誰なのか(1)
文字数 1,668文字
生配信が開始された。
「今、我々は、非道にも異星人の差別を訴え、異星人皆殺しを謀る、入生田重国に対し、抗議の意を示す為、奴の孫娘である入生田萌香を処刑し、決起することを、ここに宣言する!!」
スポークスマンがそう言うと、カメラマンが、十字架に磔になっている萌香の姿をアップで写し出した。
将にその時である。校舎の屋上に一人の人影が映ったのは。
「そこまでよ!」
声に反応し、皆がその人影を見出した直後、その影は眩い輝きとなって屋上から飛び降り、一瞬で十字架の脇を擦り抜けた。
そして閃光が薄れた時、その影は一人の少女となり、萌香を十字架から助け出し、その腕に彼女を抱えていたのである。
「何者だ!」
そう問う異星人の声が響く。
「サント・”アルウェン”・ネイジュ!」
そう答えた途端、抱えていた萌香の姿は霞の様に掻き消え、仁王立ちにネイジュは立ち上がったのである。
「入生田萌香はどうした?」
「彼女なら、安全な所に退避させたわ。あなたたちを退治したら、ちゃんと彼女を家に送ってあげるから安心しなさい」
「ふざけるな!」
黒サングラスの異星人たちは、魔法少女に変身した寧樹に襲い掛かる。だが力の差が余りにもあり過ぎた。まるで時代劇の殺陣かの様に、いとも簡単に、次から次へと異星人たちは倒されていく。
実は彼ら自身、並みの人間よりも力も強く動きも速いのであるが、寧樹の格闘術は、全ての面で彼らに勝っているのだ。
そして、寧樹は全員を倒すと、異星人討伐隊の面々を縛っていた縄を、サーベルに変形させた二本の指で、あっさりと切り払った。
「ありがとう。何とかネイジュ」
助けて貰った板橋隊員が寧樹に礼を言う。
他の隊員も、今は流石に寧樹と闘おうとは思っていなかった。それに今は、悪質な異星人テロリストを捕縛する方が先なのだ。
「おい、本当に入生田隊員を、家に帰したんだろうな!」
やっと両手が自由になった湯本隊員が、寧樹へと食って掛かる。
「大丈夫よ。彼女が帰ったら、全員に同報連絡を入れる様に伝えておくわ」
それを聞いて、湯本隊員も安堵の息を漏らした。そして照れ隠しに少し話題を変える。
「それにしても……、あのお喋りでマスクした、小物感MAXの小母さんは、一体何者だったのだろう?」
「お喋りな小母さん?」
寧樹には何のことだか良く分からない。彼女が目を醒ました時には、大悪魔女帝は既にあの場所を去っていたのだ。
「隊長、それに……、なんか、あの小母さん、隊長のこと知っていたみたいですけど、隊長はご存知ありませんか?」
だが、小田原隊長は難しい顔をしたままで、湯本隊員の問いには、何も答えようとはしなかった。
「じゃ皆さん、さようなら」
「おい、待て! お前は何者だ!」
湯本隊員の制止も聞かず、そうして寧樹も瞬間移動の呪文を唱え、幻であるかのように、その姿を一瞬に消し去ったのである。
部屋に戻ると萌香は、薬の後遺症による頭痛と闘いながら、腕時計型通信機のテレビ電話機能を用いて同報通信メッセージを隊員全員に送っている。最初は偽装を疑った隊員たちであったが、彼らからの質問に萌香が的確に答えるので、一応、萌香が無事であることに納得をし、彼らもやっと安心する事が出来たのである。
また萌香は、深夜で眠く、疲れているにも関わらず、帰還したことを示す為、リビングに降りて行かねばならなかった。
確かに面倒ではあったが、重国を始め、父母も喜んでくれ、宮城野などは喜びの余り、涙を流しながら、彼女の手を痛いほど握り締めてくれた程であった。
そして、乙女にも一応電話を入れて、萌香は自分が無事であったことを伝えている。
乙女への電話については、深夜であったので、控えようかとも思ったのであるが、心配しているといけないので、短く伝えることにして、一応連絡を入れることにしたのだ。
だが、短く伝えるどころか、三十分以上も萌香は彼女と話し込んでいた。それ程まで、乙女も萌香の無事を喜んでくれたのである。
こうして……。
二時を回った頃、萌香はやっとベッドに入ることが出来たのである。
「今、我々は、非道にも異星人の差別を訴え、異星人皆殺しを謀る、入生田重国に対し、抗議の意を示す為、奴の孫娘である入生田萌香を処刑し、決起することを、ここに宣言する!!」
スポークスマンがそう言うと、カメラマンが、十字架に磔になっている萌香の姿をアップで写し出した。
将にその時である。校舎の屋上に一人の人影が映ったのは。
「そこまでよ!」
声に反応し、皆がその人影を見出した直後、その影は眩い輝きとなって屋上から飛び降り、一瞬で十字架の脇を擦り抜けた。
そして閃光が薄れた時、その影は一人の少女となり、萌香を十字架から助け出し、その腕に彼女を抱えていたのである。
「何者だ!」
そう問う異星人の声が響く。
「サント・”アルウェン”・ネイジュ!」
そう答えた途端、抱えていた萌香の姿は霞の様に掻き消え、仁王立ちにネイジュは立ち上がったのである。
「入生田萌香はどうした?」
「彼女なら、安全な所に退避させたわ。あなたたちを退治したら、ちゃんと彼女を家に送ってあげるから安心しなさい」
「ふざけるな!」
黒サングラスの異星人たちは、魔法少女に変身した寧樹に襲い掛かる。だが力の差が余りにもあり過ぎた。まるで時代劇の殺陣かの様に、いとも簡単に、次から次へと異星人たちは倒されていく。
実は彼ら自身、並みの人間よりも力も強く動きも速いのであるが、寧樹の格闘術は、全ての面で彼らに勝っているのだ。
そして、寧樹は全員を倒すと、異星人討伐隊の面々を縛っていた縄を、サーベルに変形させた二本の指で、あっさりと切り払った。
「ありがとう。何とかネイジュ」
助けて貰った板橋隊員が寧樹に礼を言う。
他の隊員も、今は流石に寧樹と闘おうとは思っていなかった。それに今は、悪質な異星人テロリストを捕縛する方が先なのだ。
「おい、本当に入生田隊員を、家に帰したんだろうな!」
やっと両手が自由になった湯本隊員が、寧樹へと食って掛かる。
「大丈夫よ。彼女が帰ったら、全員に同報連絡を入れる様に伝えておくわ」
それを聞いて、湯本隊員も安堵の息を漏らした。そして照れ隠しに少し話題を変える。
「それにしても……、あのお喋りでマスクした、小物感MAXの小母さんは、一体何者だったのだろう?」
「お喋りな小母さん?」
寧樹には何のことだか良く分からない。彼女が目を醒ました時には、大悪魔女帝は既にあの場所を去っていたのだ。
「隊長、それに……、なんか、あの小母さん、隊長のこと知っていたみたいですけど、隊長はご存知ありませんか?」
だが、小田原隊長は難しい顔をしたままで、湯本隊員の問いには、何も答えようとはしなかった。
「じゃ皆さん、さようなら」
「おい、待て! お前は何者だ!」
湯本隊員の制止も聞かず、そうして寧樹も瞬間移動の呪文を唱え、幻であるかのように、その姿を一瞬に消し去ったのである。
部屋に戻ると萌香は、薬の後遺症による頭痛と闘いながら、腕時計型通信機のテレビ電話機能を用いて同報通信メッセージを隊員全員に送っている。最初は偽装を疑った隊員たちであったが、彼らからの質問に萌香が的確に答えるので、一応、萌香が無事であることに納得をし、彼らもやっと安心する事が出来たのである。
また萌香は、深夜で眠く、疲れているにも関わらず、帰還したことを示す為、リビングに降りて行かねばならなかった。
確かに面倒ではあったが、重国を始め、父母も喜んでくれ、宮城野などは喜びの余り、涙を流しながら、彼女の手を痛いほど握り締めてくれた程であった。
そして、乙女にも一応電話を入れて、萌香は自分が無事であったことを伝えている。
乙女への電話については、深夜であったので、控えようかとも思ったのであるが、心配しているといけないので、短く伝えることにして、一応連絡を入れることにしたのだ。
だが、短く伝えるどころか、三十分以上も萌香は彼女と話し込んでいた。それ程まで、乙女も萌香の無事を喜んでくれたのである。
こうして……。
二時を回った頃、萌香はやっとベッドに入ることが出来たのである。