不思議な空間
文字数 2,068文字
彼らが落ちていた時間は、十秒以上にも渡った。しかし、地へ足を付けた時に大きな衝撃は無く、ダームは仲間の姿を見ようと辺りを見回す。すると、彼の周りは土壁に囲まれており、その壁は仄かな光を発していた。この為、ザウバーやベネットを見つけることが出来、少年は安心した様子で口を開く。
「良かった。バラバラにはならなかったみたい」
ダームは、手に付いた砂を軽く払った。この時、三人は怪我をしておらず、落下による不調は無い様だった。
「そうだな。昨日、厄介な奴に会ったことだし、戦力が分散してしまうのは危険だ」
ベネットは、服に付いた汚れを何度か払う。
「だよね……僕の剣じゃ何も出来なかったし。一人の時に出会っていたら、勝てる気がしないよ」
そう言って剣を見下ろすと、少年はどこか辛そうに溜め息を吐く。一方、ザウバーは少年の頭を乱暴に撫で、明るい言葉で話し始めた。
「いざとなったら短剣を使ってみろ。今までも、なんだかんだで助けられたんだ」
ザウバーは、そう伝えると顔を見上げた。
「それに、ここに居る分には奴も手出し出来ねえだろ。ま、俺達の脱出も、簡単にはいかねえだろうけど」
ザウバーは目を瞑り、大きな溜め息を吐く。彼の話を聞いたダームは首を傾げ、ベネットは頷いてから話し出した。
「魔族は、聖霊の支配する空間に入れないだろうからな。そして、水聖霊の時と同様に、転移魔法は使えない」
「そう言うこった。それにしても、今回はダーム様々だったな。俺だけじゃ、この場所を見付けられなかった」
突然の賞賛に、ダームは頬を赤らめた。そして、気恥ずかしそうに微笑むと、辺りを見回して発言する。
「とにかく、聖霊が近くに居るなら進もうよ。ここまで来たら、立ち止まる理由も無いし」
ダームの考えを聞いた仲間達は、その提案を受け入れた。彼らの居る場所は二面が壁で、進める道は二つ在る。この為、三人は向かうべき方向を指差すことにした。すると、不思議と意見は一致し、彼らは仄かに明るい道を進んでいく。
三人の進む道は狭くなく、数人横並びでも余裕がある程だった。とは言え、何が起こるか分からない環境の為、武器を持つダームが先頭に立つ。残る二人は少年の後を追い、緊張した面持ちで進んでいった。その内、道は広がっていき、なだらかな下り坂となっていた。明るい照明がないせいか、先の方ははっきりとせず、ダームは立ち止まって仲間の顔を見上げる。
「ここから先、なんか違う感じだけど……進んで平気かな?」
ダームは顔を横に向け、目線を坂の方へ動かす。彼は、そうした後で仲間の顔を見上げ、首を傾げた。すると、彼の仲間は前方を確認し、青年が口を開く。
「ここまで来たら、立ち止まる理由はない。そう言ったのは、お前だろ?」
ダームは頬を赤らめ、進むべき方向を見据えた。その後、少年は足元に気をつけながら進んでいき、彼の仲間は後を追う。彼らが進んでいくうちに、坂は段々ときつくなっていった。この為、三人の歩幅は狭くなっていき、少年は転ばぬよう爪先に力を入れていた。
しかし、ついには急勾配に耐えられず、彼は前のめりの体勢で地に伏した。すると、転んだ時の勢いも加わってか、ダームの体は下方へ滑り始める。少年は、何とかして立ち上がろうと試みるが、上手く力が入らないせいかそれは叶わなかった。ザウバーとベネットは、彼を助け様と走り始める。しかし、急な坂で加速した為、一度上がってしまった速度を落とすことは出来なかった。
そのせいか、ザウバーとベネットも転び、三人は坂を滑り続けた。数分は滑り続けた後、彼らは何か柔らかいものに当たって停止する。この為、ダームはよろめきながら立ち上がり、後頭部をさすりながら後方を見た。すると、滑り落ちていた仲間の姿が在り、それに気付いたダームは目を丸くする。
「滑ったのは、僕だけだと思ってた」
そう言うと、少年は伏したままの仲間を見下ろす。一方、他の二人は気まずそうに立ち上がり、軽く周囲を見回した。しかし、殆ど光源のない場所の状況ははっきりせず、ザウバーは肩を落とした。
「仕方ねえだろ。あんな坂なら、耐えられる方が珍しいっての。それに、お前だけ滑ったらはぐれんだろうが」
そう言い放つと、彼は先程ぶつかった壁を強く叩いた。
「とにかく、ここが普通じゃないのは確かだ。で、これからどうするかだが」
そう言った時、ザウバーの足元は柔らかくなり、自重によって足が地面に飲み込まれ始める。彼は、それから逃れようともがくが、逆に沈む速度を早めてしまった。その状況は二人の仲間も同様で、ダームは剣を支えに堪えようとした。とは言え、それはなんの抵抗にもならず、あっさりと地面に飲み込まれてしまう。
二人の状況を見たベネットもまた、柔らかくなった地面に足を取られていた。彼女は、抵抗が無駄だと判断したのか微動だにせず、ゆっくりと地面に飲み込まれていく。全身が地に埋まった時、彼らの意識はそこで途切れた。しかし、それは息絶えた訳ではなく、奇妙な間を置いてから意識を取り戻す。
「良かった。バラバラにはならなかったみたい」
ダームは、手に付いた砂を軽く払った。この時、三人は怪我をしておらず、落下による不調は無い様だった。
「そうだな。昨日、厄介な奴に会ったことだし、戦力が分散してしまうのは危険だ」
ベネットは、服に付いた汚れを何度か払う。
「だよね……僕の剣じゃ何も出来なかったし。一人の時に出会っていたら、勝てる気がしないよ」
そう言って剣を見下ろすと、少年はどこか辛そうに溜め息を吐く。一方、ザウバーは少年の頭を乱暴に撫で、明るい言葉で話し始めた。
「いざとなったら短剣を使ってみろ。今までも、なんだかんだで助けられたんだ」
ザウバーは、そう伝えると顔を見上げた。
「それに、ここに居る分には奴も手出し出来ねえだろ。ま、俺達の脱出も、簡単にはいかねえだろうけど」
ザウバーは目を瞑り、大きな溜め息を吐く。彼の話を聞いたダームは首を傾げ、ベネットは頷いてから話し出した。
「魔族は、聖霊の支配する空間に入れないだろうからな。そして、水聖霊の時と同様に、転移魔法は使えない」
「そう言うこった。それにしても、今回はダーム様々だったな。俺だけじゃ、この場所を見付けられなかった」
突然の賞賛に、ダームは頬を赤らめた。そして、気恥ずかしそうに微笑むと、辺りを見回して発言する。
「とにかく、聖霊が近くに居るなら進もうよ。ここまで来たら、立ち止まる理由も無いし」
ダームの考えを聞いた仲間達は、その提案を受け入れた。彼らの居る場所は二面が壁で、進める道は二つ在る。この為、三人は向かうべき方向を指差すことにした。すると、不思議と意見は一致し、彼らは仄かに明るい道を進んでいく。
三人の進む道は狭くなく、数人横並びでも余裕がある程だった。とは言え、何が起こるか分からない環境の為、武器を持つダームが先頭に立つ。残る二人は少年の後を追い、緊張した面持ちで進んでいった。その内、道は広がっていき、なだらかな下り坂となっていた。明るい照明がないせいか、先の方ははっきりとせず、ダームは立ち止まって仲間の顔を見上げる。
「ここから先、なんか違う感じだけど……進んで平気かな?」
ダームは顔を横に向け、目線を坂の方へ動かす。彼は、そうした後で仲間の顔を見上げ、首を傾げた。すると、彼の仲間は前方を確認し、青年が口を開く。
「ここまで来たら、立ち止まる理由はない。そう言ったのは、お前だろ?」
ダームは頬を赤らめ、進むべき方向を見据えた。その後、少年は足元に気をつけながら進んでいき、彼の仲間は後を追う。彼らが進んでいくうちに、坂は段々ときつくなっていった。この為、三人の歩幅は狭くなっていき、少年は転ばぬよう爪先に力を入れていた。
しかし、ついには急勾配に耐えられず、彼は前のめりの体勢で地に伏した。すると、転んだ時の勢いも加わってか、ダームの体は下方へ滑り始める。少年は、何とかして立ち上がろうと試みるが、上手く力が入らないせいかそれは叶わなかった。ザウバーとベネットは、彼を助け様と走り始める。しかし、急な坂で加速した為、一度上がってしまった速度を落とすことは出来なかった。
そのせいか、ザウバーとベネットも転び、三人は坂を滑り続けた。数分は滑り続けた後、彼らは何か柔らかいものに当たって停止する。この為、ダームはよろめきながら立ち上がり、後頭部をさすりながら後方を見た。すると、滑り落ちていた仲間の姿が在り、それに気付いたダームは目を丸くする。
「滑ったのは、僕だけだと思ってた」
そう言うと、少年は伏したままの仲間を見下ろす。一方、他の二人は気まずそうに立ち上がり、軽く周囲を見回した。しかし、殆ど光源のない場所の状況ははっきりせず、ザウバーは肩を落とした。
「仕方ねえだろ。あんな坂なら、耐えられる方が珍しいっての。それに、お前だけ滑ったらはぐれんだろうが」
そう言い放つと、彼は先程ぶつかった壁を強く叩いた。
「とにかく、ここが普通じゃないのは確かだ。で、これからどうするかだが」
そう言った時、ザウバーの足元は柔らかくなり、自重によって足が地面に飲み込まれ始める。彼は、それから逃れようともがくが、逆に沈む速度を早めてしまった。その状況は二人の仲間も同様で、ダームは剣を支えに堪えようとした。とは言え、それはなんの抵抗にもならず、あっさりと地面に飲み込まれてしまう。
二人の状況を見たベネットもまた、柔らかくなった地面に足を取られていた。彼女は、抵抗が無駄だと判断したのか微動だにせず、ゆっくりと地面に飲み込まれていく。全身が地に埋まった時、彼らの意識はそこで途切れた。しかし、それは息絶えた訳ではなく、奇妙な間を置いてから意識を取り戻す。