とある地方都市にて(5)
文字数 1,414文字
入生田萌香が寧樹に指示された場所に来てみると、昔、公園で彼女を助けてくれた寧樹によく似た女性が、今まさに逃げ出そうとしているところであった。
「大丈夫ですか?」
萌香はその女性に声を掛ける。通常、走ってくる人間に掛ける言葉ではないが、向うで剛霊武 獣と魔法少女が殴り合いをしている状況では何も不思議はない。
「あっちで……」
寧樹似の女性は、気丈にも萌香に状況を説明しようとする。
「あちらで、怪物が暴れていると仰るのですね?」
「いいえ。あっちで……、怪物と変な男が、ボコられているんです!」
「はぁ?」
萌香が見てみると、確かに翼竜と燕尾服の変な男が少女に散々にいたぶられている。それも、そのアイドル風の衣装を身に付けた少女とは、サント・ネイジュその人なのだ。
「寧樹?! あれ、どう云う事でしょう?」
「取り敢えず、行ってみましょう!」
萌香の声には出ない質問に、寧樹も心の中で返事をする。
「あなたは逃げてください!」
萌香は、寧樹似の女性に声に出して逃げる様に勧めた。
「あなたは?」
「わたくし、異星人討伐隊の隊員ですの。あの方たちは、不法入星異星人である可能性が高いようですわ。わたくしたちで何とか致しますから、あなたは早くお逃げになさってください」
それを聞いてか、寧樹似の女性は駅と反対側の方へと走って逃げて行った。それを見送ってから、萌香は混乱した頭を少し振って剛霊武獣の方へと走り出す。兎に角、行ってみるしかないだろう。
サント・ネイジュの方は、剛霊武 獣をどうやって痛めつけようか、考えあぐねている様であった。そんな彼女に萌香は声を掛ける。
「あなた、一体何者ですの?」
「あら、異星人討伐隊の隊員なのに、お会いするのは始めてだったかしら? あたくしは、氷原に咲く一輪の可憐な花、聖なる白き乙女、サント・”アルウェン”・ネイジュ!」
サント・ネイジュは白々しくも、萌香の考えた決め台詞をすらすらと応える。
丁度その時だった。空から聞き覚えのある声が響いて来る。そう、あれは大悪魔女帝の声だった。
「ブラウ、プテラちゃん。危ないから帰ってらっしゃいね」
そして次の瞬間、ボロボロになった燕尾服の大悪魔と、頭部をぐちゃぐちゃに潰された翼竜の哀れな姿は一瞬で消えた。
呆然とする萌香にサント・ネイジュが言葉を掛ける。
「ご免なさいね。有希ちゃんと替わって貰えるかしら?」
萌香は心の中で同意した。それで寧樹に伝わったのか、身体の自由が利かなくなり、寧樹に制御が移ったことが理解できる。
そして、それは正面に立つ、サント・ネイジュにも分かった様であった。
「有希ちゃん、あなたね。若し、この世界の有希ちゃんが怪我でもしたら、どうする心算だったの?」
「だって叔母さん来てるの分かってたし、いざとなったら、瞬間移動で行けば大丈夫じゃない!」
「そこら辺が甘いのよねぇ。それに、抑々 新田有希なんて名乗ったら駄目じゃない!」
寧樹には、このサント・ネイジュの正体が分かっているのだろう。萌香にはそう感じられた。それも、2人は見知った関係らしい。
「あ、ご免、萌香。話が見えないよね……。叔母さん、もう良いよ。正体を表しても」
「あら、良いの? 萌香ちゃん、吃驚するんじゃない?」
寧樹は答えなかったが、表情で通じたのだろう。もう1人のネイジュは、その答えを待たずネイジュの変身を解いた。そして、その正体とは、彼女の宿敵である筈の大悪魔女帝その人であったのだ。
「大丈夫ですか?」
萌香はその女性に声を掛ける。通常、走ってくる人間に掛ける言葉ではないが、向うで
「あっちで……」
寧樹似の女性は、気丈にも萌香に状況を説明しようとする。
「あちらで、怪物が暴れていると仰るのですね?」
「いいえ。あっちで……、怪物と変な男が、ボコられているんです!」
「はぁ?」
萌香が見てみると、確かに翼竜と燕尾服の変な男が少女に散々にいたぶられている。それも、そのアイドル風の衣装を身に付けた少女とは、サント・ネイジュその人なのだ。
「寧樹?! あれ、どう云う事でしょう?」
「取り敢えず、行ってみましょう!」
萌香の声には出ない質問に、寧樹も心の中で返事をする。
「あなたは逃げてください!」
萌香は、寧樹似の女性に声に出して逃げる様に勧めた。
「あなたは?」
「わたくし、異星人討伐隊の隊員ですの。あの方たちは、不法入星異星人である可能性が高いようですわ。わたくしたちで何とか致しますから、あなたは早くお逃げになさってください」
それを聞いてか、寧樹似の女性は駅と反対側の方へと走って逃げて行った。それを見送ってから、萌香は混乱した頭を少し振って剛霊武獣の方へと走り出す。兎に角、行ってみるしかないだろう。
サント・ネイジュの方は、
「あなた、一体何者ですの?」
「あら、異星人討伐隊の隊員なのに、お会いするのは始めてだったかしら? あたくしは、氷原に咲く一輪の可憐な花、聖なる白き乙女、サント・”アルウェン”・ネイジュ!」
サント・ネイジュは白々しくも、萌香の考えた決め台詞をすらすらと応える。
丁度その時だった。空から聞き覚えのある声が響いて来る。そう、あれは大悪魔女帝の声だった。
「ブラウ、プテラちゃん。危ないから帰ってらっしゃいね」
そして次の瞬間、ボロボロになった燕尾服の大悪魔と、頭部をぐちゃぐちゃに潰された翼竜の哀れな姿は一瞬で消えた。
呆然とする萌香にサント・ネイジュが言葉を掛ける。
「ご免なさいね。有希ちゃんと替わって貰えるかしら?」
萌香は心の中で同意した。それで寧樹に伝わったのか、身体の自由が利かなくなり、寧樹に制御が移ったことが理解できる。
そして、それは正面に立つ、サント・ネイジュにも分かった様であった。
「有希ちゃん、あなたね。若し、この世界の有希ちゃんが怪我でもしたら、どうする心算だったの?」
「だって叔母さん来てるの分かってたし、いざとなったら、瞬間移動で行けば大丈夫じゃない!」
「そこら辺が甘いのよねぇ。それに、
寧樹には、このサント・ネイジュの正体が分かっているのだろう。萌香にはそう感じられた。それも、2人は見知った関係らしい。
「あ、ご免、萌香。話が見えないよね……。叔母さん、もう良いよ。正体を表しても」
「あら、良いの? 萌香ちゃん、吃驚するんじゃない?」
寧樹は答えなかったが、表情で通じたのだろう。もう1人のネイジュは、その答えを待たずネイジュの変身を解いた。そして、その正体とは、彼女の宿敵である筈の大悪魔女帝その人であったのだ。