剛霊武獣(9)
文字数 1,537文字
その夜、家に帰って部屋に籠った萌香は、寧樹と今日の事について話し合うことにしていた。別に抗議しようと云う訳では無い。
「寧樹、奴らの狙いについて話しがしたいんだけど……」
萌香は、自分の左手首を、右の人差し指の爪で弾いた。すると、金属音が響き、それ迄無かった金の腕輪が萌香の手首に現れる。
「どうしたの?」
「あの剛霊武 獣、『私を狙っている』って言ってましたわ……」
「そうらしいわね。何かご不満?」
「わたくし、異星人テロリストに狙われていますのよ。寧樹も、少し位は心配して下さっても、良ろしくはなくて?」
萌香は少し笑い、心の中の寧樹に不満を訴える。
「何を今更……」
「勿論、狙われるのは覚悟の上ですけど、わたくしが隊に出られる日を選んで活動しているとも言ってましたわ。それって、わたくしの行動が、相手に筒抜けってことじゃありませんこと?」
「そうね。休校日とか、学校の行事予定を知られているのかも知れないし、萌香がスーツ姿で出勤しているのを、どこかで監視しているのかも知れない」
「それにしても、あたくしの出勤日を選ぶなんて、随分だと思いますわ!」
「寧ろ、好都合じゃないの? 期末試験とか、学校に居なきゃならない時、緊急呼び出しされずに済むじゃない!」
「それはそうですけど……、学校の休みとかの情報が、敵方に漏れているのだとしたら、問題じゃありませんこと?」
「今の所は大丈夫だけど、学校にいる萌香が狙われるようだと少し問題ね。萌香の出勤を確認しているだけなら良いけどね」
「それも嫌ですわ……。どこからか、誰かに監視されているなんて……」
「お風呂まで覗かれていたりして」
「止めて下さい!」
萌香が本気で怒鳴ったので、寧樹は苦笑しながらも萌香に謝った。
「ごめん、ごめん、冗談よ」
「冗談だと良いのですけど……」
「どうしても気になるなら、その時は腕輪を外してみて。私の能力で、敵が監視しているかどうか程度なら分かるから」
「腕輪を? それでは、サント・ネイジュに変身してしまうのではなくて?」
「腕輪は変身アイテムじゃないわよ。私の悪魔能力を封じる為のもの。これをしていると、私は人間並みの能力しか発揮できないのよ。勿論、変身は悪魔能力だから、腕輪をしている間は擬態できないんだけどね」
「そうでしたの……。でも、入隊試験の時とか蝙蝠型剛霊武 獣と闘った時って、腕輪はしたままではなかったですか?」
「あ、あれは人間レベルの能力よ。悪魔能力なんか無くたって、あれくらい出来るわよ」
「ええ!」
「ってのは嘘。特殊能力は無理だけど、運動能力や反射神経なんかは、腕輪していてもまだ人間よりも上だから……。でも気を付けてね、皮膚硬化は出来ないからね。銃で撃たれたりしたら駄目よ。痛いもん!」
「痛いから……だけですのね。で、でも、どうして態々、能力を封じる腕輪なんかしているのです? 別に変身してしまう訳でも、ございませんのでしょう?」
「まず、悪魔能力を使うのには生気が必要なの。これは今、全部萌香の生気で賄われているわ。悪魔能力全開だと、萌香は体育会系男子大学生並みの食事量が必要になるわよ。それでも良いの?」
萌香の表情が引き攣る。
「次に、悪魔能力は自動発動するものがあって、危険感知とかは危険がある度に気分が悪くなるし、私の読心なんか、何でもかんでも聞こえてくるのよ。五月蝿いったらありゃしない。萌香だって聞きたくないでしょう? 目の前の人が自分の悪口考えているのを」
そう言えば、前に宮城野や塔野佐和子あたりが悪口を考えているのを、萌香も聞いたことがある。確かにそんなもの、態々聞く必要なんてないと萌香も思う。
「悪魔能力って、それ程便利なものじゃございませんのね……」
萌香も、そう思わずにはいられない。
「寧樹、奴らの狙いについて話しがしたいんだけど……」
萌香は、自分の左手首を、右の人差し指の爪で弾いた。すると、金属音が響き、それ迄無かった金の腕輪が萌香の手首に現れる。
「どうしたの?」
「あの
「そうらしいわね。何かご不満?」
「わたくし、異星人テロリストに狙われていますのよ。寧樹も、少し位は心配して下さっても、良ろしくはなくて?」
萌香は少し笑い、心の中の寧樹に不満を訴える。
「何を今更……」
「勿論、狙われるのは覚悟の上ですけど、わたくしが隊に出られる日を選んで活動しているとも言ってましたわ。それって、わたくしの行動が、相手に筒抜けってことじゃありませんこと?」
「そうね。休校日とか、学校の行事予定を知られているのかも知れないし、萌香がスーツ姿で出勤しているのを、どこかで監視しているのかも知れない」
「それにしても、あたくしの出勤日を選ぶなんて、随分だと思いますわ!」
「寧ろ、好都合じゃないの? 期末試験とか、学校に居なきゃならない時、緊急呼び出しされずに済むじゃない!」
「それはそうですけど……、学校の休みとかの情報が、敵方に漏れているのだとしたら、問題じゃありませんこと?」
「今の所は大丈夫だけど、学校にいる萌香が狙われるようだと少し問題ね。萌香の出勤を確認しているだけなら良いけどね」
「それも嫌ですわ……。どこからか、誰かに監視されているなんて……」
「お風呂まで覗かれていたりして」
「止めて下さい!」
萌香が本気で怒鳴ったので、寧樹は苦笑しながらも萌香に謝った。
「ごめん、ごめん、冗談よ」
「冗談だと良いのですけど……」
「どうしても気になるなら、その時は腕輪を外してみて。私の能力で、敵が監視しているかどうか程度なら分かるから」
「腕輪を? それでは、サント・ネイジュに変身してしまうのではなくて?」
「腕輪は変身アイテムじゃないわよ。私の悪魔能力を封じる為のもの。これをしていると、私は人間並みの能力しか発揮できないのよ。勿論、変身は悪魔能力だから、腕輪をしている間は擬態できないんだけどね」
「そうでしたの……。でも、入隊試験の時とか蝙蝠型
「あ、あれは人間レベルの能力よ。悪魔能力なんか無くたって、あれくらい出来るわよ」
「ええ!」
「ってのは嘘。特殊能力は無理だけど、運動能力や反射神経なんかは、腕輪していてもまだ人間よりも上だから……。でも気を付けてね、皮膚硬化は出来ないからね。銃で撃たれたりしたら駄目よ。痛いもん!」
「痛いから……だけですのね。で、でも、どうして態々、能力を封じる腕輪なんかしているのです? 別に変身してしまう訳でも、ございませんのでしょう?」
「まず、悪魔能力を使うのには生気が必要なの。これは今、全部萌香の生気で賄われているわ。悪魔能力全開だと、萌香は体育会系男子大学生並みの食事量が必要になるわよ。それでも良いの?」
萌香の表情が引き攣る。
「次に、悪魔能力は自動発動するものがあって、危険感知とかは危険がある度に気分が悪くなるし、私の読心なんか、何でもかんでも聞こえてくるのよ。五月蝿いったらありゃしない。萌香だって聞きたくないでしょう? 目の前の人が自分の悪口考えているのを」
そう言えば、前に宮城野や塔野佐和子あたりが悪口を考えているのを、萌香も聞いたことがある。確かにそんなもの、態々聞く必要なんてないと萌香も思う。
「悪魔能力って、それ程便利なものじゃございませんのね……」
萌香も、そう思わずにはいられない。