光の道しるべ
文字数 3,368文字
「なる程。今度は知能試験……ってとこか」
ザウバーは、宙に浮かぶ物体に手を触れさせる。すると、その物体は横に回転し、ザウバーは少し動かしたところで手を離した。
この時、透明の物体に当たっていた光は進路を変え、その上方から直角に曲がる光芒が見て取れた。進路を変えた光は宙に浮かぶ物体を通って更に伸び、それを確認したザウバーは口角を上げる。その後、彼は新たに出来た光の道を見やり、満足そうな表情を浮かべた。
「これで分かったか?」
ダームは、青年の自慢気な台詞に首を振り、困った様子で口を開く。
「それだけじゃ分からないよ。ザウバーが、ちょっと動かしてみただけだし」
少年の返答を聞いたザウバーは溜め息を吐き、新たに出来た光芒を指し示した。
「さっきと変わったところ位、分かるだろうが。俺が動かしてみただけ? その前と後で変わったところが有るだろ」
ザウバーは、そこまで話すと目を瞑り、気怠そうに欠伸をした。そんな彼の態度を見たダームと言えば、不機嫌そうに口を尖らせる。しかし、反発することは時間の無駄と思ったのか、少年は無言で新たに出来た光芒を見つめた。
ダームは、暫く光芒を見た後で透明の物体に目線を移す。その後、彼は光が発せられている場所を眺め、難しい表情を浮かべて腕を組んだ。少年は、腕を組んだまま低い声を漏らし、ザウバーが何を伝えたいのか模索する。
その間、ザウバーはゆっくりと周囲を眺め、今の状況を確認していた。考え始めてから十数分後、ダームは何かに気付いたのか、宙に浮かぶ物体を見つめた。少年は、暫くそれを見つめた後で、目を輝かせながらザウバーの顔を見上げる。
「分かった! 新しい光の道をどんどん作って、それで何か起こるかも……ってことでしょ?」
ダームは、新しく出来た光芒に沿って歩き始めた。それを見たザウバーは苦笑し、無言で少年の後を追って行く。白い光芒の伸びる先には、又しても透明の物体が宙に浮いており、それは先程と異なる形をしていた。浮遊する物体は、縦に長い半円柱で、弧の分に光が当たっている。また、当たった光はそこで途切れ、それを見たダームは、半円柱の向きを変えようと手を伸ばした。
「待て、ダーム。お前、ちゃんと理解してるか?」
しかし、行動へ移す前にザウバーが話し出し、ダームは何も動かさないまま仲間の方に向き直る。
「理解? さっきザウバーがやったみたいに、あれを動かしていけばいいんじゃ無いの?」
返答を聞いたザウバーは肩を落とし、頭を抱えながら口を開いた。
「あのな……たとえ光の道が出来たとしても、行き着く先に何も無きゃ意味がねえ。それに、動かす角度が違えば、それすら出来ねえ」
ザウバーは、そこまで話すと大きな溜め息を吐く。
「そんなの、やってみなくちゃ分かんないじゃん」
そう言い放つと、ダームは浮遊する物体へ手を伸ばした。彼は、自分の体で光を遮らない様にしながら、円柱の角度を変えていく。しかし、彼がいくら角度を調節しても、そこに新たな光芒は現れなかった。この為、ダームの顔に焦りが浮かび、ついには動かす手も止まってしまう。
「言わんこっちゃない」
ザウバーは、呆れた様子で長く息を吐き出した。一方、彼の台詞を聞いたダームは、悔しそうに拳を強く握る。
「悔しいけど、ザウバーの方が合ってた。僕は、どうやればいいのか分かって無かった」
ダームは、そう話すと青年の目を見つめて苦笑する。対するザウバーは目を細め、微笑みながら少年の肩に手を乗せた。
「ま、全部が間違っちゃいないがな。とにかく、先ずはこのフロアの状況を確認してこい。視界が良くねえし、近くに行かなきゃ分からないことも有るだろ」
その助言にダームは頷き、壁へ沿う様にして歩き始めた。それを見たザウバーは少年の後を静かに歩き、二人は霧の中をゆっくり進んで行く。
彼らは、壁に沿って歩いた後、螺旋を描く様に進んでいった。二人は、中心へ進むうちに十個以上の物体を見つけ、それらは全て宙に浮いていた。また、それらは角柱や円柱の形をしており、そのどれもが透明だった。ダームが中心辺りに来た時、そこに細長い台座が在った。その台座は銀製で、上部に円形の窪みがある。しかし、そこには何も乗せられておらず、ダームは不思議そうに台座を眺めた。
「なんにも無い……もしかして、もう終わっちゃった?」
ダームは、そう言うと首を傾げ、青年の顔を見上げる。対するザウバーは、何も乗せられていない台座を見つめた。
「それはねえだろ。第一、出口が無くなっていた」
彼の台詞を聞いたダームは目を丸くし、慌てた様子で口を開く。
「嘘……だとしたら、僕達は閉じ込められちゃったってこと?」
ザウバーは、少年の言葉に目を細め、溜め息を吐く。
「嘘だと思うなら、確認してこい」
そこまで伝えると、ザウバーは片目を瞑り、息を吐き出した。
「それに、閉じ込められたのは、今に始まったことじゃねえ」
青年の話にダームは言葉を失い、目を伏せる。そして、彼は強く目を瞑って唇を噛むと、出口が在るだろう場所に向かって走り出した。しかし、その場所に出口は無く、少年は壁沿いに歩きながら出口を探し始めた。その後、ダームは壁が光っている場所を二度通り過ぎ、疲れた様子で溜め息を吐いた。
「本当に無い」
そう呟くと、ダームは光っている壁を一瞥する。そして、彼はそこから伸びる光芒を目で追い、宙に浮かぶものをじっと見つめた。浮遊体からは、壁から伸びる光が直角に曲げられて進み、それは光を発している壁に平行して伸びている。ダームは、それを確認した後で眉根を寄せ、低い声を漏らした。
その後、少年はザウバーの居る方へ向かい、銀色の台座を真っ直ぐに見つめる。彼は暫くそうした後で周囲を見回し、今の状況を確認した。
「一番近いのはあれで、光はあっちで」
少年は、言いながら目線を動かし、浮遊体の場所を確認していった。そして、彼は一番近くにある浮遊体へ向かい、その周囲の状況を確認する。
少年は、その作業を幾度となく繰り返し、小走りで光る壁の方へ向かっていった。その後、ダームは浮遊体を動かして光の道を作っていき、光芒は台座の近くにまで伸びた。幾つもの浮遊体を動かしてきたダームは台座を見つめ、静かに深呼吸を繰り返す。そして、少年は台座の一番近くにある浮遊体へ光を伸ばすと、それを慎重に動かしていった。
それによって光の道は台座まで伸び、ダームは浮遊体から手を離して胸を撫で下ろす。この時、光の当たった台座の上には、白色をした宝玉が現れていた。それを見たダームは嬉しそうに台座へ近付き、ザウバーは安心した様子で息を吐き出す。
台座の前に来たダームが珠へ手を伸ばすと、それは他の宝玉と同様に少年の胸元へ吸い込まれた。すると、緊張が解けたせいか、少年はその場で膝をついてしまう。
「力が抜けちゃった」
ダームは、そう言うと恥ずかしそうに頬を赤くする。その様子を見たザウバーは、少年と目線を合わせる為に膝を曲げた。
「大丈夫か? さっきはかなり体力を消費したんだろうし、少し休め」
ザウバーは、そう話すと笑顔を浮かべ、少年の頭を軽く叩いた。
「こんな時、回復術が使えれば、なんとかしてやれるんだが……回復薬は置いてきちまったし」
そこまで話すと、ザウバーは気まずそうに苦笑する。
「心配しなくても大丈夫。疲れたって言うより、やり終えて気が抜けただけなんだ」
ダームは、そう返すと目を細めて息を吸い込んだ。その後、彼は何回かゆっくりとした呼吸を繰り返し、小さく頷いて立ち上がる。
「うん。気持ちも落ち着いたし、もう大丈夫。フレンもベネットさんも待ってるんだから、頑張らないと」
少年は、そう言うと腰に手を当て、歯を見せて笑った。一方、笑顔を見たザウバーは頷き、少年の背中を数回叩く。
「じゃ、早速行きますか。やることをやらなきゃ、飯も食えねえだろうし」
それだけ言うと、ザウバーは壁の在る方へ向かって歩き始めた。ダームは直ぐに彼の後を追い、二人は壁沿いに進みながら出口を探す。すると、角を曲がること無く出口は見つかり、二人は安心した様子で岩で囲まれた通路に進んだ。それから、彼らは真っ直ぐな道を進んで行き、左右に別れた道に行き当たる。
ザウバーは、宙に浮かぶ物体に手を触れさせる。すると、その物体は横に回転し、ザウバーは少し動かしたところで手を離した。
この時、透明の物体に当たっていた光は進路を変え、その上方から直角に曲がる光芒が見て取れた。進路を変えた光は宙に浮かぶ物体を通って更に伸び、それを確認したザウバーは口角を上げる。その後、彼は新たに出来た光の道を見やり、満足そうな表情を浮かべた。
「これで分かったか?」
ダームは、青年の自慢気な台詞に首を振り、困った様子で口を開く。
「それだけじゃ分からないよ。ザウバーが、ちょっと動かしてみただけだし」
少年の返答を聞いたザウバーは溜め息を吐き、新たに出来た光芒を指し示した。
「さっきと変わったところ位、分かるだろうが。俺が動かしてみただけ? その前と後で変わったところが有るだろ」
ザウバーは、そこまで話すと目を瞑り、気怠そうに欠伸をした。そんな彼の態度を見たダームと言えば、不機嫌そうに口を尖らせる。しかし、反発することは時間の無駄と思ったのか、少年は無言で新たに出来た光芒を見つめた。
ダームは、暫く光芒を見た後で透明の物体に目線を移す。その後、彼は光が発せられている場所を眺め、難しい表情を浮かべて腕を組んだ。少年は、腕を組んだまま低い声を漏らし、ザウバーが何を伝えたいのか模索する。
その間、ザウバーはゆっくりと周囲を眺め、今の状況を確認していた。考え始めてから十数分後、ダームは何かに気付いたのか、宙に浮かぶ物体を見つめた。少年は、暫くそれを見つめた後で、目を輝かせながらザウバーの顔を見上げる。
「分かった! 新しい光の道をどんどん作って、それで何か起こるかも……ってことでしょ?」
ダームは、新しく出来た光芒に沿って歩き始めた。それを見たザウバーは苦笑し、無言で少年の後を追って行く。白い光芒の伸びる先には、又しても透明の物体が宙に浮いており、それは先程と異なる形をしていた。浮遊する物体は、縦に長い半円柱で、弧の分に光が当たっている。また、当たった光はそこで途切れ、それを見たダームは、半円柱の向きを変えようと手を伸ばした。
「待て、ダーム。お前、ちゃんと理解してるか?」
しかし、行動へ移す前にザウバーが話し出し、ダームは何も動かさないまま仲間の方に向き直る。
「理解? さっきザウバーがやったみたいに、あれを動かしていけばいいんじゃ無いの?」
返答を聞いたザウバーは肩を落とし、頭を抱えながら口を開いた。
「あのな……たとえ光の道が出来たとしても、行き着く先に何も無きゃ意味がねえ。それに、動かす角度が違えば、それすら出来ねえ」
ザウバーは、そこまで話すと大きな溜め息を吐く。
「そんなの、やってみなくちゃ分かんないじゃん」
そう言い放つと、ダームは浮遊する物体へ手を伸ばした。彼は、自分の体で光を遮らない様にしながら、円柱の角度を変えていく。しかし、彼がいくら角度を調節しても、そこに新たな光芒は現れなかった。この為、ダームの顔に焦りが浮かび、ついには動かす手も止まってしまう。
「言わんこっちゃない」
ザウバーは、呆れた様子で長く息を吐き出した。一方、彼の台詞を聞いたダームは、悔しそうに拳を強く握る。
「悔しいけど、ザウバーの方が合ってた。僕は、どうやればいいのか分かって無かった」
ダームは、そう話すと青年の目を見つめて苦笑する。対するザウバーは目を細め、微笑みながら少年の肩に手を乗せた。
「ま、全部が間違っちゃいないがな。とにかく、先ずはこのフロアの状況を確認してこい。視界が良くねえし、近くに行かなきゃ分からないことも有るだろ」
その助言にダームは頷き、壁へ沿う様にして歩き始めた。それを見たザウバーは少年の後を静かに歩き、二人は霧の中をゆっくり進んで行く。
彼らは、壁に沿って歩いた後、螺旋を描く様に進んでいった。二人は、中心へ進むうちに十個以上の物体を見つけ、それらは全て宙に浮いていた。また、それらは角柱や円柱の形をしており、そのどれもが透明だった。ダームが中心辺りに来た時、そこに細長い台座が在った。その台座は銀製で、上部に円形の窪みがある。しかし、そこには何も乗せられておらず、ダームは不思議そうに台座を眺めた。
「なんにも無い……もしかして、もう終わっちゃった?」
ダームは、そう言うと首を傾げ、青年の顔を見上げる。対するザウバーは、何も乗せられていない台座を見つめた。
「それはねえだろ。第一、出口が無くなっていた」
彼の台詞を聞いたダームは目を丸くし、慌てた様子で口を開く。
「嘘……だとしたら、僕達は閉じ込められちゃったってこと?」
ザウバーは、少年の言葉に目を細め、溜め息を吐く。
「嘘だと思うなら、確認してこい」
そこまで伝えると、ザウバーは片目を瞑り、息を吐き出した。
「それに、閉じ込められたのは、今に始まったことじゃねえ」
青年の話にダームは言葉を失い、目を伏せる。そして、彼は強く目を瞑って唇を噛むと、出口が在るだろう場所に向かって走り出した。しかし、その場所に出口は無く、少年は壁沿いに歩きながら出口を探し始めた。その後、ダームは壁が光っている場所を二度通り過ぎ、疲れた様子で溜め息を吐いた。
「本当に無い」
そう呟くと、ダームは光っている壁を一瞥する。そして、彼はそこから伸びる光芒を目で追い、宙に浮かぶものをじっと見つめた。浮遊体からは、壁から伸びる光が直角に曲げられて進み、それは光を発している壁に平行して伸びている。ダームは、それを確認した後で眉根を寄せ、低い声を漏らした。
その後、少年はザウバーの居る方へ向かい、銀色の台座を真っ直ぐに見つめる。彼は暫くそうした後で周囲を見回し、今の状況を確認した。
「一番近いのはあれで、光はあっちで」
少年は、言いながら目線を動かし、浮遊体の場所を確認していった。そして、彼は一番近くにある浮遊体へ向かい、その周囲の状況を確認する。
少年は、その作業を幾度となく繰り返し、小走りで光る壁の方へ向かっていった。その後、ダームは浮遊体を動かして光の道を作っていき、光芒は台座の近くにまで伸びた。幾つもの浮遊体を動かしてきたダームは台座を見つめ、静かに深呼吸を繰り返す。そして、少年は台座の一番近くにある浮遊体へ光を伸ばすと、それを慎重に動かしていった。
それによって光の道は台座まで伸び、ダームは浮遊体から手を離して胸を撫で下ろす。この時、光の当たった台座の上には、白色をした宝玉が現れていた。それを見たダームは嬉しそうに台座へ近付き、ザウバーは安心した様子で息を吐き出す。
台座の前に来たダームが珠へ手を伸ばすと、それは他の宝玉と同様に少年の胸元へ吸い込まれた。すると、緊張が解けたせいか、少年はその場で膝をついてしまう。
「力が抜けちゃった」
ダームは、そう言うと恥ずかしそうに頬を赤くする。その様子を見たザウバーは、少年と目線を合わせる為に膝を曲げた。
「大丈夫か? さっきはかなり体力を消費したんだろうし、少し休め」
ザウバーは、そう話すと笑顔を浮かべ、少年の頭を軽く叩いた。
「こんな時、回復術が使えれば、なんとかしてやれるんだが……回復薬は置いてきちまったし」
そこまで話すと、ザウバーは気まずそうに苦笑する。
「心配しなくても大丈夫。疲れたって言うより、やり終えて気が抜けただけなんだ」
ダームは、そう返すと目を細めて息を吸い込んだ。その後、彼は何回かゆっくりとした呼吸を繰り返し、小さく頷いて立ち上がる。
「うん。気持ちも落ち着いたし、もう大丈夫。フレンもベネットさんも待ってるんだから、頑張らないと」
少年は、そう言うと腰に手を当て、歯を見せて笑った。一方、笑顔を見たザウバーは頷き、少年の背中を数回叩く。
「じゃ、早速行きますか。やることをやらなきゃ、飯も食えねえだろうし」
それだけ言うと、ザウバーは壁の在る方へ向かって歩き始めた。ダームは直ぐに彼の後を追い、二人は壁沿いに進みながら出口を探す。すると、角を曲がること無く出口は見つかり、二人は安心した様子で岩で囲まれた通路に進んだ。それから、彼らは真っ直ぐな道を進んで行き、左右に別れた道に行き当たる。