの魔族は強いし、一緒に居た魔族ならザウバーが倒したけど……あの魔族は倒せないまま逃がした。だから、凄く強いのは分かっている。けど、強いのが分かっているからこそ、ヘイデルがフェアラみたいにならない様に戦って勝たなきゃならない。アークさんが僕達を心配してくれるのも分かる。だったら、僕がアークさんやヘイデルを心配する気持ちも分かるよね?」
ダームの問いに、アークは何も言えなくなった。アークは、数分間黙ってからダームを見て答えを返す。
「そうですね、誰かを心配する気持ちは、私が心配している側にもある。単純なことなのに、何故知らないふりをしてきたのでしょうか」
アークは恥ずかしそうに微笑み、指先でシーツを掴んだ。
「詳しい話は、皆が揃ってからやりましょう。そろそろ病院の消灯時間ですし、私は一旦休みます」
アークは布団を引き寄せ、寝る準備をした。ダームは、話したりない様子だったが、病院スタッフが病室の電気を消しに来た為、ベッドに横たわる。
その後、ダームは用意された布団を肩までかけ、アークの方を向きながら眠りに落ちた。一方、アークは直ぐには寝られ無い様子で体の向きを変え、ダームより後で就寝する。