大悪魔女帝の城(3)
文字数 1,533文字
「萌香……、でも……」
寧樹がそう言った時である。彼女の腕時計型通信機に1通のメールが届いた様で、着信音が響きわたる。
「もう、萌香。会議中は、マナーモードにしておいてよね!」
寧樹はそう萌香に文句を言ったが、通信機の表示を見て動きが止まる。
「わたくし、マナーモードから変えたことなどありませんわ。寧樹がなさったんじゃありません?」
この萌香の抗議を無視し、寧樹はメールの概要を読み上げる。
「叔母さん、いいえ、大悪魔女帝からです。彼女曰く、『萌香ちゃんに鵞鳥になって貰う訳には行かないわ。私の居場所は教えてあげるから、しっかり準備して掛かってらっしゃい』……だそうです。末尾に緯度と経度が追記されている様ですね。今からメーリングリストに転送します」
皆が一斉に自分の通信機を確認する。宮城野は萌香の、重雄氏は板橋隊員の通信機を覗き見た。
「こ、これは……」
誰かの言葉に、最初に座標を確認していた寧樹が反応する。
「ええ、これはマリアナ海溝の最深部。チャレンジャー海淵ではないかと思われます」
皆が地図を確認したが、座標は間違いなくその付近を示している。だが、それを信じる者は少なかった。
「その海上に建造物が出来たなんて話は、聞いたこともないぞ!」
「叔母さんのことです。そんな位置を選んでおいて、海上や海面近くなど、チャレンジャー海淵以外に棲み処を定めるなんて訳がありません。大悪魔女帝の城は、マリアナ海溝最深部にあると云うことで、恐らく間違いないと思います」
勿論、小田原隊長も寧樹の考えには同意しかねた。
「だが、そこが彼女の居場所だとしても、現在、深海探査艇がマリアナ海溝を調査しているなどと云う話は聞いていない。それに深海探査艇の中では狭すぎて、彼女が君を迎え撃つと言うのは無理があるだろう? 深海に彼女の城があると云うのは、私には、矢張り、あり得ないと思うのだが……」
「深海探査艇とは限りません。沈没船でも何でも構わないのです。彼女は水中でも呼吸できますし、水圧も関係ないでしょう。確かに急に地上に移動したら、圧力の変化で破裂してしまうかも知れません。でも、それはそれで直ぐに治ってしまうでしょうからね……」
その時、入生田重国が突然「あっ」と云う大声を上げた。
「ある! 大悪魔女帝が棲み処にするのに打って付けのものが!」
皆の視線が一斉に重雄に集まる。
「大悪魔の残骸を回収する際、宇宙空間に不思議な立方体の鉄の塊りが見つかったのだ。その塊りは中空の様で、私たちは中に大悪魔の死骸があるのではと、その中に入ろうとしたのだが、残念なことに入口が見つからず、入ることが出来なかった……。そして、それは何かの弾みで地球へと落下し、マリアナ海溝付近へと墜落したのだ」
「シタデル……」
今度はそう言った寧樹に視線が集まる。
「それは、シタデルと言って、耀子叔母さんが開発した移動式住居。キャンピングカーの様なものです。恐らく、彼女がこの時空の棲み処として運んでおいたものなのでしょう。そして、彼女はそれを、最高の場所に移動させたってことのようですね」
「住居? 何を言っているんだ。出入口もない骰子なんだぞ。壁は恐らく何メートルもの厚さのある鉄板なんだ。どうやって出入りするって言うんだ?」
「彼女に出入口は不要だわ。瞬間移動で出入り出来るから……。中にはキッチンもあるし、ベッドルームも複数ある。巨大貯水槽もあるから、お風呂にだって入れるのよ。それに何より、トレーニングルームと併設して、武道場もあるの」
「それが、シタデル……?」
「ええ……。彼女が許可しなければ、そこには誰も入れない……。深海では、殆どの戦艦は近づけないから、外から攻撃することも出来ない。まさに不落の堅城よ」
寧樹がそう言った時である。彼女の腕時計型通信機に1通のメールが届いた様で、着信音が響きわたる。
「もう、萌香。会議中は、マナーモードにしておいてよね!」
寧樹はそう萌香に文句を言ったが、通信機の表示を見て動きが止まる。
「わたくし、マナーモードから変えたことなどありませんわ。寧樹がなさったんじゃありません?」
この萌香の抗議を無視し、寧樹はメールの概要を読み上げる。
「叔母さん、いいえ、大悪魔女帝からです。彼女曰く、『萌香ちゃんに鵞鳥になって貰う訳には行かないわ。私の居場所は教えてあげるから、しっかり準備して掛かってらっしゃい』……だそうです。末尾に緯度と経度が追記されている様ですね。今からメーリングリストに転送します」
皆が一斉に自分の通信機を確認する。宮城野は萌香の、重雄氏は板橋隊員の通信機を覗き見た。
「こ、これは……」
誰かの言葉に、最初に座標を確認していた寧樹が反応する。
「ええ、これはマリアナ海溝の最深部。チャレンジャー海淵ではないかと思われます」
皆が地図を確認したが、座標は間違いなくその付近を示している。だが、それを信じる者は少なかった。
「その海上に建造物が出来たなんて話は、聞いたこともないぞ!」
「叔母さんのことです。そんな位置を選んでおいて、海上や海面近くなど、チャレンジャー海淵以外に棲み処を定めるなんて訳がありません。大悪魔女帝の城は、マリアナ海溝最深部にあると云うことで、恐らく間違いないと思います」
勿論、小田原隊長も寧樹の考えには同意しかねた。
「だが、そこが彼女の居場所だとしても、現在、深海探査艇がマリアナ海溝を調査しているなどと云う話は聞いていない。それに深海探査艇の中では狭すぎて、彼女が君を迎え撃つと言うのは無理があるだろう? 深海に彼女の城があると云うのは、私には、矢張り、あり得ないと思うのだが……」
「深海探査艇とは限りません。沈没船でも何でも構わないのです。彼女は水中でも呼吸できますし、水圧も関係ないでしょう。確かに急に地上に移動したら、圧力の変化で破裂してしまうかも知れません。でも、それはそれで直ぐに治ってしまうでしょうからね……」
その時、入生田重国が突然「あっ」と云う大声を上げた。
「ある! 大悪魔女帝が棲み処にするのに打って付けのものが!」
皆の視線が一斉に重雄に集まる。
「大悪魔の残骸を回収する際、宇宙空間に不思議な立方体の鉄の塊りが見つかったのだ。その塊りは中空の様で、私たちは中に大悪魔の死骸があるのではと、その中に入ろうとしたのだが、残念なことに入口が見つからず、入ることが出来なかった……。そして、それは何かの弾みで地球へと落下し、マリアナ海溝付近へと墜落したのだ」
「シタデル……」
今度はそう言った寧樹に視線が集まる。
「それは、シタデルと言って、耀子叔母さんが開発した移動式住居。キャンピングカーの様なものです。恐らく、彼女がこの時空の棲み処として運んでおいたものなのでしょう。そして、彼女はそれを、最高の場所に移動させたってことのようですね」
「住居? 何を言っているんだ。出入口もない骰子なんだぞ。壁は恐らく何メートルもの厚さのある鉄板なんだ。どうやって出入りするって言うんだ?」
「彼女に出入口は不要だわ。瞬間移動で出入り出来るから……。中にはキッチンもあるし、ベッドルームも複数ある。巨大貯水槽もあるから、お風呂にだって入れるのよ。それに何より、トレーニングルームと併設して、武道場もあるの」
「それが、シタデル……?」
「ええ……。彼女が許可しなければ、そこには誰も入れない……。深海では、殆どの戦艦は近づけないから、外から攻撃することも出来ない。まさに不落の堅城よ」