魅了する甘い香り(2)
文字数 1,452文字
塔野佐和子も家族の為に闘っていると聞いて、萌香も少し怒りが治まってきた。彼女も嫌々ながら、父親の為に大っ嫌いな萌香お嬢様におべっかを使い続けていたのだ。
親の職業の関係で、偉くも何ともない相手にペコペコしなければならない……。彼女も彼女なりに口惜しかったに違いない。
そんなことを考えていた萌香に、少しだけ寧樹がフォローをする。
「昔の萌香と付き合うのは腹立たしかったかも知れないけどさ、今の萌香なら、親の七光りなんか無くても、一緒に居たいとみんな思うだろうし、私は萌香の友だちの心算よ」
「ありがとう、寧樹。お世辞にしても嬉しいですわ」
「お世辞じゃないわよ。ほら、私だけじゃない。あっちにいる彼女も、萌香のことを心配してるみたいだよ」
教室の前の方で、片平乙女が心配そうに萌香のことを見ている。そう、乙女は萌香のことを1人の人間として認めてくれている。萌香にはそう感じられるし、萌香も乙女のことを尊敬できる友人だと思っていた。
そう、友人。
萌香は友人など不要と考えていたのだが、本当の友だちと言っていい人間が出来たのだ。これは萌香にも驚くべきことだった。
「お願いしますわ。入生田さん」
萌香は我に返り、落ち着きを取り戻していた。そう、罠ならば受けて立とうではないか! サント・ネイジュは何も怖れはしないのだ。彼女は、心配そうにしている乙女の目を見て微笑んだ。そして、彼女に向かって大きく頷く。
「いいわ。そのご招待受けましょう……。で、どこで待ち合せれば宜しいかしら?」
萌香は胸を張って、塔野佐和子にそう答えていた。
移動は塔野佐和子が呼んだハイヤーで行われた。行先は塔野に任せている。萌香は後部座席に2人の元取り巻きに挟まれて座っていた。そして、手首の腕輪は既に見える状態にして嵌めてある。
車に乗る前、片平乙女から「止めた方が良いわよ」と言われたのだが、萌香はそれに対し「ご心配は要りませんわ」と言った後で、彼女にそっとメモを手渡し、塔野に気付かれない様に耳打ちをしていた。
「片平さん、10時にわたくしに電話を掛けて下さらない? もし、わたくしが未だ帰っていない様なら、直接こちらにも電話してくださらないかしら? 宜しくお願いしますわ」
萌香が手渡したメモには、異星人討伐隊の小田原隊長の電話番号が書かれていた。
乙女は萌香の顔を見た。そして、乙女も無言で小さく頷いたのだった。
だが、萌香は思う。あれは乙女を納得させる為だけのものだと。
自分が何も考えず、塔野に誘われて合コンに行くのではないと彼女に納得して貰いたかったのだ。乙女ならば、自分が何かをしていることに気付いている筈だ。彼女には余計心配させることになるかも知れないが、昔の自分に戻ったのではないと、乙女に信じて貰いたかったのだ……。
「だったら、心配させない様に、10時には帰っていないとね」
萌香は寧樹の言葉に、心の中で頷いていた。
「ところで、敵は大悪魔女帝ですの?」
「ご免、叔母さんと違って、私の危険察知じゃ正確な危機内容までは分からないのよ。でもね、多分違うわ。彼女なら、萌香が出勤している日に事を起こす筈だもん。恐らく敵は異星人テロリストね。異星人討伐隊の本業の方よ」
「異星人? わたくしたち、異星人と仲良くしなくちゃいけませんのよね。戦ったりしたら、拙いのではありませんこと?」
「向うから来るなら話は別よ。土着の人間だろうが、異星人だろうが、意味も無く攻撃してくる様な奴ら、平和の敵でしょう? 懲らしめてやらなくちゃ! ね!」
親の職業の関係で、偉くも何ともない相手にペコペコしなければならない……。彼女も彼女なりに口惜しかったに違いない。
そんなことを考えていた萌香に、少しだけ寧樹がフォローをする。
「昔の萌香と付き合うのは腹立たしかったかも知れないけどさ、今の萌香なら、親の七光りなんか無くても、一緒に居たいとみんな思うだろうし、私は萌香の友だちの心算よ」
「ありがとう、寧樹。お世辞にしても嬉しいですわ」
「お世辞じゃないわよ。ほら、私だけじゃない。あっちにいる彼女も、萌香のことを心配してるみたいだよ」
教室の前の方で、片平乙女が心配そうに萌香のことを見ている。そう、乙女は萌香のことを1人の人間として認めてくれている。萌香にはそう感じられるし、萌香も乙女のことを尊敬できる友人だと思っていた。
そう、友人。
萌香は友人など不要と考えていたのだが、本当の友だちと言っていい人間が出来たのだ。これは萌香にも驚くべきことだった。
「お願いしますわ。入生田さん」
萌香は我に返り、落ち着きを取り戻していた。そう、罠ならば受けて立とうではないか! サント・ネイジュは何も怖れはしないのだ。彼女は、心配そうにしている乙女の目を見て微笑んだ。そして、彼女に向かって大きく頷く。
「いいわ。そのご招待受けましょう……。で、どこで待ち合せれば宜しいかしら?」
萌香は胸を張って、塔野佐和子にそう答えていた。
移動は塔野佐和子が呼んだハイヤーで行われた。行先は塔野に任せている。萌香は後部座席に2人の元取り巻きに挟まれて座っていた。そして、手首の腕輪は既に見える状態にして嵌めてある。
車に乗る前、片平乙女から「止めた方が良いわよ」と言われたのだが、萌香はそれに対し「ご心配は要りませんわ」と言った後で、彼女にそっとメモを手渡し、塔野に気付かれない様に耳打ちをしていた。
「片平さん、10時にわたくしに電話を掛けて下さらない? もし、わたくしが未だ帰っていない様なら、直接こちらにも電話してくださらないかしら? 宜しくお願いしますわ」
萌香が手渡したメモには、異星人討伐隊の小田原隊長の電話番号が書かれていた。
乙女は萌香の顔を見た。そして、乙女も無言で小さく頷いたのだった。
だが、萌香は思う。あれは乙女を納得させる為だけのものだと。
自分が何も考えず、塔野に誘われて合コンに行くのではないと彼女に納得して貰いたかったのだ。乙女ならば、自分が何かをしていることに気付いている筈だ。彼女には余計心配させることになるかも知れないが、昔の自分に戻ったのではないと、乙女に信じて貰いたかったのだ……。
「だったら、心配させない様に、10時には帰っていないとね」
萌香は寧樹の言葉に、心の中で頷いていた。
「ところで、敵は大悪魔女帝ですの?」
「ご免、叔母さんと違って、私の危険察知じゃ正確な危機内容までは分からないのよ。でもね、多分違うわ。彼女なら、萌香が出勤している日に事を起こす筈だもん。恐らく敵は異星人テロリストね。異星人討伐隊の本業の方よ」
「異星人? わたくしたち、異星人と仲良くしなくちゃいけませんのよね。戦ったりしたら、拙いのではありませんこと?」
「向うから来るなら話は別よ。土着の人間だろうが、異星人だろうが、意味も無く攻撃してくる様な奴ら、平和の敵でしょう? 懲らしめてやらなくちゃ! ね!」