ついでの満腹タイム
文字数 1,494文字
馬車から消えたザウバーは、マルンではなくクルークの洞窟前に転移していた。彼は、地面に落ちた指輪を見下ろし、それから静かに目を瞑る。
ザウバーは掌を地面に向け、そこへ向けて魔力を放った。すると、地面からは細い枝が伸び、それは指輪を引っ掛けながらザウバーの目線の高さまで成長する。
魔法を使い終えたザウバーは目を開き、間近で黒い宝石のはめられた指輪を見た。その指輪には繊細な細工がなされ、目視では確認出来ぬ程に小さな文字が刻みこまれている。
ザウバーは、その指輪を様々な角度から観察し、大きな溜め息を吐いた。それから、彼は指輪の掛かっている枝を手折り、唇を噛む。
その後、ザウバーは枝を持ったままマルンの小屋に転移をした。彼は、倒れにくいマグをテーブルの端に置き、そこに手折った枝をそっと刺す。
それから、テーブルの前に在る椅子に腰を下ろし、ザウバーは疲れた様子で背もたれに体重を預ける。青年は、暫くの間休んだ後で机上の指輪を見た。指輪の宝石は相変わらず闇を溶かし込んだ様な色をしており、一切の光を反射していない。
ザウバーは、魔族討伐の為に中断していた作業を再開した。しかし、気になることがあるのか、単純に疲れからなのか、その動きは鈍かった。
一冊をゆっくり捲っては休み、ザウバーは資料を少しずつ確認していった。そうして、何とか本棚の一段分を調べ終えた後で、ザウバーはベッドの上で仰向けになる。
(やたらと腹は減ったけど、作る気力ねえな)
ザウバーは、アークから渡された小瓶を手に取り、その中身を飲み干した。それから、気怠そうに息を吐くと、転移をする為の魔法を発動させる。
(学生街ってのは、安くて量の多い料理があるから丁度良い)
ザウバーは、転移した先の街で、適当な飲食店を選んで注文をした。彼は、今までの分を取り戻すかの様に料理を詰め込み、満足そうに目を細める。
(まあ、たまには良いよな)
食事を終えたザウバーだったが、新たにデザートを数種類と飲物を頼んだ。青年は、それを噛み締める様に味わい、余韻を楽しむ様に体の力を抜いた。
ザウバーは、店員が空いた皿を片付けるのを眺めながら、残っている飲物を見下ろした。彼は、暫くそうして悩んだ後で、新たにデザートを注文する。
(ダームが居たらズルいのなんのうるせえだろうが、暫くヘイデルからは戻らねえだろうし、今のうちに堪能しておくしかねえ)
その後、全てを食べ終えたザウバーは、長くなった伝票を持って支払いを済ませた。そして、人目につかない場所で転移魔法の詠唱を始め、満足そうな表情になってマルンに戻った。
マルンの小屋に戻ったザウバーは、食休みを経てから資料の調査を再開する。それは、食前よりも効率が良くなっており、次々に本は読まれていった。
そうこうしている内に夜になり、ザウバーは仲間が戻って来ていないかどうかを確認した。結果、小屋の中に仲間は居らず、ザウバーは体を洗ってから綺麗な服に着替えた。
(馬車でマルンに来るにしろ、歩いて来るにしろ、到着までは余裕があるだろう)
ザウバーは、調べ終えていなかった資料を手早く読み、掃除も済ませた本棚に元通りに戻した。これにより、マルンに持ち込んだ本棚の分は調査が終わり、気になる資料だけが部屋の机に積まれている。
(朝早い内にここに在る本棚は戻して……後は、どれ位の)
ザウバーはベッドに座り、それから眠そうに目を細めた。そして、彼はベッドに横たわると、大きな欠伸を放つ。
(いや、今日は色々とやったし、考えるのは明日にするか)
ザウバーは、布団も掛けぬままに眠りに落ち、妙な姿勢のまま寝息を立て始めた。
ザウバーは掌を地面に向け、そこへ向けて魔力を放った。すると、地面からは細い枝が伸び、それは指輪を引っ掛けながらザウバーの目線の高さまで成長する。
魔法を使い終えたザウバーは目を開き、間近で黒い宝石のはめられた指輪を見た。その指輪には繊細な細工がなされ、目視では確認出来ぬ程に小さな文字が刻みこまれている。
ザウバーは、その指輪を様々な角度から観察し、大きな溜め息を吐いた。それから、彼は指輪の掛かっている枝を手折り、唇を噛む。
その後、ザウバーは枝を持ったままマルンの小屋に転移をした。彼は、倒れにくいマグをテーブルの端に置き、そこに手折った枝をそっと刺す。
それから、テーブルの前に在る椅子に腰を下ろし、ザウバーは疲れた様子で背もたれに体重を預ける。青年は、暫くの間休んだ後で机上の指輪を見た。指輪の宝石は相変わらず闇を溶かし込んだ様な色をしており、一切の光を反射していない。
ザウバーは、魔族討伐の為に中断していた作業を再開した。しかし、気になることがあるのか、単純に疲れからなのか、その動きは鈍かった。
一冊をゆっくり捲っては休み、ザウバーは資料を少しずつ確認していった。そうして、何とか本棚の一段分を調べ終えた後で、ザウバーはベッドの上で仰向けになる。
(やたらと腹は減ったけど、作る気力ねえな)
ザウバーは、アークから渡された小瓶を手に取り、その中身を飲み干した。それから、気怠そうに息を吐くと、転移をする為の魔法を発動させる。
(学生街ってのは、安くて量の多い料理があるから丁度良い)
ザウバーは、転移した先の街で、適当な飲食店を選んで注文をした。彼は、今までの分を取り戻すかの様に料理を詰め込み、満足そうに目を細める。
(まあ、たまには良いよな)
食事を終えたザウバーだったが、新たにデザートを数種類と飲物を頼んだ。青年は、それを噛み締める様に味わい、余韻を楽しむ様に体の力を抜いた。
ザウバーは、店員が空いた皿を片付けるのを眺めながら、残っている飲物を見下ろした。彼は、暫くそうして悩んだ後で、新たにデザートを注文する。
(ダームが居たらズルいのなんのうるせえだろうが、暫くヘイデルからは戻らねえだろうし、今のうちに堪能しておくしかねえ)
その後、全てを食べ終えたザウバーは、長くなった伝票を持って支払いを済ませた。そして、人目につかない場所で転移魔法の詠唱を始め、満足そうな表情になってマルンに戻った。
マルンの小屋に戻ったザウバーは、食休みを経てから資料の調査を再開する。それは、食前よりも効率が良くなっており、次々に本は読まれていった。
そうこうしている内に夜になり、ザウバーは仲間が戻って来ていないかどうかを確認した。結果、小屋の中に仲間は居らず、ザウバーは体を洗ってから綺麗な服に着替えた。
(馬車でマルンに来るにしろ、歩いて来るにしろ、到着までは余裕があるだろう)
ザウバーは、調べ終えていなかった資料を手早く読み、掃除も済ませた本棚に元通りに戻した。これにより、マルンに持ち込んだ本棚の分は調査が終わり、気になる資料だけが部屋の机に積まれている。
(朝早い内にここに在る本棚は戻して……後は、どれ位の)
ザウバーはベッドに座り、それから眠そうに目を細めた。そして、彼はベッドに横たわると、大きな欠伸を放つ。
(いや、今日は色々とやったし、考えるのは明日にするか)
ザウバーは、布団も掛けぬままに眠りに落ち、妙な姿勢のまま寝息を立て始めた。