地味な作業

文字数 1,419文字

 朝になって目覚めたザウバーは、着がえることなく朝食を作り始めた。彼は、穀物の中に薬草の切れ端や香草を混ぜて煮込み、塩で幾らかの味付けをする。

 ザウバーは、煮込んだ穀物が柔らかくなった所で味見をし、幾らかの香辛料を加えた。そうして、料理が完成した後で皿に盛り付け、ザウバーは静かな朝食を取り始めた。

 朝食を済ませた後、ザウバーは軒下に干しておいた薬草を取り込んだ。彼は、それを種類毎に別けては砕き、乾いた瓶に分けて入れた。

 一仕事を終えたザウバーは、細かい作業続きで緊張した筋肉を、解す様に伸びをする。そうしてから、彼は余った薬草の切れ端を集めて鍋に入れた。

 ザウバーは、薬草の切れ端を入れた鍋に水を加えて火にかけた。それから、加熱された水が茶色くなるまで、ザウバーは鍋を焼べ続けた。

 薬草の成分が湯に溶け込んだ後で、ザウバーは陶器製のカップに湯を注いだ。薬草の欠片はカップの底に沈んで行き、ザウバーは上澄みだけを器用に飲んだ。

(まあ、こんなもんか)
 ザウバーは、煮出した分を全て飲み、鍋やカップに残った薬草の欠片をゴミ箱に捨てた。そうして、一息ついた後で、ザウバーは回復薬の調合に取りかかる。

 ザウバーは、必要な材料を机上に出すと、息を止めては必要な量を材料毎に量った。そうして、慎重に回復薬の調合はなされ、それが終わった時に太陽は真南から西へと向かっていた。

(そろそろ、二人がヘイデルから帰ってきても良い頃なんだが……待っていても腹が鳴るたけだし、適当に昼飯食うか)
 残されたパンやチーズで腹を満たすと、ザウバーは資料の調査を再開した。しかし、依然として有用な情報は得られず、ザウバーは疲れた様子で目を瞑った。

(手詰まりか? だが、他に方法があるのか? そもそも……いや、他に方法が思い付かない以上、やるしかねえ)
 そうこうしている内に日は傾き、それでも尚ダーム達は帰ってこなかった。この為、ザウバーは落ち着かない様子でダイニングに入った。

(ヘイデルに行ったとして、簡単に会える訳でもねえし行違える可能性もある……一先ず、無くなりせうな食糧を買いに出るか)
 ザウバーは軽く身支度をし、家を出ようとした。すると、家の出入り口のドアには、封筒がさしこまれていた。

 ザウバーは、ドアを開く前に封筒を引っ張って抜き取り、その宛先と差し出し人を確認する。

(何で俺宛に?)
 ザウバーは、封筒を開けると直ぐに内容を確認した。その内容はヘイデルの滞在時間が長引くことについて書いてあり、そのことについては心配は要らないとも記されていた。

 手紙の内容を読み終えたザウバーは、大きく息を吐きながら便箋を封筒に戻した。そうしてから、彼はポケットに封筒をしまい、食糧を買うために外出した。

 当面の食糧を買い込んできたザウバーは、ダイニングテーブルに買い物袋を置いて一息ついた。彼は、湯を沸かして紅茶を淹れると、それで水分を補給しながら食糧を仕分けた。

 その後、息抜きを済ませたザウバーは資料の調査を再開し、適当な所で夕食を食べて部屋で休んだ。その傍らには読み終えた資料が置かれ、テーブルには殴り書きのメモが残されている。

(ヒントは有ったが、まだまだだ。明日早い内にまた資料を入れ替えねえと)
 ザウバーは、未調査の資料を読んでは仕分け、明らかに参考にならないものだけを木の箱に入れた。その他の資料は机の引き出しにしまい、ザウバーは倒れ込む様にベッドに横たわる。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み