大悪魔女帝の城(2)

文字数 1,425文字

 湯本隊員が呆れた様に疑問を口にした。
「直通電話と内線電話の区別が付かないなんて、そんなこと、あり得ないだろう?!」
 それには寧樹が理由を説明する。
「あまりに非常識な現象が続くので、『この内線番号を選べば、内線と思わせて直通回線に繋がるわ』なんて言われ、それも信じちゃったのね。彼も……」

 皆が呆然とする中、寧樹が大悪魔女帝が基地内で、どの様にしていたかを説明する。
「恐らく彼女は、最近まで、勤務時間中は、ずっと作戦参謀室にいたと思われます……。部屋は長い間使われたとは思えない程、綺麗に片付けられ、随所に使われていた痕跡がありましたから……」
「食事などは、どうしたと云うのだ!」
 重雄氏が、信じられないとばかりに声を上げた。
「勿論、出退などは瞬間移動を使ったとは思います。ですが、休憩室やトイレの使用などは、誰かに擬態して平然と基地内で済ましていたのではないでしょうか? 昼食なども、皆に混じって食堂で採っていたのではないかと思われます。机の中に最近使われた様な食券がありましたから……」
 大悪魔女帝が、隣に座って平然と食事を採っていたかも知れないと思うと、馬鹿にされた様で、萌香は酷く腹立たしかった。

「でも、どうして、大悪魔女帝は日本にしか攻めて来ないのかな?」
 湯本隊員の意見に、風祭隊員が我が意を得たりとばかりに持論を述べる。
「そうだ。それはきっと奴の寝倉が日本のどこかにあるからに違いない」
「可能性は低くはないけど、絶対ではないわ。叔母さんは日本人として育てられたから、日本に思い入れが深いのよ。異星人警備隊も日本にあった組織だし……」
「結局、分からず仕舞いって訳だな……」
 小田原隊長の言葉が、皆の残念だと云う想いを現している。

 萌香がふと大悪魔女帝の言葉を思い出す。
「寧樹、大悪魔女帝も弱体化する腕輪を外すことがありますわよね? 『腕輪を着けっぱなしにするな』って彼女自身が言っていた程なのですから……」
「耀子叔母さんは、腕輪を着けていても『危険察知』が出来るんだけど、結構外してるんじゃないかな? 生気に余裕があるなら腕輪を着けている意味ないもん」
「だったら、彼女の居場所を察知できるのではございません? 大悪魔女帝の居場所って、腕輪を着けて弱体化しているから察知できないって仰っていましたわよね? 腕輪を外した瞬間ならば、察知できるのではございませんこと?」
「萌香……、私は腕輪を外さないと『危機察知』が使えない。だから、私が腕輪を外している間に、彼女が腕輪を外さないと検知できないのよ。それも、私の『危機察知』は、叔母さんほど熟練していないから、確認するのに多少の時間が必要だわ。余程の偶然でもなければ、彼女の検知は難しいわね」
「それは、腕輪を朝一と、サント・ネイジュになっている時しか外していないからでしょう? 1日中外していれば、彼女の居場所を検知できるのではありません?」
「萌香、分かってる? 前にも言った通り、私の大悪魔能力を解放したままだと、体育会系の男子並みに食事していないと生気が尽きてしまうのよ」
「構いませんわ。食べ物が無駄になるのかも知れませんけど、それは許して貰うしかありませんわね」
「萌香……」
「これは我慢比べですわ。それで太っても構いません。死ぬ訳ではありませんもの……。フォアグラの鵞鳥にでも何でもなりますわ。何なら、縛って頂いて口を開けたまま、無理矢理食べ物を流し込まれたとしても、それで良ろしくてよ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

入生田萌香


この物語の主人公。ゴーラ女学院付属女子高の二年生。祖父は、異星人排斥論者で知られる政界の大立者、入生田重国。気位の高いお嬢様と思われているが、実は気が弱く自分に自身を持てない少女。寧樹という謎の女性に助けられ、彼女が憑依することを許可する。そして、寧樹から入生田家の未来を見せられ、それを阻止すべく異星人討伐隊の一員(非常勤隊員)となる。

寧樹


萌香に憑依した謎の女性。腕輪を外すことで、全ての悪魔能力を解放でき、その擬態能力で「サント・ネイジュ」に変身する。従姉妹のサーラに頼まれ、この時空を救う為にやって来た。

小田原平蔵


異星人討伐隊隊長。人間ながら超人的な筋力と体力を持っている。

風祭隼


異星人討伐隊隊員。射撃を得意としている。

板橋羽根子


異星人討伐隊隊員。データや暗号解析のスペシャリスト。実戦はあまり得意ではない。

湯本譲治


異星人討伐隊隊員(非常勤隊員)。専門は作戦の立案。戦闘では日本刀を使う。

大悪魔女帝


剛霊武獣を操り、社会を混乱に陥れようとしている大悪魔軍団のリーダー。マスクとキャットスーツに身を包んだお喋りで小物感あふれる女性。寧樹と同様に大悪魔能力と魔法を自在に操ることが出来る。

ブラウ


大悪魔女帝に仕える大悪魔。『三つの質問』なる大悪魔能力を持ち、サント・ネイジュの謎に迫る。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み