勝利、だが……(8)
文字数 1,637文字
小田原隊長が萌香に反論する。
「ああ。だが、それは単純な解釈にしか過ぎないな……」
「在住異星人の中には、スパイとは言わないまでも、母星の利益のみを考えている者もいる。地球での習慣に馴染めず、地球人の文化を事あるごとに否定し、攻撃してくる者もいる。彼らも確かに地球人かも知れない。だが、そいつらと上手くやっていくのは、先住人類にとって簡単なことではないだろうね」
萌香にだってそれは理解できる。
現に尊敬する祖父も、『必ずしも異星人が悪い訳ではないが、お互い、顔を付き合わせているから、いがみ合うのだ。少し間を置いて頭を冷やした方が良い』と言っていた。
だが、それも強硬論者や異星人テロリストによって、異星人排斥論と云う極論に書き換えられてしまう。
簡単ではない。それは萌香も同感だ。
だが、今、反論している小田原隊長は、実は異星人解放戦線の人間なのだ。彼は異星人への憎しみで言っているのではない。
反対意見があるのは当然だ。だが、お互いが相手の立場を尊重し、真摯に問題に取り組めば、何らかの解決策が生まれて来ないとも限らないではないか?
「じゃぁ萌香、私の仕事はもうお終いよ。萌萌香、隊長。これからは、あなたたちで戦って行かなけれ ばならないわ」
突然、寧樹が萌香に別れを告げた。
「何言ってるのです? まだ、戦いはこれからでございますよ……。そう仰ったのは、寧樹ではありませんか?」
「そうね……。でも、私には少しだけ遣ることが出来ちゃったのよ。耀子叔母さんが残して行った大悪魔の残骸を、全部元の大悪魔に戻して、別の時空へと送り出さなけきゃ行けないでしょう? じゃ行くよ!」
そう言うと、寧樹は一瞬で瞬間移動する。
二人が瞬間移動した先は、凍てつくブリザードが渦巻く極寒の世界だった。
「寧樹、ここは……?」
「南極よ。この氷の下に私の身体が埋まっているの」
寧樹は魔法を使って、氷の地面から自らの身体を地面から氷ごと浮かびあげた。そして、その氷の棺ごと、自分も一緒に瞬間移動で一気に日本へと帰って来る。
そこは萌香にも見覚えのある場所、寧樹と始めて遭った、あの公園のステージだった。
「じゃ、憑依を解くわね。長い間ご苦労様。萌香、ありがとう」
「あ、待って……」
萌香は心の中が、何か少し軽くなった様な気がした。恐らく、それが寧樹のいなくなった証明 なのだろう。
そして次の瞬間、ステージに置かれた氷の棺が粉々に粉砕される。
「ふぅ~。氷の中だと身体が見つけられたり、野生動物に食べられたりしないのは良いのだけど、元に戻った時に冷たくなり過ぎてて、ちょっと嫌なのよね~」
「寧樹、直ぐに行ってしまわれるの?」
「まだ、暫くこっちの世界にいるよ~。ええ? なんで?」
それを聞いて、萌香も思わず笑みが零れてしまう。
「寧樹、あんな台詞を言うから、直ぐにお別れになると思ってしまいましたわ」
「あ~、ご免、ご免。萌香のお父さんに協力して貰わなきゃいけないのよ。大悪魔の破片を全部剛霊武獣にして貰って、大悪魔コアに金丹を飲ませなきゃいけないでしょう……」
寧樹はそう言うと、腰に手を当てて大きく笑っていた。それを見ると萌香も釣られて口角が上がって来る。
「分かりましたわ。お父様には、わたくしの方からお願いしておきますわ。でも、お父様も、もう剛霊武獣を使って異星人テロリストを騙 るようなことはしないでしょうね。勿論、わたくしから言わなくても、寧樹の言うことなら聞いてくださるでしょうけどね!」
「そうね。でも、お願いはしないと……。彼はもう、剛霊武獣なんかどうでも良いでしょうし、暇が、あまり無さそうだから……」
「ええ。お父様は大悪魔より怖いお爺様に、板橋隊員……、お姉様を認知させなければなりませんからね」
「萌香は大人だね。私だったら、父に隠し子なんていたら、ショックで寝込んじゃうよ」
寧樹はそう言ってみたものの、「姉妹がいたら、それはそれで楽しいかな……」と、ふとそんな風にも考えてしまうのであった。
「ああ。だが、それは単純な解釈にしか過ぎないな……」
「在住異星人の中には、スパイとは言わないまでも、母星の利益のみを考えている者もいる。地球での習慣に馴染めず、地球人の文化を事あるごとに否定し、攻撃してくる者もいる。彼らも確かに地球人かも知れない。だが、そいつらと上手くやっていくのは、先住人類にとって簡単なことではないだろうね」
萌香にだってそれは理解できる。
現に尊敬する祖父も、『必ずしも異星人が悪い訳ではないが、お互い、顔を付き合わせているから、いがみ合うのだ。少し間を置いて頭を冷やした方が良い』と言っていた。
だが、それも強硬論者や異星人テロリストによって、異星人排斥論と云う極論に書き換えられてしまう。
簡単ではない。それは萌香も同感だ。
だが、今、反論している小田原隊長は、実は異星人解放戦線の人間なのだ。彼は異星人への憎しみで言っているのではない。
反対意見があるのは当然だ。だが、お互いが相手の立場を尊重し、真摯に問題に取り組めば、何らかの解決策が生まれて来ないとも限らないではないか?
「じゃぁ萌香、私の仕事はもうお終いよ。萌萌香、隊長。これからは、あなたたちで戦って行かなけれ ばならないわ」
突然、寧樹が萌香に別れを告げた。
「何言ってるのです? まだ、戦いはこれからでございますよ……。そう仰ったのは、寧樹ではありませんか?」
「そうね……。でも、私には少しだけ遣ることが出来ちゃったのよ。耀子叔母さんが残して行った大悪魔の残骸を、全部元の大悪魔に戻して、別の時空へと送り出さなけきゃ行けないでしょう? じゃ行くよ!」
そう言うと、寧樹は一瞬で瞬間移動する。
二人が瞬間移動した先は、凍てつくブリザードが渦巻く極寒の世界だった。
「寧樹、ここは……?」
「南極よ。この氷の下に私の身体が埋まっているの」
寧樹は魔法を使って、氷の地面から自らの身体を地面から氷ごと浮かびあげた。そして、その氷の棺ごと、自分も一緒に瞬間移動で一気に日本へと帰って来る。
そこは萌香にも見覚えのある場所、寧樹と始めて遭った、あの公園のステージだった。
「じゃ、憑依を解くわね。長い間ご苦労様。萌香、ありがとう」
「あ、待って……」
萌香は心の中が、何か少し軽くなった様な気がした。恐らく、それが寧樹のいなくなった
そして次の瞬間、ステージに置かれた氷の棺が粉々に粉砕される。
「ふぅ~。氷の中だと身体が見つけられたり、野生動物に食べられたりしないのは良いのだけど、元に戻った時に冷たくなり過ぎてて、ちょっと嫌なのよね~」
「寧樹、直ぐに行ってしまわれるの?」
「まだ、暫くこっちの世界にいるよ~。ええ? なんで?」
それを聞いて、萌香も思わず笑みが零れてしまう。
「寧樹、あんな台詞を言うから、直ぐにお別れになると思ってしまいましたわ」
「あ~、ご免、ご免。萌香のお父さんに協力して貰わなきゃいけないのよ。大悪魔の破片を全部剛霊武獣にして貰って、大悪魔コアに金丹を飲ませなきゃいけないでしょう……」
寧樹はそう言うと、腰に手を当てて大きく笑っていた。それを見ると萌香も釣られて口角が上がって来る。
「分かりましたわ。お父様には、わたくしの方からお願いしておきますわ。でも、お父様も、もう剛霊武獣を使って異星人テロリストを
「そうね。でも、お願いはしないと……。彼はもう、剛霊武獣なんかどうでも良いでしょうし、暇が、あまり無さそうだから……」
「ええ。お父様は大悪魔より怖いお爺様に、板橋隊員……、お姉様を認知させなければなりませんからね」
「萌香は大人だね。私だったら、父に隠し子なんていたら、ショックで寝込んじゃうよ」
寧樹はそう言ってみたものの、「姉妹がいたら、それはそれで楽しいかな……」と、ふとそんな風にも考えてしまうのであった。