剛霊武獣(5)
文字数 1,407文字
萌香は逃げた。後からは人間と蜥蜴を合体させた様な剛霊武 獣が追ってくる。
そこはショッピングセンターに隣接する立体駐車場。異星人テロリストが一般人を襲っているとの報告を受けた我らが異星人討伐隊の面々は、そこに急行したところ、剛霊武 獣と遭遇、敵を倒すべく、三階から四階、五階へと剛霊武獣を追って行った。
新人の入生田萌香は出遅れ、仲間を追いかけたのだが、彼女を一人群れから外すかの様に新たな剛霊武 獣が現れ、萌香を仲間のいる階上とは反対の階下へと追い詰めていく。
「逃げても無駄だ。入生田萌香。他の隊員は皆、囮の剛霊武 獣を追っていって、お前を助けに来る者など誰もいない」
剛霊武 獣は、萌香がそれを聞いて恐怖に怯えるのを楽しみたかったのか、態とその様な脅しを掛けてきた。
逃げ惑う萌香は、打ちっ放しのコンクリの柱の陰へと走って逃げる。すると、そこに別の女の声……。
「入生田萌香さん、ここは私に任せて、あなたは逃げるのです!」
「ありがとう。お任せしましたわ!」
蜥蜴の剛霊武 獣が、柱の裏へと廻り込もうとすると、彼の体は軽く十メートル程蹴り飛ばされた。
蹴飛ばしたのは、柱の裏から姿を見せた、カラフルなスカートを纏った不思議な少女。
「お下品な剛霊武 獣。わたくしが天に替わって成敗して差し上げますわ」
「お、お前は何者だ?」
「あたくしは、氷原に咲く一輪の可憐な花、聖なる白き乙女、サント・”アルウェン”・ネイジュ!」
萌香はそれだけ言うと、心の中で寧樹に「交代よ!」と告げる。
「あれほど恥ずかしがっていたのに、萌香ったら、ノリノリじゃん」
「戦闘は寧樹の担当ですわ。さ、早々に片付けて下さらない?」
寧樹は「もう……」と言いながらも、蜥蜴の剛霊武 獣に近づいて行く。
「何だ、舐めやがって。貴様ら人間の癖に、偉そうに……」
そうこうしていると、萌香のことが気になったのか、上に行った筈の異星人討伐隊のメンバー三人が三階へと戻って来る。
今回の出撃は、小田原隊長、風祭隊員、湯本隊員と、入生田萌香の四隊員。板橋隊員は作戦室で待機だったのであった。
「何だ、変なの同士が闘っているぜ!」
風祭隊員の言葉に、思わず文句を言おうと振り向いた寧樹の頬に、蜥蜴剛霊武 獣の右ストレートがヒットする。
「寧樹、真面目にやってよ!」
「相手が弱すぎて、マジになれないのよ!」
蜥蜴剛霊武 獣は、拳での攻撃が得意らしく寧樹の顔面を狙ってパンチをぶち込んで行く。明らかに少女の顔に傷を付けたいとの、サディスティックな嗜好を満たす為だけの攻撃だ。
寧樹は、剛霊武 獣の左右の拳でのラッシュに、一歩二歩と交代していった。
それを見た湯本隊員が、小田原隊長に援護するかを確認する。
「隊長、女の子の方がピンチじゃないですか、助けましょうよ……」
「あいつが敵か味方か分からん。放っておけ。それより入生田隊員を探すんだ」
「全く、隊長の態度、冷たすぎだと思いませんこと?」
萌香が心の中で不満を漏らす。
そうしている間に寧樹はコンクリの柱を背に、追い詰められていた。
「それじゃ、俺の得意技でとどめと行くとするか、覚悟するんだな、姉ちゃん」
剛霊武 獣の右手が鉄の塊りの様に変わっていく。恐らく、それが剛霊武 獣に憑依している大悪魔の特殊能力なのだろう。そして、その鉄の塊りを使ったパンチが、彼の必殺技に違いない。
その必殺技を、寧樹はその鼻っ柱にガードすることなく真面 に受けてしまった。
そこはショッピングセンターに隣接する立体駐車場。異星人テロリストが一般人を襲っているとの報告を受けた我らが異星人討伐隊の面々は、そこに急行したところ、
新人の入生田萌香は出遅れ、仲間を追いかけたのだが、彼女を一人群れから外すかの様に新たな
「逃げても無駄だ。入生田萌香。他の隊員は皆、囮の
逃げ惑う萌香は、打ちっ放しのコンクリの柱の陰へと走って逃げる。すると、そこに別の女の声……。
「入生田萌香さん、ここは私に任せて、あなたは逃げるのです!」
「ありがとう。お任せしましたわ!」
蜥蜴の
蹴飛ばしたのは、柱の裏から姿を見せた、カラフルなスカートを纏った不思議な少女。
「お下品な
「お、お前は何者だ?」
「あたくしは、氷原に咲く一輪の可憐な花、聖なる白き乙女、サント・”アルウェン”・ネイジュ!」
萌香はそれだけ言うと、心の中で寧樹に「交代よ!」と告げる。
「あれほど恥ずかしがっていたのに、萌香ったら、ノリノリじゃん」
「戦闘は寧樹の担当ですわ。さ、早々に片付けて下さらない?」
寧樹は「もう……」と言いながらも、蜥蜴の
「何だ、舐めやがって。貴様ら人間の癖に、偉そうに……」
そうこうしていると、萌香のことが気になったのか、上に行った筈の異星人討伐隊のメンバー三人が三階へと戻って来る。
今回の出撃は、小田原隊長、風祭隊員、湯本隊員と、入生田萌香の四隊員。板橋隊員は作戦室で待機だったのであった。
「何だ、変なの同士が闘っているぜ!」
風祭隊員の言葉に、思わず文句を言おうと振り向いた寧樹の頬に、蜥蜴
「寧樹、真面目にやってよ!」
「相手が弱すぎて、マジになれないのよ!」
蜥蜴
寧樹は、
それを見た湯本隊員が、小田原隊長に援護するかを確認する。
「隊長、女の子の方がピンチじゃないですか、助けましょうよ……」
「あいつが敵か味方か分からん。放っておけ。それより入生田隊員を探すんだ」
「全く、隊長の態度、冷たすぎだと思いませんこと?」
萌香が心の中で不満を漏らす。
そうしている間に寧樹はコンクリの柱を背に、追い詰められていた。
「それじゃ、俺の得意技でとどめと行くとするか、覚悟するんだな、姉ちゃん」
その必殺技を、寧樹はその鼻っ柱にガードすることなく