力技の解呪
文字数 1,753文字
「では、これから呪詛の核を取り出す。私の力では、あくまでも核を取り出すまでしか出来ない。だから、その後はダームに全てを託す」
その指示にダームは肯き、ベネットはザウバーの首へ向けて腕を伸ばした。ベネットは、ザウバーの皮膚が黒く変色した部分に掌をかざし、目を瞑る。
「光の聖霊の加護を得し者によりて命ずる。悪意よ、悪しき呪いの核よ、この者を解放せよ」
この時、ベネットの掌からは白い光が生じ、それはザウバーの首を照らした。その光は、ザウバーの皮膚が変色した箇所を焼いてゆき、焼かれた部分は苦しそうに蠢いた。
また、それに連動するかの様にザウバーの表情は厳しくなり、低い声が青年の喉から漏れた。ザウバーは、苦しそうに上体を動かそうとするが、縛られている為に可動域は限られていた。
「呪いよ、悪意よ、直ぐさま離れろ。この者を苦しめても何も得るものなど無き」
呪いの核は蠢くも、ザウバーから離れようとはしなかった。しかし、ベネットから放たれる光は強くなってゆき、それと比例する様にザウバーの額からは汗が噴き出した。
それから暫くして、疲れてしまったのかザウバーは頭を垂れた。それを見たベネットは苦い表情を浮かべる。
「火の聖霊と風の聖霊の加護を受けし者によって命ずる。呪詛の核を焔の渦にてえぐり出せ!」
すると、ベネットの手から渦を巻いた炎が現れた。その炎は、ザウバーの首へ真っ直ぐに向かって行き、椅子毎ザウバーを倒しながら呪詛の核を取り出した。
ザウバーの首から力技で切り離された呪詛は、術の勢いでザウバーから完全に離れていた。この為、ダームはザウバーから離れた呪詛に向かって剣を振り下ろす。
ダームが剣を振るうと、呪詛は黒い靄となって刃に纏わり付いた。それを見たダームは驚いた様子で目を見開くが、柄をしっかりと握り離すことはなかった。
幾ばくかの時が流れ、ダームの剣に纏わり付いた靄は減り始めた。そして、纏わり付いた靄が完全に無くなった時、剣全体が淡く光る。
剣が光った後、ダームは顔だけを動かしてベネットの顔を見た。すると、その気配に気付いたのか、ベネットがダームの方に顔を向ける。
ベネットは、ダームが持つ剣をじっくりと見た。そして、その状態をしっかりと確認してから、ダームの目を見る。
「上手くいった様だ。ダームのおかげで助かった、ありがとう」
ダームは微笑み、出現させていた剣を異空間にしまった。そして、倒れたままのザウバーを椅子毎起こし、ザウバーの上体を縛っていた縄を解いた。
上体を解放されたザウバーは、支えが無くなったせいか前方に倒れ始めた。ダームは、慌ててザウバーの肩を掴もうとしたが、間に合わなかった。
幸か不幸か、椅子に座った状態だったので、ザウバーが怪我を負うことはなかった。それでも、ザウバーからは低い声が漏れる。
「大丈夫?」
ダームは、優しくザウバーの上体を起こした。少年は、そうしてからザウバーの顔を覗き込む。
ザウバーの顔は汗で濡れ、頬や額には髪が張り付いていた。また、その顔色は悪く、ダームは慌てた様子でベネットの方に顔を向ける。
「どうしよう、失敗したのかも」
不安そうなダームの声を聞いたベネットは、ザウバーの首を指し示した。彼女が指差す先には、変色も引き攣れもないザウバーの首がある。
「大丈夫だ。呪詛自体は解除出来た」
ダームは、ベネットの指差す先を見、安心した様子で息を吐いた。それから、ダームは疲れた様子で椅子に座り、テーブルの上に伏せて腕を伸ばした。
「ただ、専門的なやり方は出来なかった。強引に呪詛の核を引き出した為に、ザウバーにまでダメージがいってしまった」
ベネットは、説明を終えてから回復呪文を唱えた。すると、ザウバーの体全体が光に包まれ、それをダームがぼんやりと眺めた。
「後は、自然に魔力が回復するのを待つしかない。怪我であれば私の魔法で治せるが、魔力減少までは面倒を見きれん」
ベネットは、そこまで言ったところで椅子に座った。彼女は、ザウバーの姿を横目で見、それからダームの頭を優しく撫でた。
「ザウバーが回復するまで私達も休もう。ダームも、慣れないやり方で疲れただろう?」
その問いにダームはテーブルに伏したまま頷いた。そして、ダーム達はそれぞれに休息を取り始めた。
その指示にダームは肯き、ベネットはザウバーの首へ向けて腕を伸ばした。ベネットは、ザウバーの皮膚が黒く変色した部分に掌をかざし、目を瞑る。
「光の聖霊の加護を得し者によりて命ずる。悪意よ、悪しき呪いの核よ、この者を解放せよ」
この時、ベネットの掌からは白い光が生じ、それはザウバーの首を照らした。その光は、ザウバーの皮膚が変色した箇所を焼いてゆき、焼かれた部分は苦しそうに蠢いた。
また、それに連動するかの様にザウバーの表情は厳しくなり、低い声が青年の喉から漏れた。ザウバーは、苦しそうに上体を動かそうとするが、縛られている為に可動域は限られていた。
「呪いよ、悪意よ、直ぐさま離れろ。この者を苦しめても何も得るものなど無き」
呪いの核は蠢くも、ザウバーから離れようとはしなかった。しかし、ベネットから放たれる光は強くなってゆき、それと比例する様にザウバーの額からは汗が噴き出した。
それから暫くして、疲れてしまったのかザウバーは頭を垂れた。それを見たベネットは苦い表情を浮かべる。
「火の聖霊と風の聖霊の加護を受けし者によって命ずる。呪詛の核を焔の渦にてえぐり出せ!」
すると、ベネットの手から渦を巻いた炎が現れた。その炎は、ザウバーの首へ真っ直ぐに向かって行き、椅子毎ザウバーを倒しながら呪詛の核を取り出した。
ザウバーの首から力技で切り離された呪詛は、術の勢いでザウバーから完全に離れていた。この為、ダームはザウバーから離れた呪詛に向かって剣を振り下ろす。
ダームが剣を振るうと、呪詛は黒い靄となって刃に纏わり付いた。それを見たダームは驚いた様子で目を見開くが、柄をしっかりと握り離すことはなかった。
幾ばくかの時が流れ、ダームの剣に纏わり付いた靄は減り始めた。そして、纏わり付いた靄が完全に無くなった時、剣全体が淡く光る。
剣が光った後、ダームは顔だけを動かしてベネットの顔を見た。すると、その気配に気付いたのか、ベネットがダームの方に顔を向ける。
ベネットは、ダームが持つ剣をじっくりと見た。そして、その状態をしっかりと確認してから、ダームの目を見る。
「上手くいった様だ。ダームのおかげで助かった、ありがとう」
ダームは微笑み、出現させていた剣を異空間にしまった。そして、倒れたままのザウバーを椅子毎起こし、ザウバーの上体を縛っていた縄を解いた。
上体を解放されたザウバーは、支えが無くなったせいか前方に倒れ始めた。ダームは、慌ててザウバーの肩を掴もうとしたが、間に合わなかった。
幸か不幸か、椅子に座った状態だったので、ザウバーが怪我を負うことはなかった。それでも、ザウバーからは低い声が漏れる。
「大丈夫?」
ダームは、優しくザウバーの上体を起こした。少年は、そうしてからザウバーの顔を覗き込む。
ザウバーの顔は汗で濡れ、頬や額には髪が張り付いていた。また、その顔色は悪く、ダームは慌てた様子でベネットの方に顔を向ける。
「どうしよう、失敗したのかも」
不安そうなダームの声を聞いたベネットは、ザウバーの首を指し示した。彼女が指差す先には、変色も引き攣れもないザウバーの首がある。
「大丈夫だ。呪詛自体は解除出来た」
ダームは、ベネットの指差す先を見、安心した様子で息を吐いた。それから、ダームは疲れた様子で椅子に座り、テーブルの上に伏せて腕を伸ばした。
「ただ、専門的なやり方は出来なかった。強引に呪詛の核を引き出した為に、ザウバーにまでダメージがいってしまった」
ベネットは、説明を終えてから回復呪文を唱えた。すると、ザウバーの体全体が光に包まれ、それをダームがぼんやりと眺めた。
「後は、自然に魔力が回復するのを待つしかない。怪我であれば私の魔法で治せるが、魔力減少までは面倒を見きれん」
ベネットは、そこまで言ったところで椅子に座った。彼女は、ザウバーの姿を横目で見、それからダームの頭を優しく撫でた。
「ザウバーが回復するまで私達も休もう。ダームも、慣れないやり方で疲れただろう?」
その問いにダームはテーブルに伏したまま頷いた。そして、ダーム達はそれぞれに休息を取り始めた。