過去の一片
文字数 1,776文字
「ところで、これから何処に向かう? 今や、残っているのは闇聖霊だけだ」
少年は目を瞑り、難しい表情を浮かべた。
「力を手に入れるには……けど、凄く危険だって聞いたし」
ダームは目を開き、コップから水を飲む。
「そう言えば、あの魔物はどうなったのかな? アークさんが調べていたみたいだけど」
ベネットは顎に手を当て、少しの間を置いてから話し始めた。
「此処に報告は届いていないが、文献を調べる等しているだろう。出現条件も不明、倒せる者も限られる」
ダームは口先を尖らせ、どこか不満そうに話し出す。
「そっか。そんな直ぐには分からないよね」
顔を伏せ、少年は残念そうに溜め息を吐いた。
「だったら、確かめに行ってくりゃ良いじゃねえか。アークがうるせえから、俺は行かねえけど」
ダームは目を丸くし、無言でザウバーの顔を見つめる。
「正直、兄貴の向った場所がはっきりしてねえからな。その手掛かりを集めて来なきゃならねえ」
彼の仲間は目を細め、ダームは呆れた様子で口を開いた。
「それを知らないで、今まで旅してきたの?」
「仕方ねえだろ。兄貴の意思……最後の感情は届いたけど、場所までは分からなかった。大体、向った場所が分かったって、力が無けりゃ兄貴の二の舞だ。聖霊の力を手に入れてから、調べようと思ってたんだよ」
そう話すと、青年は乱暴に頭を掻いた。そして、彼は大きく息を吸い込み、更なる言葉を紡いでいく。
「兄貴の部屋へ移動するなら、魔法を使えば一瞬だ。直ぐに目ぼしい情報が見つかる訳じゃねえだろうが、そんなに時間は掛からねえだろ」
そう伝えると、青年はベネットの目を真っ直ぐに見る。対するベネットは目を瞑り、細く息を吐いてから話し出した。
「では、その間にアークから話を聞いてくるとしよう。あの魔物の出現条件や弱点が分かっていれば、これからの旅にも役に立つ」
ベネットは、そこまで話したところで少年の方に顔を向け、落ち着いた声で問い掛ける。
「ダームは、どうしたい? 此処に残って待っていても良いし、同行しても良い」
ダームは目を瞑り、考えている風に低い声を漏らす。彼は、暫くそうしてから目を開き、ベネットの顔を見て話し出した。
「アークさんから話を聞くなら、ベネットさん一人でも大丈夫。でも、僕だけ何もしないのは嫌だし、ザウバーについて行っちゃ駄目かな? 探し物なら、手分けした方が早いし」
ベネットは頷き、それから目線を青年に向ける。
「どうする? 移動は魔法を使うと言っていたし、ザウバー次第なのだが」
「構わねえよ。ま、ダームが専門的な文を理解できるかは別だがな」
少年は唇を尖らせ、不満そうに口を開いた。
「そりゃ、僕はそんなに勉強しなかったけど……文章を読むこと位なら出来るよ」
ダームは、不貞腐れた様子で頬を膨らませる。
「普通の文なら、お前でも読めるだろうな。だが、専門書には、魔術を使う者だけが用いる言語や記号もある。それに、魔力が無ければ、文字を見ることすら出来ねえ場合もある」
青年は、そこまで言ったところで息を吐き、ダームの目を真っ直ぐに見た。
「だから、馬鹿にした訳じゃねえよ。ものによっちゃ、アークにだって読めねえ」
ザウバーの説明を聞いた少年は、内容を理解出来なかったのか黙ったままだった。その為、ベネットが代わりに口を開き、自らの考えを話し始める。
「術が他者に使われないよう、記録に特殊な文字を使うと聞いたことがある。手順を踏まねば、記述した者でさえ解読出来ぬとも」
その話を聞いたダームは、内容を理解していないのか、声を出すことは無かった。
「中には、危険な魔法もあるからな。俺が使う魔法だって、使い方を変えれば、惨事を引き起こすこともある。だからこそ、兄貴は昔から簡単に読めない仕掛けをしてたきたんだ」
ザウバーは、そこまで話したところで目を瞑り、ゆっくりとした呼吸を繰り返す。彼は、細く目を開くと天井を見上げ、小さな声で話を続けた。
「だけど、簡単に分かっちまう時もあって。そんな時は、兄貴の悲しそうな感情が伝わってくんだよ」
青年は溜め息を吐き、気怠そうに立ち上がった。
「暗い話しちまって悪かった。シャワー浴びて、頭を冷やしてくるわ」
ザウバーは、そう言うなり浴室へ向かっていく。彼の仲間は顔を見合わせ、少年は不安そうに口を開く。
少年は目を瞑り、難しい表情を浮かべた。
「力を手に入れるには……けど、凄く危険だって聞いたし」
ダームは目を開き、コップから水を飲む。
「そう言えば、あの魔物はどうなったのかな? アークさんが調べていたみたいだけど」
ベネットは顎に手を当て、少しの間を置いてから話し始めた。
「此処に報告は届いていないが、文献を調べる等しているだろう。出現条件も不明、倒せる者も限られる」
ダームは口先を尖らせ、どこか不満そうに話し出す。
「そっか。そんな直ぐには分からないよね」
顔を伏せ、少年は残念そうに溜め息を吐いた。
「だったら、確かめに行ってくりゃ良いじゃねえか。アークがうるせえから、俺は行かねえけど」
ダームは目を丸くし、無言でザウバーの顔を見つめる。
「正直、兄貴の向った場所がはっきりしてねえからな。その手掛かりを集めて来なきゃならねえ」
彼の仲間は目を細め、ダームは呆れた様子で口を開いた。
「それを知らないで、今まで旅してきたの?」
「仕方ねえだろ。兄貴の意思……最後の感情は届いたけど、場所までは分からなかった。大体、向った場所が分かったって、力が無けりゃ兄貴の二の舞だ。聖霊の力を手に入れてから、調べようと思ってたんだよ」
そう話すと、青年は乱暴に頭を掻いた。そして、彼は大きく息を吸い込み、更なる言葉を紡いでいく。
「兄貴の部屋へ移動するなら、魔法を使えば一瞬だ。直ぐに目ぼしい情報が見つかる訳じゃねえだろうが、そんなに時間は掛からねえだろ」
そう伝えると、青年はベネットの目を真っ直ぐに見る。対するベネットは目を瞑り、細く息を吐いてから話し出した。
「では、その間にアークから話を聞いてくるとしよう。あの魔物の出現条件や弱点が分かっていれば、これからの旅にも役に立つ」
ベネットは、そこまで話したところで少年の方に顔を向け、落ち着いた声で問い掛ける。
「ダームは、どうしたい? 此処に残って待っていても良いし、同行しても良い」
ダームは目を瞑り、考えている風に低い声を漏らす。彼は、暫くそうしてから目を開き、ベネットの顔を見て話し出した。
「アークさんから話を聞くなら、ベネットさん一人でも大丈夫。でも、僕だけ何もしないのは嫌だし、ザウバーについて行っちゃ駄目かな? 探し物なら、手分けした方が早いし」
ベネットは頷き、それから目線を青年に向ける。
「どうする? 移動は魔法を使うと言っていたし、ザウバー次第なのだが」
「構わねえよ。ま、ダームが専門的な文を理解できるかは別だがな」
少年は唇を尖らせ、不満そうに口を開いた。
「そりゃ、僕はそんなに勉強しなかったけど……文章を読むこと位なら出来るよ」
ダームは、不貞腐れた様子で頬を膨らませる。
「普通の文なら、お前でも読めるだろうな。だが、専門書には、魔術を使う者だけが用いる言語や記号もある。それに、魔力が無ければ、文字を見ることすら出来ねえ場合もある」
青年は、そこまで言ったところで息を吐き、ダームの目を真っ直ぐに見た。
「だから、馬鹿にした訳じゃねえよ。ものによっちゃ、アークにだって読めねえ」
ザウバーの説明を聞いた少年は、内容を理解出来なかったのか黙ったままだった。その為、ベネットが代わりに口を開き、自らの考えを話し始める。
「術が他者に使われないよう、記録に特殊な文字を使うと聞いたことがある。手順を踏まねば、記述した者でさえ解読出来ぬとも」
その話を聞いたダームは、内容を理解していないのか、声を出すことは無かった。
「中には、危険な魔法もあるからな。俺が使う魔法だって、使い方を変えれば、惨事を引き起こすこともある。だからこそ、兄貴は昔から簡単に読めない仕掛けをしてたきたんだ」
ザウバーは、そこまで話したところで目を瞑り、ゆっくりとした呼吸を繰り返す。彼は、細く目を開くと天井を見上げ、小さな声で話を続けた。
「だけど、簡単に分かっちまう時もあって。そんな時は、兄貴の悲しそうな感情が伝わってくんだよ」
青年は溜め息を吐き、気怠そうに立ち上がった。
「暗い話しちまって悪かった。シャワー浴びて、頭を冷やしてくるわ」
ザウバーは、そう言うなり浴室へ向かっていく。彼の仲間は顔を見合わせ、少年は不安そうに口を開く。