召喚されしもの(7)
文字数 1,769文字
東京湾、横須賀を過ぎた第2海堡付近。巨大な黒い影が、大きく右に迂回しながら海中を進んで行く。
その上空には『瞬間移動』で空中に現れ、そのまま空を飛んでいた人型の影があり、アジサシの様に巨大悪魔魚を討ち果たさんと、ジッと狙いを定めていた。
「どうやって倒すんだ? 光線砲か?」
「それは無理だね。光線砲じゃ、海面に反射して致命傷を与えられないよ」
「あなたは、アルトロじゃなくて、SPA-1本人ですね……」
「そうだよ。だが、純一と読んでくれよ。その変な記号じゃなくてさ!」
「じゃぁ、純一さん……。私たちは、どうしたら良いんですか?」
「難しいね。普通なら『極光乱舞』って呪文で氷結させて、『超無窮動』って技で高速に振動させ再生できない様にして粉砕するんだ。だけど、海中の敵に『極光乱舞』なんて掛けたら、海ごと氷っちまう……。そうなったら、海の生物や、東京湾に運航している船なんかにも影響を与えてしまうからね」
「だったら、どうするんですか?」
「面倒臭いけど、海の中から引きずり出すしかないだろうね……」
鈴木挑の意識も、アルトロの意識も言葉を失っていた。勿論、言いたいことはある。だが、呆れて物が言えなかったのだ。「相手は、長さ1000メートルもある怪獣なんですよ!」とは……。
昔の新田純一ならば、今の鈴木挑と同じ様に途方に暮れてしまっただろう。だが、今の彼には、それも出来ない話ではない。
彼は不安がる2人に、それが可能であることの説明を始めた。
「良く考えて見てくれ。妹……、大悪魔女帝は深海にレビアタンを召喚した。だが、そこからでは、幾らレビアタンでも、東京までに泳ぐとなると相当の時間が必要だ。マリアナ海溝から東京までは3000キロ近くあるからね。それでは、有希が勝負の決着を着けた後でも『瞬間移動』で十分に間に合ってしまう。それでは、レビアタンを呼び出して、君らを脅した意味がない」
「だから、東京湾の入口へと『瞬間移送』をしたのですね」
アルトロが説明を引き取る。
「その通り。妹は魔法で、あの長さ1キロもある怪獣を別の場所に移動させた。そして私は、妹と同じ魔法が使えるのだ」
「すると……」
「ああ。奴を海中から空に『瞬間移送』することだって、僕なら出来るのさ」
「どうやってやるんですか? 早くその呪文を、私たちに教えてください!!」
「アルトロ君、それは簡単ではないよ。そして、『瞬間移送』をすると略 同時に、『極光乱舞』と『超無窮動』を掛けなければならないんだ。これは僕でも簡単に出来ることでは無い。勿論、有希なら苦も無くやってのけるだろうけどね……。そこで、済まないが、2人とも、ここは僕に任せてくれないか?」
「私たちは構いませんが……」
「但し、耀子には内緒だぞ。あいつ、後でネチネチと五月蝿いからな……」
新田純一はそう言うと、直ぐさま身体の制御を引き取った。そして一気に3つの魔法の準備を始める。
『極光乱舞』は難易度が高い為、表呪文で気を練っていった。一方、比較的難易度の低い『瞬間移送』と『超無窮動』は、その裏で呪文を唱えること無しに気を練って魔法発動の準備を整えていく。彼らはこうして複数の魔法を同時に使うことが出来るのだ。
それは鈴木挑にも、アルトロにも無限に長い時間に感じられた。だが実は5秒も経ってはいない。その短い時間で、彼は全ての魔法準備を完了させ、『瞬間移送』から先ず発動させた。
レビヤタンの巨体が、突然に空中に出現する。彼が存在した分のスペースが海中に生まれ、海面下では渦潮が発生した。
空中では、彼らの頭上に巨大な鰻状の怪魚が、龍の様に水飛沫とともに静止した様に宙を舞っている。それが重力の影響を受けて、落下を始めると思われた……。だが、その瞬間、怪魚は眩い七色の光を放ち始め、一瞬にして冷凍食品と化したかの様に氷結する。『極光乱舞』だ。
だが、鈴木挑とアルトロが、その凍り付いた姿を正確に把握する前に、レビアタンの巨体は粉々に粉砕され、細かい氷の粒子となって海上へと振り落ちていった。
『超無窮動』で高速振動したレビアタンの身体は、氷結したまま砕かれ、振動した状態であったが為に、正確な位置に接続できず、再生することも叶わず死滅してしまうのだ。
「悪魔魚は、これで完全に滅ぼされた……」
アルトロはそれを確信した。
その上空には『瞬間移動』で空中に現れ、そのまま空を飛んでいた人型の影があり、アジサシの様に巨大悪魔魚を討ち果たさんと、ジッと狙いを定めていた。
「どうやって倒すんだ? 光線砲か?」
「それは無理だね。光線砲じゃ、海面に反射して致命傷を与えられないよ」
「あなたは、アルトロじゃなくて、SPA-1本人ですね……」
「そうだよ。だが、純一と読んでくれよ。その変な記号じゃなくてさ!」
「じゃぁ、純一さん……。私たちは、どうしたら良いんですか?」
「難しいね。普通なら『極光乱舞』って呪文で氷結させて、『超無窮動』って技で高速に振動させ再生できない様にして粉砕するんだ。だけど、海中の敵に『極光乱舞』なんて掛けたら、海ごと氷っちまう……。そうなったら、海の生物や、東京湾に運航している船なんかにも影響を与えてしまうからね」
「だったら、どうするんですか?」
「面倒臭いけど、海の中から引きずり出すしかないだろうね……」
鈴木挑の意識も、アルトロの意識も言葉を失っていた。勿論、言いたいことはある。だが、呆れて物が言えなかったのだ。「相手は、長さ1000メートルもある怪獣なんですよ!」とは……。
昔の新田純一ならば、今の鈴木挑と同じ様に途方に暮れてしまっただろう。だが、今の彼には、それも出来ない話ではない。
彼は不安がる2人に、それが可能であることの説明を始めた。
「良く考えて見てくれ。妹……、大悪魔女帝は深海にレビアタンを召喚した。だが、そこからでは、幾らレビアタンでも、東京までに泳ぐとなると相当の時間が必要だ。マリアナ海溝から東京までは3000キロ近くあるからね。それでは、有希が勝負の決着を着けた後でも『瞬間移動』で十分に間に合ってしまう。それでは、レビアタンを呼び出して、君らを脅した意味がない」
「だから、東京湾の入口へと『瞬間移送』をしたのですね」
アルトロが説明を引き取る。
「その通り。妹は魔法で、あの長さ1キロもある怪獣を別の場所に移動させた。そして私は、妹と同じ魔法が使えるのだ」
「すると……」
「ああ。奴を海中から空に『瞬間移送』することだって、僕なら出来るのさ」
「どうやってやるんですか? 早くその呪文を、私たちに教えてください!!」
「アルトロ君、それは簡単ではないよ。そして、『瞬間移送』をすると
「私たちは構いませんが……」
「但し、耀子には内緒だぞ。あいつ、後でネチネチと五月蝿いからな……」
新田純一はそう言うと、直ぐさま身体の制御を引き取った。そして一気に3つの魔法の準備を始める。
『極光乱舞』は難易度が高い為、表呪文で気を練っていった。一方、比較的難易度の低い『瞬間移送』と『超無窮動』は、その裏で呪文を唱えること無しに気を練って魔法発動の準備を整えていく。彼らはこうして複数の魔法を同時に使うことが出来るのだ。
それは鈴木挑にも、アルトロにも無限に長い時間に感じられた。だが実は5秒も経ってはいない。その短い時間で、彼は全ての魔法準備を完了させ、『瞬間移送』から先ず発動させた。
レビヤタンの巨体が、突然に空中に出現する。彼が存在した分のスペースが海中に生まれ、海面下では渦潮が発生した。
空中では、彼らの頭上に巨大な鰻状の怪魚が、龍の様に水飛沫とともに静止した様に宙を舞っている。それが重力の影響を受けて、落下を始めると思われた……。だが、その瞬間、怪魚は眩い七色の光を放ち始め、一瞬にして冷凍食品と化したかの様に氷結する。『極光乱舞』だ。
だが、鈴木挑とアルトロが、その凍り付いた姿を正確に把握する前に、レビアタンの巨体は粉々に粉砕され、細かい氷の粒子となって海上へと振り落ちていった。
『超無窮動』で高速振動したレビアタンの身体は、氷結したまま砕かれ、振動した状態であったが為に、正確な位置に接続できず、再生することも叶わず死滅してしまうのだ。
「悪魔魚は、これで完全に滅ぼされた……」
アルトロはそれを確信した。