召喚されしもの(6)
文字数 1,574文字
寧樹は一人の男を召喚した。
だが、その男は、ゴルフウェアに身を包み、ゴルフバッグを肩に懸け、これからゴルフにでも出掛けようとしているといった、いかにも場違いな感じの中年男である。
だが、鈴木挑やアルトロ、大悪魔女帝・藤沢耀子も、本人に会ったことはないものの、入生田萌香ですら、この男の顔貌は既に見知っていた。
男は召喚主に文句を言う。
「なんだ、有希? パパはこれから、お得意様との接待ゴルフに行かなくちゃいけないんだぞ。『悪魔召喚』で急に呼び出して何させる心算なんだ? 面倒な事、パパ嫌だよ!」
そう……彼こそ、寧樹の実父、新田純一その人であった。そして、この世界ではSPA-1として鈴木挑たちと戦っていた男でもある。彼は、大悪魔女帝に匹敵する実力の大悪魔であり、間違いなく彼ならば、レビアタンなど苦もなく倒せるに違いない。
「ちょ、ちょっと有希ちゃん! それって狡くない? 別の時空から、こんな助っ人を呼んでくるなんて……」
大悪魔女帝は寧樹にクレームを付け、召喚された男にも釘を挿す。
「鉄! まさか、お前……。娘に強請 られたからって、最愛の妹の邪魔しようってんじゃないよな!」
「誰が最愛の妹だよ……」
新田純一は嫌そうにそう言ってから、寧樹にも断りを入れる。
「有希……。お前だって知ってるだろう? こいつの邪魔すると、後でしつこく嫌味を言われるから、パパ、嫌なんだよ……」
「安心して。別にパパに戦って貰おうなんて思ってないから……」
寧樹はそう言ってから、大悪魔女帝のクレームに反論を始める。
「パパは戦わないわよ。この時空を護るのは、やっぱり、この時空の人でなければならないもん。パパを召喚した理由は、パパの身体を借りたかったからよ!」
そして、寧樹は、自分の父親に彼女の要求を伝えた。
「パパ、前にこの世界で身体を貸していたんだから、今更、この世界の人の為、身体を貸すのは駄目だなんて言わないよね?!」
大悪魔女帝にも、寧樹が何をしたいのか分かった。だが、彼女が反応する前に、寧樹は言葉を繋いでいた。
「パパ! そんな間抜けな格好していないで、ヒーローの着ぐるみに変身して!」
純一がゴルフバックを投げ捨て、SPA-1に姿を変える。それで小田原隊長も、寧樹が彼に何をさせたいのか、十分に理解できた。
「チョウ、行くぞ!!」
「おう、アルトロ!!」
大悪魔女帝も、もう彼の邪魔をすることは止めた。小田原隊長は、その場で意識を失い前のめりに倒れる。
そう。彼はSPA-1に憑依したのだ。鈴木挑はアルトロの力を借りて憑依することが出来る。そして、そうすることで、彼は大悪魔の力を使う事が出来るのだ。
SPA-1となった彼は、『瞬間移動』の魔法でシタデルの部屋から姿を消した。
大悪魔女帝は、仕方ないとばかりに溜め息を吐き、萌香の姿のサント・ネイジュと対峙し、最後の決戦を始めんとする。もう、この部屋には、サント・ネイジュと大悪魔女帝しかいない。2人の勝負で決着を付けるしかないのだ。
「私も『攻撃力強化』と『防御力強化』の魔法を掛けまくったわ……。単純な格闘の技術なら、私の方が遥かに上。でも、有希ちゃんの方が魔力が上だから、強化分は有希ちゃんの方が多いわね……。それで、格闘技術の差がどこまで縮まったか? あるいは、それで力関係は逆転してしまったのか? さ、決着を着けなくちゃね……」
それに対し、萌香の身体を借りた寧樹は、波一つ立たぬ湖水の様な静かな表情で、涼し気に言葉を返した……。
「叔母さんは勘違いしている……。私は格闘技の模擬戦では、叔母さんに勝てたことなんか無いけど、実戦で叔母さんに負けたことは、これまで一度も無いんだよ」
「あら? それ、実戦なら負けないって言いたいのかしら?」
「そうよ……。だって私は、最強の大悪魔って言われてたんだもの……」
だが、その男は、ゴルフウェアに身を包み、ゴルフバッグを肩に懸け、これからゴルフにでも出掛けようとしているといった、いかにも場違いな感じの中年男である。
だが、鈴木挑やアルトロ、大悪魔女帝・藤沢耀子も、本人に会ったことはないものの、入生田萌香ですら、この男の顔貌は既に見知っていた。
男は召喚主に文句を言う。
「なんだ、有希? パパはこれから、お得意様との接待ゴルフに行かなくちゃいけないんだぞ。『悪魔召喚』で急に呼び出して何させる心算なんだ? 面倒な事、パパ嫌だよ!」
そう……彼こそ、寧樹の実父、新田純一その人であった。そして、この世界ではSPA-1として鈴木挑たちと戦っていた男でもある。彼は、大悪魔女帝に匹敵する実力の大悪魔であり、間違いなく彼ならば、レビアタンなど苦もなく倒せるに違いない。
「ちょ、ちょっと有希ちゃん! それって狡くない? 別の時空から、こんな助っ人を呼んでくるなんて……」
大悪魔女帝は寧樹にクレームを付け、召喚された男にも釘を挿す。
「鉄! まさか、お前……。娘に
「誰が最愛の妹だよ……」
新田純一は嫌そうにそう言ってから、寧樹にも断りを入れる。
「有希……。お前だって知ってるだろう? こいつの邪魔すると、後でしつこく嫌味を言われるから、パパ、嫌なんだよ……」
「安心して。別にパパに戦って貰おうなんて思ってないから……」
寧樹はそう言ってから、大悪魔女帝のクレームに反論を始める。
「パパは戦わないわよ。この時空を護るのは、やっぱり、この時空の人でなければならないもん。パパを召喚した理由は、パパの身体を借りたかったからよ!」
そして、寧樹は、自分の父親に彼女の要求を伝えた。
「パパ、前にこの世界で身体を貸していたんだから、今更、この世界の人の為、身体を貸すのは駄目だなんて言わないよね?!」
大悪魔女帝にも、寧樹が何をしたいのか分かった。だが、彼女が反応する前に、寧樹は言葉を繋いでいた。
「パパ! そんな間抜けな格好していないで、ヒーローの着ぐるみに変身して!」
純一がゴルフバックを投げ捨て、SPA-1に姿を変える。それで小田原隊長も、寧樹が彼に何をさせたいのか、十分に理解できた。
「チョウ、行くぞ!!」
「おう、アルトロ!!」
大悪魔女帝も、もう彼の邪魔をすることは止めた。小田原隊長は、その場で意識を失い前のめりに倒れる。
そう。彼はSPA-1に憑依したのだ。鈴木挑はアルトロの力を借りて憑依することが出来る。そして、そうすることで、彼は大悪魔の力を使う事が出来るのだ。
SPA-1となった彼は、『瞬間移動』の魔法でシタデルの部屋から姿を消した。
大悪魔女帝は、仕方ないとばかりに溜め息を吐き、萌香の姿のサント・ネイジュと対峙し、最後の決戦を始めんとする。もう、この部屋には、サント・ネイジュと大悪魔女帝しかいない。2人の勝負で決着を付けるしかないのだ。
「私も『攻撃力強化』と『防御力強化』の魔法を掛けまくったわ……。単純な格闘の技術なら、私の方が遥かに上。でも、有希ちゃんの方が魔力が上だから、強化分は有希ちゃんの方が多いわね……。それで、格闘技術の差がどこまで縮まったか? あるいは、それで力関係は逆転してしまったのか? さ、決着を着けなくちゃね……」
それに対し、萌香の身体を借りた寧樹は、波一つ立たぬ湖水の様な静かな表情で、涼し気に言葉を返した……。
「叔母さんは勘違いしている……。私は格闘技の模擬戦では、叔母さんに勝てたことなんか無いけど、実戦で叔母さんに負けたことは、これまで一度も無いんだよ」
「あら? それ、実戦なら負けないって言いたいのかしら?」
「そうよ……。だって私は、最強の大悪魔って言われてたんだもの……」