特製回復薬の効果
文字数 2,081文字
「アークさん、大丈夫?」
その問いを聞いたアークは、少年の方に顔を向ける。
「はい、体調は大丈夫ですよ。ただ、体力と言う体力が、傷を治す為に使われていただけの様です」
アークは、大怪我を負った腕を動かしてみせた。その動きは、痛みがあるようには思えず、アークは微苦笑しながら話を続ける。
「包帯を取るまでは、傷がどうなっているかは分かりません。ですが、どうにも回復薬の効きが良かった様で」
そうこうしている内に、病院スタッフがアークの病室にやってくる。病院スタッフは、アークに挨拶をしてからダームの使った簡易ベッドを運び出した。
暫くして、アークに朝食が用意され、アークは食事を始めた。そして、その食事も終わり食器が片付けられた頃、ベネットを連れたルキアが入室する。
「おはようございます。院長自ら回診に参りましたよ」
そう言うなり、ルキアはアークに近付いた。そして、アークが大怪我した腕を掴むと、巻かれていた包帯をゆっくりと外す。
包帯の下には、怪我が分からない程に治癒の進んだ皮膚があった。この為、ルキアは怪我の有った箇所を濡れた布で拭く。
すると、アークの腕はより綺麗になり、ルキアは満足そうな笑みを浮かべた。
「うん、これで日常生活は問題なし。訓練はまだ許可しませんが」
院長は、はっきりとした声で言い放ち、それからダームの方に顔を向けた。
「もう、アークの監視はしなくて大丈夫。アークが退院するのは明日になるけど、それまでに無理をしてしまっても、私は知らぬ存ぜぬ」
そこまで話すと、ルキアはベネットを一瞥した。ベネットは、籐籠を抱えており、そこからはパンの香りが漂ってくる。
「それはそうと、簡単な朝食を作ってきたから食べてね。アークが羨む位に、具材たっぷりのサンドイッチ」
ルキアは、病室に置かれたテーブルを用意し、その天板を軽く叩いた。その後、ベネットは籐籠をテーブルに置き、ルキアは満足そうな表情を浮かべる。
「じゃ、また後で。私は他にも患者を抱えているから、アークのちゃんとした診察はまた後ほど」
言うだけ言って、ルキアは退室した。それから暫く病室は静寂に包まれ、それをダームが壊す。
「用意して貰った朝食、食べちゃうね」
ダームは、テーブルに置かれた籐籠を開けた。すると、その中には零れそうな程に具材の詰まったサンドイッチが入っていた。
それを見たダームは、思わず感嘆の声を漏らす。それから、椅子を用意して座ると、ベネットの顔を見上げた。
「こんな豪華な朝ご飯、僕だけの為に?」
少年の問いにベネットは頷き、ダームの顔を見下ろした。
「勿論。夜間にアークの見張りをしてくれた、その細やかな礼だと言っていた。遠慮することはない」
それを聞いたダームは手を合わせ、目を瞑った。それから、彼は頭を下げ、頬を緩ませる。
「頂きます」
ダームは、具沢山のサンドイッチに齧り付いた。サンドイッチからは具が零れそうになるが、少年は器用に拾いながら食べ進めた。
時折、満足そうに息を吐きつつ、ダームはサンドイッチを一つ一つ腹に収めた。そうして、用意されたサンドイッチを食べ尽くすと、ダームは軽く手を叩き合わせる。
「ご馳走様でした」
豪華な朝食をを終えたダームは、籐籠の中から液体の入った瓶を取り出した。その瓶の中では、鮮やかな花弁が揺蕩っており、ダームは瓶を光に翳す。
「これって、何かな? 朝ご飯と一緒に入っていたけど」
ダームは、花弁の揺蕩う瓶をベネットとアークに見せた。すると、ルキアから話を聞いていたベネットが、瓶の中身の説明を始める。
「花密の甘みを加えた飲み物だそうだ。体に良い薬草は、煎じるとどうしても苦い。だが、この時期に収穫出来る花を漬け込むと、薬草の効果を保ったまま、味を良く出来るそうだ」
ダームは感心した様子で息を吐いた。それから、少年は瓶の蓋を開け、中の飲み物で喉を潤す。
「確かにほんのり甘くて美味しいや」
幸せそうに目を細め、ダームは瓶の蓋を閉めた。それから、少年はベネットの顔を見る。
「もう、僕達はマルンに戻らないとだね。ザウバーが待ち続けているんだし」
それを聞いたベネットは頷き、アークの姿を一瞥した。
「そうだな。アークの怪我も問題ない様だし、マルンに戻ろう。その間に、アークは」
「ええ、馬車の手配をしておきますよ。ヘイデル以外の人間に助けを求めたくない私の矜恃など、街の安全に比べたら軽いものです」
アークは、軽く笑いベッド上から窓の外を見た。
「ヘイデルが、安心出来ない街になるのは避けたい。その気持ちにはなんら嘘はありません」
そう話すと、アール胸元に手を当て、ダームの訪日体を向けた。
「お二人がマルンに戻る頃には、馬車の用意も出来るでしょう。ザウバーの顔を覚えている者が居ると厄介ですから、さり気ない対策もお願いします」
それを聞いたダームは肯き、ベネットと共に病室を出た。その後、ダーム達はヘイデルで食糧を買い込み、ザウバーの居るマルンへ向かった。
その一方、アークは部下に指示を出しながら馬車の手配を済ませ、病室でやれることをこなしていった。
その問いを聞いたアークは、少年の方に顔を向ける。
「はい、体調は大丈夫ですよ。ただ、体力と言う体力が、傷を治す為に使われていただけの様です」
アークは、大怪我を負った腕を動かしてみせた。その動きは、痛みがあるようには思えず、アークは微苦笑しながら話を続ける。
「包帯を取るまでは、傷がどうなっているかは分かりません。ですが、どうにも回復薬の効きが良かった様で」
そうこうしている内に、病院スタッフがアークの病室にやってくる。病院スタッフは、アークに挨拶をしてからダームの使った簡易ベッドを運び出した。
暫くして、アークに朝食が用意され、アークは食事を始めた。そして、その食事も終わり食器が片付けられた頃、ベネットを連れたルキアが入室する。
「おはようございます。院長自ら回診に参りましたよ」
そう言うなり、ルキアはアークに近付いた。そして、アークが大怪我した腕を掴むと、巻かれていた包帯をゆっくりと外す。
包帯の下には、怪我が分からない程に治癒の進んだ皮膚があった。この為、ルキアは怪我の有った箇所を濡れた布で拭く。
すると、アークの腕はより綺麗になり、ルキアは満足そうな笑みを浮かべた。
「うん、これで日常生活は問題なし。訓練はまだ許可しませんが」
院長は、はっきりとした声で言い放ち、それからダームの方に顔を向けた。
「もう、アークの監視はしなくて大丈夫。アークが退院するのは明日になるけど、それまでに無理をしてしまっても、私は知らぬ存ぜぬ」
そこまで話すと、ルキアはベネットを一瞥した。ベネットは、籐籠を抱えており、そこからはパンの香りが漂ってくる。
「それはそうと、簡単な朝食を作ってきたから食べてね。アークが羨む位に、具材たっぷりのサンドイッチ」
ルキアは、病室に置かれたテーブルを用意し、その天板を軽く叩いた。その後、ベネットは籐籠をテーブルに置き、ルキアは満足そうな表情を浮かべる。
「じゃ、また後で。私は他にも患者を抱えているから、アークのちゃんとした診察はまた後ほど」
言うだけ言って、ルキアは退室した。それから暫く病室は静寂に包まれ、それをダームが壊す。
「用意して貰った朝食、食べちゃうね」
ダームは、テーブルに置かれた籐籠を開けた。すると、その中には零れそうな程に具材の詰まったサンドイッチが入っていた。
それを見たダームは、思わず感嘆の声を漏らす。それから、椅子を用意して座ると、ベネットの顔を見上げた。
「こんな豪華な朝ご飯、僕だけの為に?」
少年の問いにベネットは頷き、ダームの顔を見下ろした。
「勿論。夜間にアークの見張りをしてくれた、その細やかな礼だと言っていた。遠慮することはない」
それを聞いたダームは手を合わせ、目を瞑った。それから、彼は頭を下げ、頬を緩ませる。
「頂きます」
ダームは、具沢山のサンドイッチに齧り付いた。サンドイッチからは具が零れそうになるが、少年は器用に拾いながら食べ進めた。
時折、満足そうに息を吐きつつ、ダームはサンドイッチを一つ一つ腹に収めた。そうして、用意されたサンドイッチを食べ尽くすと、ダームは軽く手を叩き合わせる。
「ご馳走様でした」
豪華な朝食をを終えたダームは、籐籠の中から液体の入った瓶を取り出した。その瓶の中では、鮮やかな花弁が揺蕩っており、ダームは瓶を光に翳す。
「これって、何かな? 朝ご飯と一緒に入っていたけど」
ダームは、花弁の揺蕩う瓶をベネットとアークに見せた。すると、ルキアから話を聞いていたベネットが、瓶の中身の説明を始める。
「花密の甘みを加えた飲み物だそうだ。体に良い薬草は、煎じるとどうしても苦い。だが、この時期に収穫出来る花を漬け込むと、薬草の効果を保ったまま、味を良く出来るそうだ」
ダームは感心した様子で息を吐いた。それから、少年は瓶の蓋を開け、中の飲み物で喉を潤す。
「確かにほんのり甘くて美味しいや」
幸せそうに目を細め、ダームは瓶の蓋を閉めた。それから、少年はベネットの顔を見る。
「もう、僕達はマルンに戻らないとだね。ザウバーが待ち続けているんだし」
それを聞いたベネットは頷き、アークの姿を一瞥した。
「そうだな。アークの怪我も問題ない様だし、マルンに戻ろう。その間に、アークは」
「ええ、馬車の手配をしておきますよ。ヘイデル以外の人間に助けを求めたくない私の矜恃など、街の安全に比べたら軽いものです」
アークは、軽く笑いベッド上から窓の外を見た。
「ヘイデルが、安心出来ない街になるのは避けたい。その気持ちにはなんら嘘はありません」
そう話すと、アール胸元に手を当て、ダームの訪日体を向けた。
「お二人がマルンに戻る頃には、馬車の用意も出来るでしょう。ザウバーの顔を覚えている者が居ると厄介ですから、さり気ない対策もお願いします」
それを聞いたダームは肯き、ベネットと共に病室を出た。その後、ダーム達はヘイデルで食糧を買い込み、ザウバーの居るマルンへ向かった。
その一方、アークは部下に指示を出しながら馬車の手配を済ませ、病室でやれることをこなしていった。