何か言いたげな少年

文字数 799文字

 ルキアが去った病室は、再び静寂に包まれた。ダームは、間が持たないのか、単純に食べたかっただけなのか、残っていた料理を食べている。

 そうしている間に、アークが食べ終えて空になった食器を、病院スタッフが下げに来る。院長から話を聞いているのか、病院スタッフは見舞客の存在に驚くことなく作業を進めた。そして、ベッド用のテーブルを拭いて片付けると、スタッフは病室から静かに去った。

 ダームは、座っていた椅子を動かしてアークの近くに座った。彼は何か言いたげにアークを見るが、話すまではしなかった。

 そうこうしているうちに、借りていた食器を返し終えたルキアが入室する。ルキアは、アークの様子を見てから少年に近付き、笑顔を浮かべる。

「今日は、ここに泊まっちゃおうか? 男同士で話したいこともあるでしょ?」
 ルキアはダームの肩を軽く叩いた。そうしてから、ルキアはアークの目を見て口角を上げる。

「僕はそれで構わないけど、男同士でってことは、ベネットさんは何処に泊まるの?」
 ダームの疑問を聞いたルキアは満面の笑みを浮かべた。そして、ベネットの方に体を向けると、両腕を広げて見せる。

「そりゃ、うちで女子会よ。普段が男しか居ない状態じゃ、色々と話せないこともあるでしょ? ま、単純に私がやりたいだけなんだけどね」
 ルキアは、ダーム達が使っていたテーブルを見下ろした。それから、使い終わった食器を重ね、籐籠に納めていく。

 ルキアは、籐籠をベネットに手渡し、何も置かれなくなったテーブルを病室の隅に移動させる。そうしてから、ルキアはベネットの背中を押した。

「さ、行きましょうか」
 そこまで話したところで、ルキアはベネットの肩に顎を乗せる。そうしてから、ルキアはベネットの耳に口を近付けた。

「あの二人だけにしてあげましょ」
 ルキアは小声で言い、ベネットは小さく頷いた。そして、二人は病室から去り、アークとダームだけが残された。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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