誰なのか(3)
文字数 1,760文字
燕尾服の男は、大悪魔女帝の「入生田萌香の変身した姿」と云う言葉に、どうしても納得できなかった。
「女帝! 配信画像では、明らかに別にネイジュがいて、彼女が萌香を助けているではありませんか?」
テレビ電話の残光の中、燕尾服の男は大悪魔女帝に詰め寄って、そう抗議する。
「そうねぇ、どうやったのかしらね」
大悪魔女帝は、その様なこと、どうでも良いとばかりに投げ槍に答えた。
「私が……、確かめて参ります」
「どうやって?」
「直接、質問するのです。私の大悪魔の能力は『三つの質問』……。これに掛かった相手は、必ず正直に自分の秘密を白状してしまうのです」
「ほんと、便利な能力ね。でも、一度掛けた相手には抵抗力が出来て、二度と使えないのでしょう? どうせなら、彼女に使うのは取っておいたら? 勿体ないから……」
「いいえ、あの女の正体が分かれば、これ迄の様に、不意打ちばかり食うことはないと思います。そして逆に、あの女の根城をも襲うことが可能となる筈です!」
「ふ~ん」
「女帝、許可を願います。それと、剛霊武 獣を一体連れて行くこともお許しください」
「いいわよ、ブラウ。マンモスちゃんを連れて行きなさい。それと、攻撃は明後日の夕方にしてあげてね。萌香ちゃん、今度の週末は休暇を取っているみたいで、火曜日の放課後、特別出勤するみたいなのよ……」
ブラウと呼ばれた燕尾服の男は、大悪魔女帝に深々と頭を垂れた。
翌日、月曜日の萌香は、朝から学校に行くことが出来なかった。
宮城野は、既に広間に待機していたのだが、祖父の入生田重国が昨晩の事件を理由に運転手の宮城野を馘にすると言い出し、彼の運転で学校に行かせることを認めなかったのである。重国に言わせると、宮城野が公園になど運んで行ったから萌香が襲われたのであって、全ての責任は運転手である宮城野にあると云うのだ。
こう云う訳で、先ず、萌香は朝から宮城野の馘と云うのを、重国に撤回させなければならなかった……。
萌香は、噛み砕くような口調で、宮城野の弁護をした。
「公園に行くように命じたのは、わたくしですわ。わたくしの命に従わない人など、わたくし、運転手として認める訳には参りません……。それに宮城野は、わたくしが襲われた時、必死になって、大悪魔女帝と云う魔女に立ち向かって下さいました。確かに宮城野では力が足らず、私を助けることまでは出来ませんでしたけど、その勇気と忠誠は賞賛に価すると思いますわ。
そして、もし、宮城野が叱責を恐れて、私が拉致されたことを、お祖父様にお伝えしなかったなら、わたくし、殺されていたかも知れませんのよ。言うなれば、宮城野はわたくしの命の恩人! 解雇するなど、考えられませんわ!」
「しかし、だな……」
「宮城野を馘にすると云うのなら、わたくし、これ以降、入生田家の車には一切乗りません。例え異星人が狙っていようとも、公道を歩かさせて頂きます!」
「うむむむむ」
こうして萌香は、宮城野が運転手として続けていられるよう、重国への説得に成功したのである。
だが、それだけでは済まなかった。
これは主に萌香の母であったが、萌香のアルバイト、異星人討伐隊を、危ないから止めるようにと言い出したのだ。
これに、萌香はこう反論している。
「私が狙われているのは、異星人討伐隊に勤務しているからではありませんわ!」
「でも、その帰りに襲われたのですよ」
「以前、学校の帰りに襲われたこともございます。私が入生田重国の孫娘である以上、異星人テロリストに狙われる事は、避けることなど出来ません。寧ろ、休日に友人たちと遊びに出かけているより、異星人討伐隊にいた方が、彼らに護って頂ける分、遥かに安全なのではないでしょうか?」
「そうは言っても、萌香さん。あなたは、まだ高校生なのよ……」
「分かっています。お母様には心配をお掛けして申し訳ありません。でも、わたくしは入生田家の娘です。わたくしには戦う義務があります。そして、入生田重国の孫娘である以上、わたくしが何をやっても異星人に狙われることでしょう。ですが、わたくしは、入生田重国の孫娘を放棄する気など毛頭ありません。当然、異星人テロリストに狙われることも覚悟の上ですわ!」
結局、萌香の強い意志に、家族の誰一人、反対することは出来なかったのである。
「女帝! 配信画像では、明らかに別にネイジュがいて、彼女が萌香を助けているではありませんか?」
テレビ電話の残光の中、燕尾服の男は大悪魔女帝に詰め寄って、そう抗議する。
「そうねぇ、どうやったのかしらね」
大悪魔女帝は、その様なこと、どうでも良いとばかりに投げ槍に答えた。
「私が……、確かめて参ります」
「どうやって?」
「直接、質問するのです。私の大悪魔の能力は『三つの質問』……。これに掛かった相手は、必ず正直に自分の秘密を白状してしまうのです」
「ほんと、便利な能力ね。でも、一度掛けた相手には抵抗力が出来て、二度と使えないのでしょう? どうせなら、彼女に使うのは取っておいたら? 勿体ないから……」
「いいえ、あの女の正体が分かれば、これ迄の様に、不意打ちばかり食うことはないと思います。そして逆に、あの女の根城をも襲うことが可能となる筈です!」
「ふ~ん」
「女帝、許可を願います。それと、
「いいわよ、ブラウ。マンモスちゃんを連れて行きなさい。それと、攻撃は明後日の夕方にしてあげてね。萌香ちゃん、今度の週末は休暇を取っているみたいで、火曜日の放課後、特別出勤するみたいなのよ……」
ブラウと呼ばれた燕尾服の男は、大悪魔女帝に深々と頭を垂れた。
翌日、月曜日の萌香は、朝から学校に行くことが出来なかった。
宮城野は、既に広間に待機していたのだが、祖父の入生田重国が昨晩の事件を理由に運転手の宮城野を馘にすると言い出し、彼の運転で学校に行かせることを認めなかったのである。重国に言わせると、宮城野が公園になど運んで行ったから萌香が襲われたのであって、全ての責任は運転手である宮城野にあると云うのだ。
こう云う訳で、先ず、萌香は朝から宮城野の馘と云うのを、重国に撤回させなければならなかった……。
萌香は、噛み砕くような口調で、宮城野の弁護をした。
「公園に行くように命じたのは、わたくしですわ。わたくしの命に従わない人など、わたくし、運転手として認める訳には参りません……。それに宮城野は、わたくしが襲われた時、必死になって、大悪魔女帝と云う魔女に立ち向かって下さいました。確かに宮城野では力が足らず、私を助けることまでは出来ませんでしたけど、その勇気と忠誠は賞賛に価すると思いますわ。
そして、もし、宮城野が叱責を恐れて、私が拉致されたことを、お祖父様にお伝えしなかったなら、わたくし、殺されていたかも知れませんのよ。言うなれば、宮城野はわたくしの命の恩人! 解雇するなど、考えられませんわ!」
「しかし、だな……」
「宮城野を馘にすると云うのなら、わたくし、これ以降、入生田家の車には一切乗りません。例え異星人が狙っていようとも、公道を歩かさせて頂きます!」
「うむむむむ」
こうして萌香は、宮城野が運転手として続けていられるよう、重国への説得に成功したのである。
だが、それだけでは済まなかった。
これは主に萌香の母であったが、萌香のアルバイト、異星人討伐隊を、危ないから止めるようにと言い出したのだ。
これに、萌香はこう反論している。
「私が狙われているのは、異星人討伐隊に勤務しているからではありませんわ!」
「でも、その帰りに襲われたのですよ」
「以前、学校の帰りに襲われたこともございます。私が入生田重国の孫娘である以上、異星人テロリストに狙われる事は、避けることなど出来ません。寧ろ、休日に友人たちと遊びに出かけているより、異星人討伐隊にいた方が、彼らに護って頂ける分、遥かに安全なのではないでしょうか?」
「そうは言っても、萌香さん。あなたは、まだ高校生なのよ……」
「分かっています。お母様には心配をお掛けして申し訳ありません。でも、わたくしは入生田家の娘です。わたくしには戦う義務があります。そして、入生田重国の孫娘である以上、わたくしが何をやっても異星人に狙われることでしょう。ですが、わたくしは、入生田重国の孫娘を放棄する気など毛頭ありません。当然、異星人テロリストに狙われることも覚悟の上ですわ!」
結局、萌香の強い意志に、家族の誰一人、反対することは出来なかったのである。