Summoner? 

文字数 1,279文字

 青年は、様々な方法を試すも、魔族を召喚することは叶わなかった。また、魔物に関しても、大型の個体を簡単に召喚することは出来なかった。
 この為、青年はその原因を探る様に、魔物の召喚を繰り返した。しかし、小型の魔物を召喚することは出来ても、内包する魔力が多い個体ほど、それが困難になることだけが明らかになった。

「だから、この実験を手伝ってくれるなら、その間は生かしてあげる。断るなら、今直ぐにでも……」
 この時、ザウバーの体を淡い色の光が包み込んだ。そして、ザウバーの体は、座っていた椅子の上から消える。
「そっか、君も何もしてこなかった訳じゃ無いんだね」
 青年は目を細めて言い、座る者の消えた椅子を見下ろした。一方、姿を消したザウバーと言えば、氷で囲まれた空間で凍てつく地面に尻をついている。

「頭は冷えたか?」
 とても冷たい声で、水を司る聖霊がザウバーに話し掛ける。聖霊は冷たい眼差しをザウバーへ向け、憐れみの表情を浮かべている。
「無様よの。幼き者相手には格好をつけられても、一人で強者を相手にすればこの程度か」
 聖霊は、ザウバーの全身に冷水を浴びせた。すると、その刺激を受けたザウバーは、自分の置かれた状況を把握しようと試みる。
「与えた力を活用するつもりが無いなら返せ。最も、その場合は貴様の命も消えるがな」
 水聖霊は、冷笑を浮かべながらザウバーに近付いた。この時、ザウバーは立ち上って戦う姿勢を見せる。
「ふむ、闘志が完全に消えてはおらぬ様だ。だが、また不抜けた状態を晒すなら、次は与えた我が力の全てを返して貰う」
 そう言った後、水聖霊はザウバーに掌を向けた。
「とは言え、そのままでは人間の体は保たぬな。生気に満ちた場所で休むついでに、昔話をして貰え」 
 水聖霊の話が終わった時、ザウバーは木々に囲まれた場所に転移させられていた。その場所はとても暖かく、ザウバーの冷えきった体は徐々に温まっていく。

 ザウバーは、転移した先が何処かを探ろうとした。しかし、周囲には木々や草花があるばかりで、場所を示す人工物は何も無い。
「全く、あの方の決定も突然ですね」
 聞こえた声の方へザウバーが顔を向けると、そこには草木聖霊の姿が在った。聖霊は、ザウバーの顔を見ると小さく笑い、それから大きなマグを差し出す。そのマグは薬草を煮込んだ茶で満たされ、上部から白い湯気を揺蕩わせている。

「それを飲みながら話を聞いて下さい。話し終わる頃には、髪や服も乾くでしょう」
 この時、ザウバーの髪は濡れ、頬に貼り付いた状態だった。しかし、緊張が続いていたザウバーは、それに言及されて自らの状態に気付く。
「私は、魔王が地上を支配していた時代を知っています。あの頃は、こちらの世界と魔界、その境界が曖昧な時でした。だから、易々と魔王を含む魔族はこちら側に来た。そして、魔物を呼び込むことも容易だった」
 ファンゼは、ゆっくりとした話し方で言葉を紡いだ。一方、ザウバーは少しでも温まろうと、渡されたマグを両手で包む。そのマグに注がれた液体は、不思議と冷めること無く、ザウバーの体温を少しずつ上げた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み