仲間の元へ

文字数 1,057文字

 ファンゼにベネット達の現在地を聞いた後、ザウバーは転移魔法を発動した。ベネット達が居たのは遺跡から最も近い集落で、二人は疲れた様子で座り込んでいた。

「悪いな、遅くなって。先ずは休める場所に行こう」 
 それだけ伝えると、ザウバーは仲間の反応も待たずに魔法を使った。そうして仲間と共にマルンに戻ったザウバーは、ベネットとダームに向かって頭を下げる。

「悪かった。全ては俺の認識違いだった」
 その謝罪に、ダームは驚いた様子を見せる。しかし、少年が何かを言うよりも前に、ザウバーは話を続けた。

「話すと長くなる。先ずは休んでくれ」
 ダームとベネットは、戸惑いながらもザウバーの言う通りにした。それから、充分な休息を取った三人は、別れた後に起きたことをそれぞれに話した。その話は直ぐには終わらず、時々休憩を挟みながら続けられた。
 そうして、情報の共有が済んだ後、ザウバーはテーブルに手を着いて頭を下げた。

「こんなことに巻き込んじまってすまねえ。だが、此処まで来て今更引き返せねえ」
 ザウバーの話に、ダームは首を傾げた。
「何でザウバーは謝るの? ずっと、僕の意思でついて来ただけだよ? 巻き込まれただなんて言い方は、おかしい」
 その応えにザウバーは目を丸くした。

「そうだな。それに、放置すれば私達を含め、世界の危機なのだろう? 倒す術がある者が、動かなくてどうする」
 仲間の気持ちを聞いたザウバーは笑い、顔を上げる。
「付き合ってくれて感謝する。だが、今の状態で挑めば同じ結果になりかねねえ」
 ザウバーは姿勢を正し、息を吸い込んだ。
「闇属性の魔法耐性を付ける装備が必要だ。そして、それを得るにはアークの協力が必要になる」
 小さく息を吐くと、ザウバーはベネットの顔を見た。

「確かに、私達にはアーク以外の伝手は無い。だが、直ぐにその装備は手に入るのか?」
 その問に、ザウバーは渋い顔になった。
「掛けだな。アイツは俺の魔力を封じるチョーカーを一日も経たずに作り上げた。だが、それも俺の魔力の波長が分かっていてこその技だ。材料も、三人分ともなれば直ぐには集まるか分からねえ」
 ザウバーは目を伏せ、ダームは心配そうに青年を見た。

「それでも、誰も死なない為には、アイツの協力が必要なんだ」
 彼の話を聞いた仲間は頷き、ベネットは椅子から立ち上がった。
「ならば、急いだ方が良いな。ここまで来た以上、ザウバーは顔を隠してヘイデルに。詳しい説明は、当事者が成した方が語弊もない」
 その後、三人は支度を済ませ、ザウバーの魔法によってヘイデルに転移した。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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