魅了する甘い香り(5)
文字数 1,548文字
倉庫内部を探っていた風祭隊員が、小田原隊長に状況を説明する。
「間違いありません。どうやらここは異星人テロリストのアジトの一つらしいですね。男が一人拘束され、捕まっています」
それを聞いて、小田原隊長の脇にいた湯本隊員が無駄口を挟む。
「それにしても、どうやって彼女、こんな場所を見つけたんだろう?」
恐らく、その疑問に答えられるのは、寧樹の他には、大悪魔女帝以外いないであろう。なんと寧樹は、サント・ネイジュに変身した直後に、それを確認していたのである。
光に包まれた萌香の姿は、光のベールが収まると別人、魔法少女に変わっていた。
「私はサント・ネイジュ。あなたがたが、塔野さんを使って入生田萌香さんを誘い出したのはもう分かっているのよ! さぁ、塔野さんのお父様をどこに隠したのか、今すぐ白状なさい!」
「そこまで分かっているとは……。だが、その様なこと、言う筈がないであろう!」
火取志郎が、そう返事をする。どうやら、この火取志郎と云う男が、敵のリーダー格の様だ。だが、それを聞いた寧樹は、してやったりとばかりに北叟笑む。
寧樹は、相手の心の声を聞くことが出来るのだ。志郎は寧樹に質問され、口にこそ出さなかったが、思わず頭の中でそれを考えてしまっていた。そして寧樹は、大悪魔の能力を用い、一時間ほど前の自分に、塔野氏の拉致されている場所を伝え、放課後直後の寧樹がそれを宮城野に伝言したのである。
「よし! これでOK。じゃ、後は萌香に任せるね」
寧樹は、心の中でそう言って、身体の制御を萌香に返した。勿論、萌香には何がOKなのかは分からない。それでも、これ迄は寧樹が仕切っていたので、少し退屈していたのだ。ひと暴れ出来るのは不満でない。
だが、単純に殴り掛かるほど、今の萌香は子供ではなかった。
「あなた方、この様なことをして、異星人の立場が良くなると、本当にお思いになさってるの?」
「何を言っておるのかな? 我々は異星人テロリストと呼ばれている連中とは違うのだぞ。我々はこの星を地球人、異星人関係無く支配してやろうとしておるのだ!!」
萌香は思わず溜息をついてしまう。
こいつは異星人テロリストとか、異星人の排斥論者とか以上に困った連中、侵略者と云う誇大妄想狂たちだ……。
「ハッキリ申しますけど、その様なこと出来るとは思えませんわ。あなた方、どれ程の戦力で侵略なさろうって仰るの?」
「フフフフフ」
彼は答えなかった。だが、彼の心の声は明確に萌香の心の中に響いていた。
「驚け。我々にはヒッコリーホーンドがある。宇宙船とか通常兵器には対策もあるだろうが、巨大生物にはどうかな……」
湾岸地区での塔野佐和子の父救出作戦は、既に敢行されていた。
一気に全員で倉庫に突入し、銃を構えて相手の動きを制して、拉致されている男性を救出するのだ。
作戦は成功したかに見えた。いや、実際には男性の救出には成功したのであるから、失敗と云う訳ではない。突入直後、5名程の人間が不意を衝かれて動きを止めた瞬間、小田原隊長が、縛られ椅子に座らされていた塔野氏に素早く近づいて、彼を確保したのだ。
後は犯人全員を逮捕すれば良い。いや、既に自分たちが銃口を向けていて、敵の動きを制しているのだ。逮捕したも最早同然ではないか。
誰もが、そう思っていた。
だから、この状態で相手が抵抗してくるなどとは、誰も予想だにしていなかった。だが、彼らは何も武器を手にしていないにも関わらず、銃を向けていた板橋隊員と湯本隊員に無謀にも襲いかかって来たのである。
板橋、湯本、両隊員は丸腰の相手に発砲するのを流石に躊躇する。それが隙に繋がったのだろう。二人が発砲した時には、既に相手に手首を制せられ、弾丸は天井を突き抜ける方向に飛んでいたのであった。
「間違いありません。どうやらここは異星人テロリストのアジトの一つらしいですね。男が一人拘束され、捕まっています」
それを聞いて、小田原隊長の脇にいた湯本隊員が無駄口を挟む。
「それにしても、どうやって彼女、こんな場所を見つけたんだろう?」
恐らく、その疑問に答えられるのは、寧樹の他には、大悪魔女帝以外いないであろう。なんと寧樹は、サント・ネイジュに変身した直後に、それを確認していたのである。
光に包まれた萌香の姿は、光のベールが収まると別人、魔法少女に変わっていた。
「私はサント・ネイジュ。あなたがたが、塔野さんを使って入生田萌香さんを誘い出したのはもう分かっているのよ! さぁ、塔野さんのお父様をどこに隠したのか、今すぐ白状なさい!」
「そこまで分かっているとは……。だが、その様なこと、言う筈がないであろう!」
火取志郎が、そう返事をする。どうやら、この火取志郎と云う男が、敵のリーダー格の様だ。だが、それを聞いた寧樹は、してやったりとばかりに北叟笑む。
寧樹は、相手の心の声を聞くことが出来るのだ。志郎は寧樹に質問され、口にこそ出さなかったが、思わず頭の中でそれを考えてしまっていた。そして寧樹は、大悪魔の能力を用い、一時間ほど前の自分に、塔野氏の拉致されている場所を伝え、放課後直後の寧樹がそれを宮城野に伝言したのである。
「よし! これでOK。じゃ、後は萌香に任せるね」
寧樹は、心の中でそう言って、身体の制御を萌香に返した。勿論、萌香には何がOKなのかは分からない。それでも、これ迄は寧樹が仕切っていたので、少し退屈していたのだ。ひと暴れ出来るのは不満でない。
だが、単純に殴り掛かるほど、今の萌香は子供ではなかった。
「あなた方、この様なことをして、異星人の立場が良くなると、本当にお思いになさってるの?」
「何を言っておるのかな? 我々は異星人テロリストと呼ばれている連中とは違うのだぞ。我々はこの星を地球人、異星人関係無く支配してやろうとしておるのだ!!」
萌香は思わず溜息をついてしまう。
こいつは異星人テロリストとか、異星人の排斥論者とか以上に困った連中、侵略者と云う誇大妄想狂たちだ……。
「ハッキリ申しますけど、その様なこと出来るとは思えませんわ。あなた方、どれ程の戦力で侵略なさろうって仰るの?」
「フフフフフ」
彼は答えなかった。だが、彼の心の声は明確に萌香の心の中に響いていた。
「驚け。我々にはヒッコリーホーンドがある。宇宙船とか通常兵器には対策もあるだろうが、巨大生物にはどうかな……」
湾岸地区での塔野佐和子の父救出作戦は、既に敢行されていた。
一気に全員で倉庫に突入し、銃を構えて相手の動きを制して、拉致されている男性を救出するのだ。
作戦は成功したかに見えた。いや、実際には男性の救出には成功したのであるから、失敗と云う訳ではない。突入直後、5名程の人間が不意を衝かれて動きを止めた瞬間、小田原隊長が、縛られ椅子に座らされていた塔野氏に素早く近づいて、彼を確保したのだ。
後は犯人全員を逮捕すれば良い。いや、既に自分たちが銃口を向けていて、敵の動きを制しているのだ。逮捕したも最早同然ではないか。
誰もが、そう思っていた。
だから、この状態で相手が抵抗してくるなどとは、誰も予想だにしていなかった。だが、彼らは何も武器を手にしていないにも関わらず、銃を向けていた板橋隊員と湯本隊員に無謀にも襲いかかって来たのである。
板橋、湯本、両隊員は丸腰の相手に発砲するのを流石に躊躇する。それが隙に繋がったのだろう。二人が発砲した時には、既に相手に手首を制せられ、弾丸は天井を突き抜ける方向に飛んでいたのであった。