新たな剣の使い方

文字数 1,195文字

 全員食事を終え、片付けも済ませた時、三人は離れて行動していた間の出来事を互いに伝えていく。
 とは言え、共にめぼしい情報は見つかっていなかった。代わりに、少年の新たに入手した武器が話題となり、ダームは青年へ見せ付ける様に剣を異空間から取り出した。

「凄いでしょ? すごく手に馴染んでいるんだ」
 ダームは剣を振り、それを見た青年は苦笑する。

「凄いのは分かった。だからって、室内で振り回すな。危ねえから」
 ザウバーの忠告も虚しく、少年が振った剣はテーブルの端を掠めた。その切れ味はすこぶる良く、テーブルには鋭い切れ目が刻まれる。

「ごめんなさい」
 少年はベネットに向かって頭を下げ、青年は呆れた様子で溜め息を吐いた。一方、ベネットは軽く笑い、テーブルの傷を見てから口を開く。

「その位の傷はなんともない。だが、ザウバーの言う通り、剣はむやみやたらと振り回すべきではないな」
 少年は、再度謝ってから剣を仕舞い、大人しく椅子に腰を下ろした。

「それで」
 再び会話が始まった時、小屋の外から叫び声が響いた。叫び声は徐々に増えていき、三人は何が起きたのかを確認する為に外に出る。

 三人は、叫び声のする方へ向かって行き、その先に黒い毛を生やした魔物を見る。その魔物は、以前ザウバーが倒したものに似ており、大木の幹程もある腕を大きく振り回していた。

 しかし、魔物の全身はまだ現れておらず、そのお陰で人々は魔物から逃げることが出来ていた。とは言え、それが何時まで続くかは分からず、ザウバーは杖を握り締めて呪文を唱え始めた。

 魔法によって生じた蔓は魔物の腕を拘束し、その締め付けによって体幹から引き千切る。しかし、それでは魔物を倒せず、青年は悔しそうに舌打ちをした。

 この時、ダームが魔物に向かって走り出し、新たに手に入れた剣を魔物に向けた。すると、その剣は魔物を切り裂き、魔物は空間の裂け目と共に消え去った。
 魔法の残骸を横目に、少年は使ったばかりの剣を見つめた。その刃は、確かに魔物を切り裂いた。だが、刃の何処にも魔物の血や肉片は付着していなかった。

「これも、アークに知らせた方が良いのか?」
 ザウバーは、そう言うと魔物の残骸を見下ろした。一方、ベネットは少年の様子を見、残骸へ目線を移す。

「そうだな。まだ、次に向かうべき場所も決まっていない。私が報告してこよう。その間、資料調査を任せる」
 それを聞いたザウバーは提案を受け入れ、少年を見た。

「で、ダームはどうする?」
 ダームは剣を異空間に仕舞い、仲間の方に体を向ける。

「ベネットさんと一緒に行くよ。僕は難しい資料を読んでも理解出来ないし、アークさんと話したいこともあるから」
 それを聞いたザウバーは小屋へ向かい、ベネットとダームも身支度をする為に小屋へ向かった。その後、ザウバーは小屋へ戻るなり持ち帰った資料を読み始め、ダーム達は荷物を纏めてヘイデルへ向かった。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

絶賛成長期。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
ブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。



OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

魔物が増えて管理職が故の悩みが増えた。

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