召喚されしもの(8)
文字数 1,748文字
今、サント・ネイジュと大悪魔女帝は、1対1で対峙していた。
大悪魔女帝にしてみれば、相手は最愛の姪っ子である。正直、彼女に痛い思いなど、少しもさせたくはない。とは言え、適当に闘って勝てる相手ではない。本気で有希は掛かってくる。この世界の人間である萌香から見れば、大悪魔女帝は不倶戴天の敵で、その代理である有希には、適当に闘うことなど、抑々 許せることではないのだ。
それにしても、何時もの有希とは違って、明らかに彼女は自信に満ちた態度を示している。少なくとも、有希はハッタリなどする性格ではない。恐らく、勝利を確信できる何かを持っているのだろう。
「有希ちゃんが、どうしてそんな根拠のない自信を持ったのか、本当に不思議だわ……」
大悪魔女帝は有希に鎌を掛けてみる。有希は意外と簡単にそれに乗ってきた。
「私が最強の大悪魔になると思われたのは、アルウェンの魂を宿しているから……。もし、アルウェンの意志が完全に覚醒したならば、私はアルウェンと同等の力を持って、全時空を支配することだって、決して不可能ではないと言われていた……」
「でも、有希ちゃんは普通の人間に戻ったわ。『善を為す妖精処女』には成らず……」
「ええ。私はアルウェンの力を欲しはしなかった。そして、アルウェンも私の精神を支配することを望まなかった。彼女は今も私の深層心理の中で眠っている……。私に出来ることは、父から譲り受けた大悪魔の力と、盈さんから教わった魔法だけ……」
「そう。有希ちゃんは、盈さんでも舌を巻く程の天才魔導士。魔法勝負なら、私たちが3人掛かりでも敵わないわ」
「そう、それだけだと思われていた……」
「な、何を言っているの??」
大悪魔女帝の表情に恐れが浮かび、動揺の色を隠せなかった。
「『叔母さんは2点戦力分析を誤っている』って、そう私言ったよね。1つは私が『大悪魔能力封じ』を持っていることを知らなかったこと。そして……」
有希は鋭い視線で、大悪魔女帝の両の瞳を射ぬく。
「アルウェンの精神は目覚めていないけど、私はアルウェンの力を継承している。100パーセントではないだけで……」
「う、嘘よ……」
大悪魔女帝は思わず、そう口走っていた。だが、彼女にはそれが嘘でないことなど、説明されるまでもなく分かっている。有希がここで嘘を言う訳がないのだ。
「た、確かに……、アルウェンは宇宙を覆す程の大魔導士だわ。私の『攻撃魔法避け』など簡単に無力化でき、私どころか、この時空ごと消滅させる力の呪文を持っているかも知れない……。でも、地球を壊す程の攻撃は反則な筈よ! あなたがアルウェンの力の一部を使うことが出来たとしても、アルウェンはエルフの魔導士。破壊的な魔法以外、攻撃手段など持っていない筈だわ!!」
「ヴィアニッシ! ミスリルウォーリヤー」
有希は、大悪魔女帝の指摘が誤りであることを直ぐに証明して見せた。呪文を唱えることなく、目の前に1体の銀色に輝くウィングウォーリヤーを召喚したのである。
ウィングウォーリヤーとは、羽根を持った人間型の模造戦士。金属で出来たゴーレムと云った様な代物だ。
「行け! ミスリルウォーリヤー。大悪魔女帝を倒すのよ!!」
有希は、そのゴーレムを大悪魔女帝に嗾ける。ゴーレムは風きり羽を外し、それを刀にして大悪魔女帝に襲いかかった。
今、大悪魔女帝は悪魔能力が封じられている。皮膚硬化で防ぐことも、相手の質量を増加させて動きを止めることも出来ない。人間同様の大悪魔女帝には、金属製のゴーレムに勝つ術はない。筈だった……。
大悪魔女帝は、その一瞬で魔法攻撃を掛けていた。『雷撃 』の呪文だった。時間が無かったので、強力な魔法は準備できなかった。だが、その魔法攻撃で何とか相手を倒すことは出来たのだ。
「残念ね、有希ちゃん。『攻撃魔法避け』はこいつに掛かっていなかったわよね……。こいつは暫くの間、闘うことは出来ないわ」
流石の大悪魔女帝も、この有希の奇襲には恐怖を覚えた。
だが、これで終わりでは無いだろう。もし、有希がアルウェンの力の一部でも使えるのであれば、何をしてくるか分かったものではない。時間を掛けず、格闘術で一気に勝負を着けるしかない。
大悪魔女帝はそう考え、立ち上がり、有希に向かって走り出した。
大悪魔女帝にしてみれば、相手は最愛の姪っ子である。正直、彼女に痛い思いなど、少しもさせたくはない。とは言え、適当に闘って勝てる相手ではない。本気で有希は掛かってくる。この世界の人間である萌香から見れば、大悪魔女帝は不倶戴天の敵で、その代理である有希には、適当に闘うことなど、
それにしても、何時もの有希とは違って、明らかに彼女は自信に満ちた態度を示している。少なくとも、有希はハッタリなどする性格ではない。恐らく、勝利を確信できる何かを持っているのだろう。
「有希ちゃんが、どうしてそんな根拠のない自信を持ったのか、本当に不思議だわ……」
大悪魔女帝は有希に鎌を掛けてみる。有希は意外と簡単にそれに乗ってきた。
「私が最強の大悪魔になると思われたのは、アルウェンの魂を宿しているから……。もし、アルウェンの意志が完全に覚醒したならば、私はアルウェンと同等の力を持って、全時空を支配することだって、決して不可能ではないと言われていた……」
「でも、有希ちゃんは普通の人間に戻ったわ。『善を為す妖精処女』には成らず……」
「ええ。私はアルウェンの力を欲しはしなかった。そして、アルウェンも私の精神を支配することを望まなかった。彼女は今も私の深層心理の中で眠っている……。私に出来ることは、父から譲り受けた大悪魔の力と、盈さんから教わった魔法だけ……」
「そう。有希ちゃんは、盈さんでも舌を巻く程の天才魔導士。魔法勝負なら、私たちが3人掛かりでも敵わないわ」
「そう、それだけだと思われていた……」
「な、何を言っているの??」
大悪魔女帝の表情に恐れが浮かび、動揺の色を隠せなかった。
「『叔母さんは2点戦力分析を誤っている』って、そう私言ったよね。1つは私が『大悪魔能力封じ』を持っていることを知らなかったこと。そして……」
有希は鋭い視線で、大悪魔女帝の両の瞳を射ぬく。
「アルウェンの精神は目覚めていないけど、私はアルウェンの力を継承している。100パーセントではないだけで……」
「う、嘘よ……」
大悪魔女帝は思わず、そう口走っていた。だが、彼女にはそれが嘘でないことなど、説明されるまでもなく分かっている。有希がここで嘘を言う訳がないのだ。
「た、確かに……、アルウェンは宇宙を覆す程の大魔導士だわ。私の『攻撃魔法避け』など簡単に無力化でき、私どころか、この時空ごと消滅させる力の呪文を持っているかも知れない……。でも、地球を壊す程の攻撃は反則な筈よ! あなたがアルウェンの力の一部を使うことが出来たとしても、アルウェンはエルフの魔導士。破壊的な魔法以外、攻撃手段など持っていない筈だわ!!」
「ヴィアニッシ! ミスリルウォーリヤー」
有希は、大悪魔女帝の指摘が誤りであることを直ぐに証明して見せた。呪文を唱えることなく、目の前に1体の銀色に輝くウィングウォーリヤーを召喚したのである。
ウィングウォーリヤーとは、羽根を持った人間型の模造戦士。金属で出来たゴーレムと云った様な代物だ。
「行け! ミスリルウォーリヤー。大悪魔女帝を倒すのよ!!」
有希は、そのゴーレムを大悪魔女帝に嗾ける。ゴーレムは風きり羽を外し、それを刀にして大悪魔女帝に襲いかかった。
今、大悪魔女帝は悪魔能力が封じられている。皮膚硬化で防ぐことも、相手の質量を増加させて動きを止めることも出来ない。人間同様の大悪魔女帝には、金属製のゴーレムに勝つ術はない。筈だった……。
大悪魔女帝は、その一瞬で魔法攻撃を掛けていた。『
「残念ね、有希ちゃん。『攻撃魔法避け』はこいつに掛かっていなかったわよね……。こいつは暫くの間、闘うことは出来ないわ」
流石の大悪魔女帝も、この有希の奇襲には恐怖を覚えた。
だが、これで終わりでは無いだろう。もし、有希がアルウェンの力の一部でも使えるのであれば、何をしてくるか分かったものではない。時間を掛けず、格闘術で一気に勝負を着けるしかない。
大悪魔女帝はそう考え、立ち上がり、有希に向かって走り出した。