仮面舞踏会の終わり(7)
文字数 1,422文字
萌香は、異星人テロリストに襲われたあの日から、これ迄の経緯を全て隠さず説明していった。勿論、準備していなかった為、説明に過不足はあったが、それには皆が質問したり、寧樹が言葉を加えたりして萌香の話を補足していった。
未来の話に一番衝撃を受けたのは、重雄氏と板橋隊員だった。
「そ、そんな馬鹿な……」
「萌香の見た未来は、私が萌香に憑依した時点で変わっていると思うけどね」
寧樹の言葉を小田原隊長が引き継ぐ。
「だが、充分あり得る未来だな……」
それには、誰も言葉を継げなかった。
大悪魔女帝の提示したゲームについては、皆、寧樹と萌香ほどには驚いた様子を見せなかった。大悪魔女帝を知るものに取っては、確かに彼女なら言い出しそうなことであるし、彼女を知らないものに取っては、生意気な悪魔の信用ならない戯言であり、結局、大悪魔女帝を倒さねばならないことに変わりがないと思われたからだ。
それよりも寧ろ、人間側の政府機関が剛霊武 獣の製作に携わっていると言うことの方が皆に衝撃を与えていた。
「では、改めてご紹介しましょう。次世代SPA計画の提唱者にして、政府側超兵器SPA-2の開発担当責任者、入生田重雄氏を」
寧樹の言葉に、萌香は「嘘でしょう?!」としか言えなかった。
「入生田重雄氏が大悪魔女帝から剛霊武 獣の製作を持ちかけられた当人であり、大悪魔女帝と政府の窓口を請け負っていた人間側の人物でもあるのです。この為、彼は重国氏の政策秘書をする傍ら、この宇宙軍東京湾基地の研究開発室に勤務なされていたのです。入生田重雄さん、何か言いたいことはありますか?」
入生田重雄は明らかに狼狽えていた。だが、それは寧樹に正体をばらされたからではない。彼が人類の為と思ってやってきた、剛霊武 獣の製作や大悪魔女帝と組んで行ってきた数々の謀略が、結局大悪魔だけの為のものであり、彼は只、大悪魔に利用されていたと言うことにであった。
彼は声を絞りだす様に寧樹に尋ねた。
「そうだ……。だが、どうしてそれを知ったのだ? そして、どうして『羽根子が拷問を受けている』などと、大悪魔女帝が私に電話してきたのだ? お前と大悪魔女帝はグルなのか?」
「元々親戚だから、仲間って言えば仲間だけど、今回は敵同士ね。
私は擬態できるの……、大悪魔女帝にだってね。大悪魔女帝に擬態すれば、声紋も彼女と同じになるから、同じ声が出せるのよ。そうしないと、いくら擬態しても声が違ってばれちゃうでしょう?
あと、内線電話の番号だけど、覚えていないの? それは、あなたから聞いたのよ。食事でご一緒した時、テレパシーの呪文で『あれ、大悪魔女帝の内線番号って、幾つだったっけな?』って伝えてから、心の中を読んでね」
湯本隊員が呆れて口を挟む。
「なんだかなぁ……。結局、自分のことを包み隠さず話していたのは、僕だけだったってことか。それにしても、寧樹さんだっけ、まるでシャーロックホームズなみの推理だね。何でもお見通しなんだもん!」
「あら、そんなことないわよ。私は心の中を読めるから、誰も秘密を持つことが出来ないだけよ!」
実の所、新田有希の読心能力は、精々5メートル程度以内の距離で、正面30度の中にいる1人にしか通用しない。それも心を読むと言っても、対象が心の中で喋ったことを聞くだけである。そこで若し、嘘を思い浮かべられたら、有希には確認する手段がない。勿論、態々寧樹がそれを口にすることなどないのであるが……。
未来の話に一番衝撃を受けたのは、重雄氏と板橋隊員だった。
「そ、そんな馬鹿な……」
「萌香の見た未来は、私が萌香に憑依した時点で変わっていると思うけどね」
寧樹の言葉を小田原隊長が引き継ぐ。
「だが、充分あり得る未来だな……」
それには、誰も言葉を継げなかった。
大悪魔女帝の提示したゲームについては、皆、寧樹と萌香ほどには驚いた様子を見せなかった。大悪魔女帝を知るものに取っては、確かに彼女なら言い出しそうなことであるし、彼女を知らないものに取っては、生意気な悪魔の信用ならない戯言であり、結局、大悪魔女帝を倒さねばならないことに変わりがないと思われたからだ。
それよりも寧ろ、人間側の政府機関が
「では、改めてご紹介しましょう。次世代SPA計画の提唱者にして、政府側超兵器SPA-2の開発担当責任者、入生田重雄氏を」
寧樹の言葉に、萌香は「嘘でしょう?!」としか言えなかった。
「入生田重雄氏が大悪魔女帝から
入生田重雄は明らかに狼狽えていた。だが、それは寧樹に正体をばらされたからではない。彼が人類の為と思ってやってきた、
彼は声を絞りだす様に寧樹に尋ねた。
「そうだ……。だが、どうしてそれを知ったのだ? そして、どうして『羽根子が拷問を受けている』などと、大悪魔女帝が私に電話してきたのだ? お前と大悪魔女帝はグルなのか?」
「元々親戚だから、仲間って言えば仲間だけど、今回は敵同士ね。
私は擬態できるの……、大悪魔女帝にだってね。大悪魔女帝に擬態すれば、声紋も彼女と同じになるから、同じ声が出せるのよ。そうしないと、いくら擬態しても声が違ってばれちゃうでしょう?
あと、内線電話の番号だけど、覚えていないの? それは、あなたから聞いたのよ。食事でご一緒した時、テレパシーの呪文で『あれ、大悪魔女帝の内線番号って、幾つだったっけな?』って伝えてから、心の中を読んでね」
湯本隊員が呆れて口を挟む。
「なんだかなぁ……。結局、自分のことを包み隠さず話していたのは、僕だけだったってことか。それにしても、寧樹さんだっけ、まるでシャーロックホームズなみの推理だね。何でもお見通しなんだもん!」
「あら、そんなことないわよ。私は心の中を読めるから、誰も秘密を持つことが出来ないだけよ!」
実の所、新田有希の読心能力は、精々5メートル程度以内の距離で、正面30度の中にいる1人にしか通用しない。それも心を読むと言っても、対象が心の中で喋ったことを聞くだけである。そこで若し、嘘を思い浮かべられたら、有希には確認する手段がない。勿論、態々寧樹がそれを口にすることなどないのであるが……。