仮面舞踏会の終わり(9)
文字数 1,674文字
「私は功を焦っていた。それで、次世代SPA計画の提唱もし、大悪魔女帝の口車にも乗ってしまったのだ。それだけではない。羽根子にも功を取らせることを焦らせてしまい、危険な業務だと言うことを知りながらスパイ活動などさせていたのだ……」
入生田重雄は、嗚咽を漏らしながら全てを語り終えた。
ここで小田原隊長こと、鈴木挑が寧樹に疑問に思っていたことを尋ねる。
「寧樹さん、シンディさんが何故、剛霊武 獣出現の情報を私にリークしたのか? その理由を未だ説明して貰っていませんよね」
寧樹が萌香の心の中で「あ、それか」と呟くが、それは萌香以外には聞こえてこない。
「それはね、彼女自身に迷いがあるからなのよ。人類を滅ぼすことを黙って見過ごして良いのかって言うね。
理屈では、同族の大悪魔が生き残るのを優先すべきだし、自分が手を出して人類を攻撃する訳でないことも理解しているの。でも、あの人複雑でしょう? 説得されて同意したんだけど、やはり納得行かなかったのね。でも、一度同意したことを覆せないから、気紛れを装って、剛霊武 獣の出現を旧知の挑さんに内密に伝えることにして、剛霊武 獣の行動を邪魔させたのよ」
鈴木挑は、「彼女が複雑だ」と言う説明に、思わず頷いてしまう。
「それだけじゃないわ。彼女は人類を滅ぼすのが正しいのか、神に問うことにしたんだと思う」
「悪魔が、神に問う?」
「あら。悪魔って結構信心深いのよ。人間よりずっとね……。でも、悪魔だから、直ぐ神様を試そうとするの……。
勿論、彼女の心の中での理由付けに過ぎないんだけど、自分の反対勢力が勝つようであれば、人類滅亡は神が望まないことであるから、彼女が人類を滅ぼせず、大悪魔を助けられなくても仕方のない事だって……」
「はぁ?」と皆、心の中で呟いた……。
「それで、態々剛霊武 獣や人類と異星人衝突の話を、本来知らせる必要のない娘のサーラに吹き込んで、彼女に反対工作させる様に仕向けたのよ。
サーラも最初は耀子叔母さんを説得しようとしたんじゃないかと思うけど、彼女が曲げないので、私や修兄、そして旧友の鈴木挑さんに、それを妨害するように依頼したんじゃないかしら?」
「だったら、大悪魔女帝自身が人類を滅ぼすのを止 めればいいじゃない?!」
羽根子の言葉に、寧樹は「それが出来ないのが、耀子叔母さんなんだなぁ……」と仕方なさ気に答える。
「でも、もし、そう云うことなら……、大悪魔女帝は、寧樹に態と負けてくださるのではありませんこと?」
「萌香、それは無いわ。彼女は闘いである以上、全力で私を倒しに掛かるし、本人は決して手を抜かないわ。そうしないと、神の意志で彼女が負けたことにならないもの……」
それを聞いて、小田原隊長こと鈴木挑は絶望的な声を上げる。
「であれば、勝機は殆ど無いな。彼女はブラックホールを創り出し、それで大悪魔の船団を略1人で壊滅させたんだ。心も読め、相手がどう闘うかも筒抜け、仮に不意を衝いて致命傷を与えても、時間を戻してやり直してしまうので、騙し討ちすら出来はしない。正直、人間や異星人、いや大悪魔が束になって掛かっても敵う相手じゃないんだ……」
「それならば、サント・ネイジュも大悪魔女帝と同じ力を持っておりますわ。能力は略互角。負けと決まった訳ではありませんわ」
萌香の台詞だが、鈴木挑の中の別人は同意しなかった。
「いや、同じ能力があったにしても、互角とはとても思えませんね。我々が知るシンディ小島は、正直、サント・ネイジュより遥かに威圧感がありますよ……」
それには寧樹が答える。
「ええ、私もそう思います。叔母さんは負けることのない無敵の存在です。でも、萌香は怒っていましたけど、叔母さんは今回はゲームだと言っていました。地球を壊す破壊力のある攻撃は禁止。時を戻すのは無しって云う、ルールの付いた……」
「強力な攻撃が出来ず、時を戻せないから勝てると思っているのですか?」
「それだけが理由ではありません。今回の彼女は、誰かを護る闘いではないのです。言い換えると、今回、彼女は、無敵の耀公主ではないのです!!」
入生田重雄は、嗚咽を漏らしながら全てを語り終えた。
ここで小田原隊長こと、鈴木挑が寧樹に疑問に思っていたことを尋ねる。
「寧樹さん、シンディさんが何故、
寧樹が萌香の心の中で「あ、それか」と呟くが、それは萌香以外には聞こえてこない。
「それはね、彼女自身に迷いがあるからなのよ。人類を滅ぼすことを黙って見過ごして良いのかって言うね。
理屈では、同族の大悪魔が生き残るのを優先すべきだし、自分が手を出して人類を攻撃する訳でないことも理解しているの。でも、あの人複雑でしょう? 説得されて同意したんだけど、やはり納得行かなかったのね。でも、一度同意したことを覆せないから、気紛れを装って、
鈴木挑は、「彼女が複雑だ」と言う説明に、思わず頷いてしまう。
「それだけじゃないわ。彼女は人類を滅ぼすのが正しいのか、神に問うことにしたんだと思う」
「悪魔が、神に問う?」
「あら。悪魔って結構信心深いのよ。人間よりずっとね……。でも、悪魔だから、直ぐ神様を試そうとするの……。
勿論、彼女の心の中での理由付けに過ぎないんだけど、自分の反対勢力が勝つようであれば、人類滅亡は神が望まないことであるから、彼女が人類を滅ぼせず、大悪魔を助けられなくても仕方のない事だって……」
「はぁ?」と皆、心の中で呟いた……。
「それで、態々
サーラも最初は耀子叔母さんを説得しようとしたんじゃないかと思うけど、彼女が曲げないので、私や修兄、そして旧友の鈴木挑さんに、それを妨害するように依頼したんじゃないかしら?」
「だったら、大悪魔女帝自身が人類を滅ぼすのを
羽根子の言葉に、寧樹は「それが出来ないのが、耀子叔母さんなんだなぁ……」と仕方なさ気に答える。
「でも、もし、そう云うことなら……、大悪魔女帝は、寧樹に態と負けてくださるのではありませんこと?」
「萌香、それは無いわ。彼女は闘いである以上、全力で私を倒しに掛かるし、本人は決して手を抜かないわ。そうしないと、神の意志で彼女が負けたことにならないもの……」
それを聞いて、小田原隊長こと鈴木挑は絶望的な声を上げる。
「であれば、勝機は殆ど無いな。彼女はブラックホールを創り出し、それで大悪魔の船団を略1人で壊滅させたんだ。心も読め、相手がどう闘うかも筒抜け、仮に不意を衝いて致命傷を与えても、時間を戻してやり直してしまうので、騙し討ちすら出来はしない。正直、人間や異星人、いや大悪魔が束になって掛かっても敵う相手じゃないんだ……」
「それならば、サント・ネイジュも大悪魔女帝と同じ力を持っておりますわ。能力は略互角。負けと決まった訳ではありませんわ」
萌香の台詞だが、鈴木挑の中の別人は同意しなかった。
「いや、同じ能力があったにしても、互角とはとても思えませんね。我々が知るシンディ小島は、正直、サント・ネイジュより遥かに威圧感がありますよ……」
それには寧樹が答える。
「ええ、私もそう思います。叔母さんは負けることのない無敵の存在です。でも、萌香は怒っていましたけど、叔母さんは今回はゲームだと言っていました。地球を壊す破壊力のある攻撃は禁止。時を戻すのは無しって云う、ルールの付いた……」
「強力な攻撃が出来ず、時を戻せないから勝てると思っているのですか?」
「それだけが理由ではありません。今回の彼女は、誰かを護る闘いではないのです。言い換えると、今回、彼女は、無敵の耀公主ではないのです!!」