もぐもぐモーニング
文字数 1,232文字
「昨日は、ダーム分の夕食をルキアが用意しましたから、朝食も手配されているとは思ったのですが」
アークは出来たての朝食を見下ろした。それは、当然アークが食べる分しかなく、ダームの朝食は見当たらない。
「少し待ってみるよ。ルキアさんは、僕のことを忘れる様な人じゃない。それに、まだお店が開いていないだけだろうから」
ダームは椅子を用意し、そこに座った。すると、アークが食べ終えるよりも前にルキアが病室にやってくる。
「おはよう、ダーム君。軽めの朝食で悪いけど、持ってきたわよー」
ルキアは、サンドイッチの入った箱をダームに渡した。ダームは礼を言ってから箱を開け、中を確認する。
サンドイッチには様々な具が挟まれ、色も鮮やかだった。また、殻を剥かれた茹で卵が添えられ、食べやすい様にピックが刺してある。
「じゃ、またね。仕事を始めるにはまだちょっと早いし、仕事を始める時には同僚との会議もあるから、アークをいじりにくるのはまた後で」
言うだけ言って、ルキアは退室した。ダームはその後ろ姿を笑顔で見送り、アークは苦笑いしながらルキアを見ていた。
「それじゃ、頂きます」
ダームは、ピックの平たい部分を摘まんでサンドイッチを箱から取り出した。そして、具材を零さぬ様に口に運び、その美味しさを噛み締める。
「美味しい。こういう小さいのが沢山な料理って、普段食べないから余計に美味しい」
ダームは、頬を綻ばせながらサンドイッチを食べ続けた。彼は、時に添えられた茹で卵も食べ、食べ終えたところで満足そうに目を細めた。
「何だろ、怪我をしたアークさんには悪いけど幸せ」
小声で声を漏らし、ダームは朝食の入れられていた箱を閉じる。その頃、アークも朝食を終えており、窓越しに聞こえる音は賑やかになっていた。
「良い街だよね、ヘイデルって」
ダームは言い、アークは頷いた。
「僕が生まれた場所に不満は無い。だけど、ヘイデルには沢山の幸せがある。上手く言い表せないけど……アークさん達が街を守って、それで街の誰もが安心して暮らせる。だからかな? 良い街だなって感じるんだ」
ダームは笑顔を浮かべてアークを見た。対するアークは照れ笑いを浮かべ、口を開く。
「住んでいる街を褒められる。それも、私達警備兵が守っているからとは……何だか、気恥ずかしいですね」
アークは、続ける言葉が浮かばないのか、眼前の食器をいじり始めた。
「アークさんはそう言うけど、僕は魔族に襲われた村や町を見てきたから。魔族に襲われた場所に住む人達は、魔族が近くに居なくても怯えていた。だから、守られている安心感は絶対にある」
ダームの話しに、アークは複雑な表情を浮かべた。ヘイデルを守っている結界はあるが、アークがそれをダームに話すことは出来ない。
「そうですね。守られている安心感はあると思います」
アークは絞り出す様に言い、笑顔を作ってみせた。しかし、このタイミングで病院スタッフが使い終えた食器を回収しに来た為、二人の会話は中断される。
アークは出来たての朝食を見下ろした。それは、当然アークが食べる分しかなく、ダームの朝食は見当たらない。
「少し待ってみるよ。ルキアさんは、僕のことを忘れる様な人じゃない。それに、まだお店が開いていないだけだろうから」
ダームは椅子を用意し、そこに座った。すると、アークが食べ終えるよりも前にルキアが病室にやってくる。
「おはよう、ダーム君。軽めの朝食で悪いけど、持ってきたわよー」
ルキアは、サンドイッチの入った箱をダームに渡した。ダームは礼を言ってから箱を開け、中を確認する。
サンドイッチには様々な具が挟まれ、色も鮮やかだった。また、殻を剥かれた茹で卵が添えられ、食べやすい様にピックが刺してある。
「じゃ、またね。仕事を始めるにはまだちょっと早いし、仕事を始める時には同僚との会議もあるから、アークをいじりにくるのはまた後で」
言うだけ言って、ルキアは退室した。ダームはその後ろ姿を笑顔で見送り、アークは苦笑いしながらルキアを見ていた。
「それじゃ、頂きます」
ダームは、ピックの平たい部分を摘まんでサンドイッチを箱から取り出した。そして、具材を零さぬ様に口に運び、その美味しさを噛み締める。
「美味しい。こういう小さいのが沢山な料理って、普段食べないから余計に美味しい」
ダームは、頬を綻ばせながらサンドイッチを食べ続けた。彼は、時に添えられた茹で卵も食べ、食べ終えたところで満足そうに目を細めた。
「何だろ、怪我をしたアークさんには悪いけど幸せ」
小声で声を漏らし、ダームは朝食の入れられていた箱を閉じる。その頃、アークも朝食を終えており、窓越しに聞こえる音は賑やかになっていた。
「良い街だよね、ヘイデルって」
ダームは言い、アークは頷いた。
「僕が生まれた場所に不満は無い。だけど、ヘイデルには沢山の幸せがある。上手く言い表せないけど……アークさん達が街を守って、それで街の誰もが安心して暮らせる。だからかな? 良い街だなって感じるんだ」
ダームは笑顔を浮かべてアークを見た。対するアークは照れ笑いを浮かべ、口を開く。
「住んでいる街を褒められる。それも、私達警備兵が守っているからとは……何だか、気恥ずかしいですね」
アークは、続ける言葉が浮かばないのか、眼前の食器をいじり始めた。
「アークさんはそう言うけど、僕は魔族に襲われた村や町を見てきたから。魔族に襲われた場所に住む人達は、魔族が近くに居なくても怯えていた。だから、守られている安心感は絶対にある」
ダームの話しに、アークは複雑な表情を浮かべた。ヘイデルを守っている結界はあるが、アークがそれをダームに話すことは出来ない。
「そうですね。守られている安心感はあると思います」
アークは絞り出す様に言い、笑顔を作ってみせた。しかし、このタイミングで病院スタッフが使い終えた食器を回収しに来た為、二人の会話は中断される。