終わりの戦いまでの合間に

文字数 1,012文字

 ザウバーが一冊の資料も読み終わらない内に、三人分の料理は完成した。この為、料理が冷めぬうちに食事を始める為、ダームが彼を部屋まで呼びに来る。

「ザウバー、ご飯が出来たからお昼にしよう」
 少年の話を聞いたザウバーは、読んでいた資料を机に置いた。そして、青年はダームの後を追って、昼食の用意された部屋へ向かう。その後、彼らは昼食を摂りながら、これからのことについて話した。
 しかし、次に向かうべき場所の候補はなく、話し合いが終わらぬ内に昼食は終わった。この為、ザウバーは手掛かりを探す為にも、資料の調査を再開する。
 調査の間、ダームは体力作りに励んでいた。そして、夕食の時間になった時、ダーム達は同じ部屋に集まる。

「手掛かりはねえし、次に向かうべき場所も未定だ。ダーム、この開いた時間を使ってお前が育った集落に行きたいなら、俺が魔法で送るけどどうする?」
 その提案に、少年は驚いた様子を見せた。そして、ダームは暫く考えた後で口を開く。
「確かに、あれからどの位変わったかは見てみたいけど……調べものが終わるまで、ずっと戻ってろってこと?」
 少年の問いに、ザウバーは頷いてみせた。

「手掛かりを見付けたら迎えに行く。だが、それより前に飽きたなら、ヘイデル経由で戻ってくりゃ良い」
 それを聞いたダームは、ベネットの方へ顔を向ける。
「ダームの好きにすれば良い。ザウバーの提案に乗りたいなら乗れば良いし、嫌ならきっぱりと断れ」
 ベネットの考えを聞いた少年は、何処か安心した様子で息を吐いた。

「じゃあ、戻ってみることにする。僕が此処にいても、ザウバーの調べものを手伝えることもないから」
 そう言って笑うと、ダームはザウバーの顔を見た。
「じゃ、明日の朝までに色々と準備しとけ。今の時間から行くより、しっかりと準備を済ませてから行く方が色々と都合も良いだろうしな」
 少年はザウバーの提案を受け入れ、残っていた食事を綺麗に食べた。その後、彼らはそれぞれの時間を過ごし、翌日の朝食を済ませてから、ザウバーはダームが生まれた集落に魔法で転移した。

「じゃあな、ダーム。今のところ手掛かりも見つかってねえから、好きなだけゆっくりしてこい。行く場所の候補が出来ば、暫くは戻れねえだろうしな」
 それだけ言い残すと、ザウバーは魔法を使ってマルンの小屋に戻った。この時、ベネットはアークと話をする為にヘイデルに向かっており、青年は一人で資料の確認作業を行い始めた。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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