誰なのか(8)
文字数 1,568文字
サント・ネイジュが交差点の上空に移動した時には、もう、既に剛霊武 獣は倒される寸前の状況になっていた。
マンモスの様な怪獣は、鼻は斬り落とされ牙も一本砕かれており、既に血塗れの瀕死状態に追い込まれている。後足も引き摺っており、その骨も折られているに違いなかった。
剛霊武 獣の鼻は、湯本隊員が得意の剣で斬り落としたものであろうし、牙は風祭隊員が後方から狙撃して折ったものに違いない。
そして、足を折ったのは、恐らく小田原隊長の関節技であろうと萌香は思うのだが、それにしても、剛霊武獣の足を素手で折るなんて、何と云う怪力なのだろうか?
少なくとも、相手はマンモスの体を持つ敵であり、大悪魔が憑依することで、大悪魔の回復力と攻撃力が加味されている超怪獣の筈であった。
それを、狙撃して牙を折る風祭隊員も凄いし、剣を使って長い鼻を斬り落とした湯本隊員も、尋常な腕ではないと思うのだが、素手で立ち向かって、あの太い足の骨を折ってしまう小田原隊長は、あまりに人間離れした能力ではないかと萌香は思う。
「凄いわね、小田原隊長」
寧樹の言葉に、萌香は返す言葉がない。
「これじゃ、ネイジュの出番は無いわね。変身を解いて帰りましょうか」
だが、寧樹の軽口にも、萌香は笑みを見せなかった。それ程に、小田原隊長の動きの速さと力の強さは際立っていたのだ。
「寧樹! お、小田原隊長って、一体、何者なのですの?」
「彼に言わせると、人間には2種類あって、普通の人間と特殊能力を持った人間があるそうよ。でね、彼は特殊能力を持った人間なんだって……」
「それにしても……」
この2人の会話は、ある人物が突然現れた為に、ここで中断された。
「大悪魔女帝が……、現れましたわ」
「ふ~ん、あれが大悪魔女帝? 成程ね」
そう、剛霊武 獣と異星人討伐隊の戦いに割って入ったのは、黒革のキャットスーツに身を包んだ仮面の女性、自称大悪魔女帝その人であった。
彼女は口元に笑みを浮かべながら、マンモスの怪物に声を掛ける。
「もっと早く逃げなければ駄目よ。あなた、このままじゃ、殺されちゃうじゃない」
そして、呆然と見守る異星人討伐隊を前に、剛霊武 獣の肩に手を掛けた。恐らく、それで魔法を掛けたのであろう。マンモスの剛霊武 獣は『瞬間移送』させられ、その姿を忽然と消し去った。
それを見ていた萌香が、まず十メートルもの上空から滑空して、大悪魔女帝の顔面に跳び蹴りを入れようとする。
大悪魔女帝は、その様なもの予期していたとばかりに、2歩後に下がって攻撃を躱した。萌香は、弾みでアスファルトに大きな窪みを作ってしまう。
だが萌香は、そんなことは気にもせず、反転し向きを変え、大悪魔女帝に正対し、攻撃の型を採ってから口上を述べた。
「氷原に咲く一輪の可憐な花、聖なる白き乙女、サント・”アルウェン”・ネイジュ! 大悪魔女帝、わたくしがお相手しますことよ。お覚悟なさることね!」
「あらあら、格好いいわね。じゃ、少しばかり遊んであげましょうか? 掛かってらっしゃい!」
大悪魔女帝は、子供の相手でもする様に余裕を持って返事を返した。これには、少し萌香もカチンときた。
そこで、寧樹がいつもやっている様に素手で殴りかかってみる。これに対し、大悪魔女帝はガードもせず、鼻歌でも歌っているかの様に、ステップワークだけで躱した。
「それじゃ、無理かな……。次は?」
萌香は、馬鹿にされると云うことに慣れていない。こうなると、普通人以上に冷静さを失ってしまう。
「寧樹。悪魔の技でも、魔法でも良いですから、あの無礼な人を、少し懲らしめて頂けませんこと!」
「OK。じゃ、こんなのどうかな?」
ネイジュは印を結び、呪文を唱えた。そして、全く警戒を見せない大悪魔女帝に、彼女の一番得意とする攻撃呪文を放ったのである。
『極光乱舞……』
マンモスの様な怪獣は、鼻は斬り落とされ牙も一本砕かれており、既に血塗れの瀕死状態に追い込まれている。後足も引き摺っており、その骨も折られているに違いなかった。
そして、足を折ったのは、恐らく小田原隊長の関節技であろうと萌香は思うのだが、それにしても、剛霊武獣の足を素手で折るなんて、何と云う怪力なのだろうか?
少なくとも、相手はマンモスの体を持つ敵であり、大悪魔が憑依することで、大悪魔の回復力と攻撃力が加味されている超怪獣の筈であった。
それを、狙撃して牙を折る風祭隊員も凄いし、剣を使って長い鼻を斬り落とした湯本隊員も、尋常な腕ではないと思うのだが、素手で立ち向かって、あの太い足の骨を折ってしまう小田原隊長は、あまりに人間離れした能力ではないかと萌香は思う。
「凄いわね、小田原隊長」
寧樹の言葉に、萌香は返す言葉がない。
「これじゃ、ネイジュの出番は無いわね。変身を解いて帰りましょうか」
だが、寧樹の軽口にも、萌香は笑みを見せなかった。それ程に、小田原隊長の動きの速さと力の強さは際立っていたのだ。
「寧樹! お、小田原隊長って、一体、何者なのですの?」
「彼に言わせると、人間には2種類あって、普通の人間と特殊能力を持った人間があるそうよ。でね、彼は特殊能力を持った人間なんだって……」
「それにしても……」
この2人の会話は、ある人物が突然現れた為に、ここで中断された。
「大悪魔女帝が……、現れましたわ」
「ふ~ん、あれが大悪魔女帝? 成程ね」
そう、
彼女は口元に笑みを浮かべながら、マンモスの怪物に声を掛ける。
「もっと早く逃げなければ駄目よ。あなた、このままじゃ、殺されちゃうじゃない」
そして、呆然と見守る異星人討伐隊を前に、
それを見ていた萌香が、まず十メートルもの上空から滑空して、大悪魔女帝の顔面に跳び蹴りを入れようとする。
大悪魔女帝は、その様なもの予期していたとばかりに、2歩後に下がって攻撃を躱した。萌香は、弾みでアスファルトに大きな窪みを作ってしまう。
だが萌香は、そんなことは気にもせず、反転し向きを変え、大悪魔女帝に正対し、攻撃の型を採ってから口上を述べた。
「氷原に咲く一輪の可憐な花、聖なる白き乙女、サント・”アルウェン”・ネイジュ! 大悪魔女帝、わたくしがお相手しますことよ。お覚悟なさることね!」
「あらあら、格好いいわね。じゃ、少しばかり遊んであげましょうか? 掛かってらっしゃい!」
大悪魔女帝は、子供の相手でもする様に余裕を持って返事を返した。これには、少し萌香もカチンときた。
そこで、寧樹がいつもやっている様に素手で殴りかかってみる。これに対し、大悪魔女帝はガードもせず、鼻歌でも歌っているかの様に、ステップワークだけで躱した。
「それじゃ、無理かな……。次は?」
萌香は、馬鹿にされると云うことに慣れていない。こうなると、普通人以上に冷静さを失ってしまう。
「寧樹。悪魔の技でも、魔法でも良いですから、あの無礼な人を、少し懲らしめて頂けませんこと!」
「OK。じゃ、こんなのどうかな?」
ネイジュは印を結び、呪文を唱えた。そして、全く警戒を見せない大悪魔女帝に、彼女の一番得意とする攻撃呪文を放ったのである。
『極光乱舞……』