召喚されしもの(1)
文字数 1,577文字
サント・ネイジュに変身した寧樹が瞬間移動した先、そこは特に変わった所の無い、テレビのCMでも良く見られる、ごく普通の高級住宅のリビングであった。
そこに突然現れたネイジュを、キャットスーツを身に纏った大悪魔女帝が立ち上がって出迎える。
「あら、早いわね。いらっしゃい。まぁ座って。お茶でもいかがかしら?」
大悪魔女帝の座っていたソファの前には、ガラスのローテーブルがあり、燕尾服を着た大悪魔ブラウが、お菓子をセットしたハイティースタンドをその脇へと運んでくる。流石の萌香も、この大悪魔たちの感性は今少し理解できない。
次の瞬間、ネイジュの直ぐ後に、小田原隊長が続いて現れる。彼はネイジュの直ぐ後ろの位置を狙って瞬間移動をしてきた様だ。これには萌香も驚きを隠せない。しかし、大悪魔女帝はこれも想定内であった様だ。
「いらっしゃい。お久しぶりね、チョウ君」
「シンディさん。この前、入生田隊員の学校で会ったばかりですよ。都内繁華街の交差点でも見かけていますし……」
「あら、そうだったかしら……?」
萌香は、どうやって小田原隊長が瞬間移動できたのか全く理解できなかった。だが、その疑問には大悪魔女帝が答えてくれる。
「そうだったわね。アルトロ君は、兄から『瞬間移動』の呪文を教わっていたんだっけ。すっかり忘れていたわ」
「ええ。でも少し練習しましたよ。あまりに久し振りだったものですから……」
「じゃ、チョウ君とアルトロ君も、私たちと一緒にお茶にする? サンドウィッチは無いけど、スコーン位ならあるわよ」
それには、小田原隊長の片方の人格が拒否の答えを返す。萌香は、恐らくそちらがチョウと呼ばれた方の人格だと思った。
「冗談じゃない。こっちは人類の未来が掛かっているんですよ。シンディさんが相手だとしても、戦う相手と、のんびりお茶なんか飲んでられる訳ないでしょう!」
もう一人の人格も同意見の様だった。
「と云う訳です。チョウも私も、あなたを一刻も早く倒せる様に、彼女の助力をさせて頂きますよ。シンディさん……」
当然、萌香もその意見に賛成だ。だが、彼女の相棒はそれ程でもない様だった……。
「え~!! お菓子、食べたかったのに~」
勿論、その台詞は心の中に留めている。
その頃、宇宙軍東京湾基地、異星人討伐隊作戦室では、風祭隊員と湯本隊員、あと板橋隊員が遥か南方で行われている決戦の成否に気を揉んでいた。彼らには、大悪魔の闘いがどの様に進んでいるのか知る術はない。
結果は2人がどう帰ってくるかで分かる。もし、午前中に帰って来なければ、勝ち負けを知ったとしても仕方の無いことであった。ただ、同盟国軍にシタデルへの攻撃開始を要請するだけのことである。
「隊長たち、勝てますかね?」
湯本隊員が何の屈託も無さそうに、そう口にする。
「勿論、隊長なら勝つさ!」
「どうかしらね? でも、負けたとしても、サント・ネイジュがいなくなるだけでしょう? 大して変わらないんじゃない?」
風祭隊員と板橋隊員は、立場に違いがあるので多少意見が異なる。
湯本隊員はと云うと、あのサント・ネイジュが入生田隊員だったと云うことを知り、彼女に一層の親しみを感じていた。そんなこともあり、彼は、是非、サント・ネイジュに勝って欲しいと思っている。だが、板橋隊員は必ずしもそうではなかった……。
表面上は……。
一方、シタデルの箱の中では、決戦の時を迎えようとしていた。
大悪魔女帝は残念そうに立ち上がると、ブラウがハイティースタンドを持って来たのとは反対側の扉へと近づき、扉を開いて中へと入る。サント・ネイジュと小田原隊長も、当然の様にその後に続いた。
3人が入っていった部屋は、15メートル四方は在りそうな、板張りの体育館の様な格闘技の訓練場であった。
「さぁ始めましょうか……。有希ちゃん、そして、チョウ君」
そこに突然現れたネイジュを、キャットスーツを身に纏った大悪魔女帝が立ち上がって出迎える。
「あら、早いわね。いらっしゃい。まぁ座って。お茶でもいかがかしら?」
大悪魔女帝の座っていたソファの前には、ガラスのローテーブルがあり、燕尾服を着た大悪魔ブラウが、お菓子をセットしたハイティースタンドをその脇へと運んでくる。流石の萌香も、この大悪魔たちの感性は今少し理解できない。
次の瞬間、ネイジュの直ぐ後に、小田原隊長が続いて現れる。彼はネイジュの直ぐ後ろの位置を狙って瞬間移動をしてきた様だ。これには萌香も驚きを隠せない。しかし、大悪魔女帝はこれも想定内であった様だ。
「いらっしゃい。お久しぶりね、チョウ君」
「シンディさん。この前、入生田隊員の学校で会ったばかりですよ。都内繁華街の交差点でも見かけていますし……」
「あら、そうだったかしら……?」
萌香は、どうやって小田原隊長が瞬間移動できたのか全く理解できなかった。だが、その疑問には大悪魔女帝が答えてくれる。
「そうだったわね。アルトロ君は、兄から『瞬間移動』の呪文を教わっていたんだっけ。すっかり忘れていたわ」
「ええ。でも少し練習しましたよ。あまりに久し振りだったものですから……」
「じゃ、チョウ君とアルトロ君も、私たちと一緒にお茶にする? サンドウィッチは無いけど、スコーン位ならあるわよ」
それには、小田原隊長の片方の人格が拒否の答えを返す。萌香は、恐らくそちらがチョウと呼ばれた方の人格だと思った。
「冗談じゃない。こっちは人類の未来が掛かっているんですよ。シンディさんが相手だとしても、戦う相手と、のんびりお茶なんか飲んでられる訳ないでしょう!」
もう一人の人格も同意見の様だった。
「と云う訳です。チョウも私も、あなたを一刻も早く倒せる様に、彼女の助力をさせて頂きますよ。シンディさん……」
当然、萌香もその意見に賛成だ。だが、彼女の相棒はそれ程でもない様だった……。
「え~!! お菓子、食べたかったのに~」
勿論、その台詞は心の中に留めている。
その頃、宇宙軍東京湾基地、異星人討伐隊作戦室では、風祭隊員と湯本隊員、あと板橋隊員が遥か南方で行われている決戦の成否に気を揉んでいた。彼らには、大悪魔の闘いがどの様に進んでいるのか知る術はない。
結果は2人がどう帰ってくるかで分かる。もし、午前中に帰って来なければ、勝ち負けを知ったとしても仕方の無いことであった。ただ、同盟国軍にシタデルへの攻撃開始を要請するだけのことである。
「隊長たち、勝てますかね?」
湯本隊員が何の屈託も無さそうに、そう口にする。
「勿論、隊長なら勝つさ!」
「どうかしらね? でも、負けたとしても、サント・ネイジュがいなくなるだけでしょう? 大して変わらないんじゃない?」
風祭隊員と板橋隊員は、立場に違いがあるので多少意見が異なる。
湯本隊員はと云うと、あのサント・ネイジュが入生田隊員だったと云うことを知り、彼女に一層の親しみを感じていた。そんなこともあり、彼は、是非、サント・ネイジュに勝って欲しいと思っている。だが、板橋隊員は必ずしもそうではなかった……。
表面上は……。
一方、シタデルの箱の中では、決戦の時を迎えようとしていた。
大悪魔女帝は残念そうに立ち上がると、ブラウがハイティースタンドを持って来たのとは反対側の扉へと近づき、扉を開いて中へと入る。サント・ネイジュと小田原隊長も、当然の様にその後に続いた。
3人が入っていった部屋は、15メートル四方は在りそうな、板張りの体育館の様な格闘技の訓練場であった。
「さぁ始めましょうか……。有希ちゃん、そして、チョウ君」