No title

文字数 748文字

 遺跡から消えたザウバー達は、暗い部屋の中に転移していた。依然として、ザウバーは立ち上がることをしていない。

「これはね、僕が初めて作った失敗作。ただ

の失敗作なんだよ」
 話し手の目線の先には、骨と皮ばかりになった人間達の姿が在った。その人間達の体は所々欠損し、動くことは無い。だが、それでも生きている。

「魂はまだ中に在る。笑っちゃうよね、僕を……僕達を出来損ない、失敗作だと嘲った奴らが今や失敗作になっている」
 話し手は、ザウバーの顔を覗き込んだ。それから彼はしゃがみ込み、ザウバーの頬を両手で包み込む。

「ほら、見てご覧、ザウバー。見た目が変わってしまってはいるけど、心の醜さが露呈しただけとも言えるね?」
 話し手は、頬を包み込む手を下方に動かした。この為、ザウバーは頷く様な仕草をみせる。

「不老にはなれず、不死だけを得る。どんな苦しみかは分からない。もう、言葉を発することも出来なくなっているからね。おかげで、ここはとても静かだ」
 話し手はザウバーの頬から手を離し、立ち上がった。彼は部屋を見回すと、細く長い息を吐く。

「ねえ、ザウバー? 君は堕ちてきてくれる? それとも、あちら側を選ぶ?」
 感情の感じられない瞳がザウバーを捕らえた。しかし、ザウバーは何の反応も示さない。

「仕方ない。君が選び易くなる様に、昔の話をしようか。君がまだ生まれる前、生まれていても覚えてはいない様な時期の話を」
 そう伝えると、話し手はザウバーを椅子に座らせた。その椅子には、背もたれや肘掛けがあり、ザウバーはそれらに革紐で固定される。
 ザウバーを座らせた者と言えば、その対面に椅子を出現させた。その後、彼は椅子に浅く腰を掛ける。

「さあ、君はどっちを選ぶかな?」
 そう言って冷笑し、話し手は前髪をかき上げる。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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