大悪魔女帝の城(8)
文字数 1,400文字
萌香は、火取志郎を彼の指定した場所に降ろした。だが、志郎は直ぐには立ち去ろうとせず、車を降りると、助手席の窓に駆け寄り萌香にお誘いを掛けてきた。
「ねぇ折角の月の美しい夜なんだからさ、公園かどこかでデートでもしようよ……」
だが、正直、萌香は彼の正体と股間のコレマタが気色悪くて、付き合う気になどなれはしなかった……。にも関わらず、寧樹が勝手にこう答える。
「10分だけだったら、いいわよ」
「寧樹、わたくし、嫌でございますわ! 例え寧樹が制御されていてサント・ネイジュに変身したとしても、わたくしの身体でございましょう? 身体に鱗粉でも付着していたらどうなさるお心算?!」
「大丈夫よ。萌香の身体使わないから……」
寧樹はそう言うと、萌香の右手の人差し指を額に宛 がった。すると、センチュリーの助手席の外、志郎の真後ろに新たに寧樹が現れた。それも、始めて萌香が会った、あの時の寧樹の姿でだ。
「私ね、『十の思い出』って、過去にあった人や過去の自分などを、10分間だけなら実体化できるのよ」
後ろを振り返った志郎は、思わず感激の口笛を吹き鳴らしてしまう。
「凄いや! ネイジュの私服姿も素敵じゃないか!!」
確かにサント・ネイジュは寧樹の顔を模している。寧樹の本体は、サント・ネイジュが私服を着ていると見えなくもない。
「こんなことも出来るのよ……」
そう言うと、思い出の寧樹はモス星人へと擬態した。それは志郎のイメージにある最高のモス星人の美女。服も純白の毛襟の着いた純白のガウンに変わっている。恐らくガウンの下には、赤と黒の装飾柄の付いた白のドレスを身に着けてるに違いない!!
それは火取家に代々伝わるウエディングドレスであり、志郎が一番美しいと感じる服装でもあったのだ……。
「でも条件があるわ……。あなたが死んだら……、その股間のそれ、私が貰っていい? ちょっと……、味見がしてみたいのよ……」
萌香の心の中の寧樹が、恐ろしい要求を述べた。「本気で食べたがってたんだ……」と、萌香も少し鳥肌が立つ。
当然、志郎は股間を押さえて恐怖に震え、両手で股間をガードした。
寧樹の思い出の登場で、少し興奮し出掛かっていたコレマタも、その言葉で一気に身体の奥底に引っ込んでしまう。
「ちょ、ちょっと……、そ、それは……」
「それと……、端っこだけでも、今切り取って食べさせてくれないかなぁ? ちゃんと金丹で元に戻すからさぁ!」
それを聞いた志郎は、振り返りもせず一目散に逃げ出していた。寧樹の思い出は酷く残念な表情をしていたが、結局、彼を追いかけることはなかった。
彼は逃げて正解だったのだろう。この女性に関わることは決して安全ではないのだ。今、萌香は、寧樹よりも、志郎の気持ちの方が遥かに分かるような気がする。
10分もすると、思い出は、月の光よりも淡く光る白い霧となって消えた。
「宮城野さん、わたくしたちも、そろそろ帰りましょうか?」
黒のセンチュリーは、萌香の言葉に合わせる様に、静かに公園前の道路から発車して行ったのであった……。
明日は学校が休みだが、東京湾基地へ出隊するつもりはない。彼女は全ての決着をつける為、瞬間移動して大悪魔女帝の城に攻め入らねばならない!
だが、そうは言っても、長くとも、半日も掛かりはしないだろう……。
それでも、寝不足は大敵だ……。
萌香は明日に備え、早めにベッドに潜ることにした。
「ねぇ折角の月の美しい夜なんだからさ、公園かどこかでデートでもしようよ……」
だが、正直、萌香は彼の正体と股間のコレマタが気色悪くて、付き合う気になどなれはしなかった……。にも関わらず、寧樹が勝手にこう答える。
「10分だけだったら、いいわよ」
「寧樹、わたくし、嫌でございますわ! 例え寧樹が制御されていてサント・ネイジュに変身したとしても、わたくしの身体でございましょう? 身体に鱗粉でも付着していたらどうなさるお心算?!」
「大丈夫よ。萌香の身体使わないから……」
寧樹はそう言うと、萌香の右手の人差し指を額に
「私ね、『十の思い出』って、過去にあった人や過去の自分などを、10分間だけなら実体化できるのよ」
後ろを振り返った志郎は、思わず感激の口笛を吹き鳴らしてしまう。
「凄いや! ネイジュの私服姿も素敵じゃないか!!」
確かにサント・ネイジュは寧樹の顔を模している。寧樹の本体は、サント・ネイジュが私服を着ていると見えなくもない。
「こんなことも出来るのよ……」
そう言うと、思い出の寧樹はモス星人へと擬態した。それは志郎のイメージにある最高のモス星人の美女。服も純白の毛襟の着いた純白のガウンに変わっている。恐らくガウンの下には、赤と黒の装飾柄の付いた白のドレスを身に着けてるに違いない!!
それは火取家に代々伝わるウエディングドレスであり、志郎が一番美しいと感じる服装でもあったのだ……。
「でも条件があるわ……。あなたが死んだら……、その股間のそれ、私が貰っていい? ちょっと……、味見がしてみたいのよ……」
萌香の心の中の寧樹が、恐ろしい要求を述べた。「本気で食べたがってたんだ……」と、萌香も少し鳥肌が立つ。
当然、志郎は股間を押さえて恐怖に震え、両手で股間をガードした。
寧樹の思い出の登場で、少し興奮し出掛かっていたコレマタも、その言葉で一気に身体の奥底に引っ込んでしまう。
「ちょ、ちょっと……、そ、それは……」
「それと……、端っこだけでも、今切り取って食べさせてくれないかなぁ? ちゃんと金丹で元に戻すからさぁ!」
それを聞いた志郎は、振り返りもせず一目散に逃げ出していた。寧樹の思い出は酷く残念な表情をしていたが、結局、彼を追いかけることはなかった。
彼は逃げて正解だったのだろう。この女性に関わることは決して安全ではないのだ。今、萌香は、寧樹よりも、志郎の気持ちの方が遥かに分かるような気がする。
10分もすると、思い出は、月の光よりも淡く光る白い霧となって消えた。
「宮城野さん、わたくしたちも、そろそろ帰りましょうか?」
黒のセンチュリーは、萌香の言葉に合わせる様に、静かに公園前の道路から発車して行ったのであった……。
明日は学校が休みだが、東京湾基地へ出隊するつもりはない。彼女は全ての決着をつける為、瞬間移動して大悪魔女帝の城に攻め入らねばならない!
だが、そうは言っても、長くとも、半日も掛かりはしないだろう……。
それでも、寝不足は大敵だ……。
萌香は明日に備え、早めにベッドに潜ることにした。