とある地方都市にて(1)
文字数 1,559文字
大悪魔女帝は、執事あるいは副官と名乗っていたブラウと云う大悪魔に、しつこく魔法少女の正体について問い詰められていた。
「どうしてサント・ネイジュの正体が、入生田萌香などと嘘を吐いたのですか?!」
「あら、悪魔は嘘吐きなものよ……」
別に嘘を吐いた訳ではないと、大悪魔女帝は言おうかとも思ったが、面倒くさいので止めておいた。どうせ説明したって、そう信じ込んでいるブラウが納得する筈はない。
それに、新田有希がそれを隠したいと云うのなら、まぁそれでも良いだろうと女帝は思っている。剛霊武 獣に狙われ続けたとしても、彼女が負けることなどは無いだろうが、新田有希も入生田萌香と2人、のんびりと学生生活を楽しもうと、敢えて正体を隠しているのかも知れないからだ。
「私はこれより、新田有希なる人間を探し出してやろうと思っています。新田と云う姓から、日本人であることは間違いないでしょう。ならば、有希と言う女性に限定すれば、決して探し出せないことは無い筈です」
ブラウは大悪魔女帝にそう言った。
女帝は思う……。本物の新田有希が見つかる筈はないと。彼女はこの世界に存在しないのだから。だが、同姓同名の人間ならいないとも限らない。そうだった場合、その人間にしてみれば、突然に大悪魔に襲われたりして、とんだ災難に違いない。
しかし、ブラウに「有希は存在しない」と言っても、それを信用しないのは、これも間違いない。ならば、新田有希本人に責任を取らせ、「ブラウが新田有希を探している」と云う情報を流すのが正解だろう。
「分かりました、ブラウ。あなたにお任せしましょう。ですが、新田有希は見つからないと思いますよ……」
それは予知でも何でもなく、ただ、大悪魔女帝の願いでしかなかった。しかし、その願いも虚しく、新田有希と言う名の少女は見つかってしまうのである。
学校の帰り、入生田萌香はセンチュリーの車内で、腕時計型通信機に届いたメールを確認した。自分の隣には早雲山が座っていたが、彼は腕を組んだまま目を閉じているので、覗かれる心配などはない。まぁ覗いても、覗き見防止モードになっているので、見えはしないのだが……。
萌香はメールを見て、直ぐに腕輪を出現させた。どうにも理解できない記号の羅列メールだったのである。
「寧樹、これは何だと思われますか?」
「あ、ああ? これ、私の叔母さんからのメールだわ」
「寧樹の叔母様? どうして、討伐隊の通信機のアドレスをご存知だったのでしょう? ところで、叔母様は何と仰ってますの?」
「なんか、例の変な執事悪魔が新田有希って娘を狙ってるんだって。だから、責任もって守れって言ってるわよ」
「新田有希って、寧樹のことではありませんか? どうして寧樹を守らなければなりませんの? 私に始めて会った時、憑依してらっしゃらなかった様ですけど、十分にお強かったと思いましたけれど……」
萌香には全く訳が分からない。
「この間、私の名前を明かしたでしょう? その同姓同名の人が、間違って狙われるんじゃないかってことみたいね」
「もう。寧樹が自分の名前を仰るからじゃありませんか! 入生田萌香って名乗っていれば、何も面倒なことなど在りはしませんでしたのに……」
「仕方ないでしょう、行き掛かり上そうなったのだから……。異星人討伐隊のコンピュータで、新田有希って人物がいないか、検索しましょう」
萌香は「仕方ないなぁ」と思った。だが、そんな寧樹との日々も、何だか最近では楽しく感じられるのも間違いなかった。
予定外で、討伐隊に出隊した萌香は、板橋隊員に頼み、新田有希なる人物が存在しないか、討伐隊のデータベースに検索を掛けて貰った。すると、静岡県にとある地方都市に、新田有希と云う名の、20になったばかりの女性がいることが分かったのである。
「どうしてサント・ネイジュの正体が、入生田萌香などと嘘を吐いたのですか?!」
「あら、悪魔は嘘吐きなものよ……」
別に嘘を吐いた訳ではないと、大悪魔女帝は言おうかとも思ったが、面倒くさいので止めておいた。どうせ説明したって、そう信じ込んでいるブラウが納得する筈はない。
それに、新田有希がそれを隠したいと云うのなら、まぁそれでも良いだろうと女帝は思っている。
「私はこれより、新田有希なる人間を探し出してやろうと思っています。新田と云う姓から、日本人であることは間違いないでしょう。ならば、有希と言う女性に限定すれば、決して探し出せないことは無い筈です」
ブラウは大悪魔女帝にそう言った。
女帝は思う……。本物の新田有希が見つかる筈はないと。彼女はこの世界に存在しないのだから。だが、同姓同名の人間ならいないとも限らない。そうだった場合、その人間にしてみれば、突然に大悪魔に襲われたりして、とんだ災難に違いない。
しかし、ブラウに「有希は存在しない」と言っても、それを信用しないのは、これも間違いない。ならば、新田有希本人に責任を取らせ、「ブラウが新田有希を探している」と云う情報を流すのが正解だろう。
「分かりました、ブラウ。あなたにお任せしましょう。ですが、新田有希は見つからないと思いますよ……」
それは予知でも何でもなく、ただ、大悪魔女帝の願いでしかなかった。しかし、その願いも虚しく、新田有希と言う名の少女は見つかってしまうのである。
学校の帰り、入生田萌香はセンチュリーの車内で、腕時計型通信機に届いたメールを確認した。自分の隣には早雲山が座っていたが、彼は腕を組んだまま目を閉じているので、覗かれる心配などはない。まぁ覗いても、覗き見防止モードになっているので、見えはしないのだが……。
萌香はメールを見て、直ぐに腕輪を出現させた。どうにも理解できない記号の羅列メールだったのである。
「寧樹、これは何だと思われますか?」
「あ、ああ? これ、私の叔母さんからのメールだわ」
「寧樹の叔母様? どうして、討伐隊の通信機のアドレスをご存知だったのでしょう? ところで、叔母様は何と仰ってますの?」
「なんか、例の変な執事悪魔が新田有希って娘を狙ってるんだって。だから、責任もって守れって言ってるわよ」
「新田有希って、寧樹のことではありませんか? どうして寧樹を守らなければなりませんの? 私に始めて会った時、憑依してらっしゃらなかった様ですけど、十分にお強かったと思いましたけれど……」
萌香には全く訳が分からない。
「この間、私の名前を明かしたでしょう? その同姓同名の人が、間違って狙われるんじゃないかってことみたいね」
「もう。寧樹が自分の名前を仰るからじゃありませんか! 入生田萌香って名乗っていれば、何も面倒なことなど在りはしませんでしたのに……」
「仕方ないでしょう、行き掛かり上そうなったのだから……。異星人討伐隊のコンピュータで、新田有希って人物がいないか、検索しましょう」
萌香は「仕方ないなぁ」と思った。だが、そんな寧樹との日々も、何だか最近では楽しく感じられるのも間違いなかった。
予定外で、討伐隊に出隊した萌香は、板橋隊員に頼み、新田有希なる人物が存在しないか、討伐隊のデータベースに検索を掛けて貰った。すると、静岡県にとある地方都市に、新田有希と云う名の、20になったばかりの女性がいることが分かったのである。